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体においしい「お弁当の日」 (2008-06-22) 講師をしている大妻女子大(東京都)で、手作りの弁当を持参する「お弁当の日」を開いた。テーマは「体においしいお弁当」である。 実は、家政学部ライフデザイン学科の「食と社会」の講義の一部なのだが、お弁当にしようと思い立ったのは、「弁当の日 食べ盛りの君たちへ」という本がきっかけである。 本には、九州大で、生徒たちが弁当を持ち寄る試みで、手作りの良さを見出して食生活を見直し、そこからほかの学校との連携や、新たなコミュニケーションが生まれたことが紹介されている。そして、とても楽しそうな笑顔の学生の写真がたくさん掲載されていた。ぜひ私の授業にも取り入れたいと思ったのだ。 学校での弁当の日は、もともとは香川県国分寺中学校の竹下和男先生が滝宮小学校で始めたものだ。それが小中学校50校以上に広がり、ついには九州大学に伝わったのである。 同小の「お弁当の日」は、調理実習のある5年生と6年生が対象で年に二回実施された。そこから料理の工夫や作る喜びと楽しみを学び、家族の協力や食の感謝の気持ちを知る。児童の豊かな創造性と五感を導き出すのである。 実は、竹下先生とは学校給食のシンポジウムで知り合った。小学校や中学校の子供たちが作った弁当の写真を見せていただき、その楽しそうな雰囲気と色とりどりの弁当の素晴らしさに圧倒されたものだ。 二〇〇五年「食育基本法」が制定されたが、食育というと、とかく教育論や観念的な論議ばかりになりがちだ。ところがたった一つのお弁当に、地産地消、食の安全、食への感謝、旬などすべての食育の要素が盛り込めるということを、竹下先生から教わり、目からうろこが落ちたようだった。 大妻女子大学で弁当の日を実施したのには、もう一つ深い理由がある。食生活のアンケートをしたら、便秘に悩むが学生が四分の一もおり、肌荒れがある、疲れやすいという回答が半数以上もあったからだ。あきらかに食生活や食生活のリズムの偏りが要因である。また料理をしない学生が半数近くある一方で、ファストフードやコンビニの利用、清涼飲料水や菓子類の摂取がかなりあった。 そこで、自らの体を内面から美しくするを目標に、栄養バランスを考えた弁当の日を実施したというわけだ。するとどうだろう。雑穀のご飯と彩の豊かなおかずが詰まった素晴らしい弁当が勢ぞろいしたのだ。 食後に出してもらったレポートには、「ふだんの食生活がいかに偏っていたかがわかった」「みんなで食について語りあうことが、こんなに楽しいことだと知った」など嬉しい感想がびっしりと書かれていた。感激したのは「こんなに大変なお弁当を毎日作ってくれた母に感謝したい」というものがいくつもあったことだ。 Copyright © 2006-2024 Hiromi Kanamaru All Rights Reserved.
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