フード最前線
(熊本日日新聞で連載)
    地域からの「食の大切さ」発信    (2008-03-23)
「農家がお互いにも勉強しあい、品質の良いもの競って出しています」と語る、売り上げトップの斉藤絹子さん=茨城県・茨城町

 地域農業が元気になり継続できるような場として二〇〇〇年に生まれたのが、茨城県・茨城町にあるJA全農の「ポケットファームどきどき」だ。農産物や加工品を販売する直売所をはじめ惣菜コーナー、レストランなどがある。年間七十万人が訪れ、売り上げは十一億五千万円。スタッフら七十四人が働いている。
 レストラン横では、有機栽培で年間八十種類の野菜が栽培され、その野菜が料理に使われる。ビュフェ式のレストランのメニューは八十種類。季節感たっぷりの料理が大好評で、開店する午前十一時には、長蛇の列が連日できている。
 また、直売所は地元農家百軒が参加。それぞれに持ち込んだ野菜や果物が所狭しと並ぶ。賄えない農産物は、隣にあるJA全農のフルーツ・ベジタブル・ステーションから茨城県内の農産物を調達。一年中、県産の野菜が途切れないようにしていた。
 直売所での農家の売り上げは少ない人で三百万円、多い人は一千万円を超え、後継者ができた農家も八軒出る効果も生まれていた。
 創立からかかわる農家の一人斉藤絹子さんは、娘と二人で弁当、みそなどを出荷。年間千五百万円も売りあげていた。「ここは人と農業、それに物づくりを大切にしている場です。自ら売り場に立つことで情報もたくさん頂く。今までになかった素晴らしい夢のある所です」と話していた。
 加工品は手作りや無添加品が中心。調味料も素材や作り手がわかるものを厳選してあった。肉も茨城県内の牛、豚、地鶏しか扱っておらず、惣菜コーナーも地元の野菜を使い、牛乳も酒も地元産という徹底ぶりだった。
 パン工房とハム工房も手作りの出来立てを販売。自動販売機や、ナショナルブランド品は一切なく、売り手がきちんと食品について説明できるように対面販売していたのも特徴の一つだった。
 それに旬の素材と味を伝える催しも毎週実施。レストランの隣で野菜を摘んでスタッフの指導でメニューを考える料理教室のほか、ウィンナーづくりやイチゴ大福などの体験教室。農家が先生になり、地域の農産物を使って豆腐やみそづくりの教室などなどだ。県立農業大学校の学生も月一回は農産物を販売。生産だけでなく、消費者に直接売ることを学ばせる試みで、客の評判も良かった。
 「私たちがいちばん食に近い場にいる。見た目や規格で決められた農産物だけでなく、不ぞろいな地域の在来の野菜や、出荷量が少ないものも売っていきたい。地域から食の大切さを発信できる場にしようとの思いでやっています」と小泉孝光店長。スタッフや農家らの熱意があふれていた。