フード最前線
(熊本日日新聞で連載)
    自ら食生活を築く    (2008-05-25)
牧場でバター作りに挑戦する大妻女子大の学生

 昨年から引き続き、大妻女子大学家政学部ライフデザイン学科「食と社会」の講師を頼まれて講義をしている。学生は百二十名。ほとんどが二年生で十九歳だ。
 先日、学外授業で、八王子の牧場「磯沼ミルクファーム」で料理体験会を行った。学生の三分の一が参加。すべて手作りし、素材からじっくり味わった。
 生徒からは、喜びの感想をもらった。
「生地から作るピザ、スコーン、三十分振って作るバター、ミルクのティスティングに乳搾りなど、一つ一つの体験が充実していて、食べるという喜びを皆で感じあえて素敵でした」
「牧場体験を通して、食の大切さについて改めて学ぶことができました。安いからといって添加物のたくさん入ったお弁当などを買うのではなく、少し高くても原産地がしっかりしていて、体に良いものを選ばなければいけないんだとわかりました」
「これまで原材料がわからなくても買っていた。牧場の体験で、少し高くても良いものを買おうと思いました。自然の味に触れたら、今まで食べたことのない味・おいしくて良い経験ができました」
 牧場体験の次は、手作りのお弁当を持参する「お弁当の日」を開催する予定だ。
一回目は「からだにおいしいお弁当」、二回目は「人に優しいお弁当」、三回目は「旬を彩るお弁当」である。
 なぜ大学で牧場体験やお弁当なのか。それは、生徒たちに自ら食生活を築きあげて欲しいと思ったからだ。
 今年は講義を始めるにあたり、学生に「食生活」のアンケートをとった。その結果は、ちょっと驚くものになった(回答は八十二人)。
 家族と同居は六五名、一人暮らしは一七名。そのうち、大学生になって味噌汁を作ったことがないのは三十五名。魚料理をしたことがないというのは四十九名。ご飯を炊いたことがない学生は十四名もいた。自分で料理をまったくしない人は三十八名もあった。
 ファストフードの利用は週一回が二十九名。数回は十一名いる。コンビニの弁当やおにぎりを食べるのは週一回が三十名。数回利用するのは三十二名にもなる。清涼飲料水を毎日飲んでいる人は二十二名もいた。
 そして、肌が荒れている(四十九名)、便秘(二十三人)、生理痛(二十一人)、生理不順(十七人)、アトピー(四人)、花粉症(十四人)、不眠(十人)、疲れやすい(三十九人)、朝起きられない(二十八人)と体の不調を訴える人が多い。運動をしていない学生は四十一人と半数だ。
 明らかに生活リズムが乱れているのと偏った食生活が原因だ。
学生が、健康で美しくなる食生活を実践できるようにするため、素材から理解し自ら食事を作る授業をすることにしたというわけだ。