連載記事
酒蔵を開放、地域の産物で料理会 (2007-09-30) 長崎県平戸市で「食のワークショップ 平戸素材の劇場」が始まった。これは「平戸・松浦地区観光人材開発育成協議会」の新しい地域づくりの試みで、全六回のプログラムである。 平戸の農業、漁業、料理家、地域景観を結びつけて、新たな連携をつくり、「食」からの観光資源を生み出そうというものだ。 一回目は、同市の南部にある志々伎(しじき)の漁港と、元禄元年創業の福田酒蔵、それに同市内の料理家を結びつけて料理を作ろうということになった。 事前に下見に行ったときに、酒蔵が素晴らしかったし、しかも目の前が漁港になっている。酒と魚を組み合わせて、平戸のシェフに来てもらい、現場で料理をすれば、最高のシチュエーションで美味しい食べ物が提案できると思った。 同市観光課の若手の藤井誠司さん、土田一球さん、吉永由美子さんという二十代、三十代のメンバーが、がぜん張り切ってくれた。そして同市のイタリアンのシェフ、谷川克城さんと、和食の板前の宮國和彦さんの二人を口説き、酒蔵を解放しての料理会開催が決まった。 この日のために、観光課のメンバーが漁協の魚の一年間の魚種と、漁獲量のリストを作成。酒蔵に頼んで、酒造りの工程と酒の種類のテキストなど、料理に出す素材の歴史的背景から特徴、味などをまとめあげたのだ。こうすれば地域の人にも、参加者にも具体的な地域の産物がわかる。さらに料理家に頼んで地域の旬の食材を使ったメニューも作りあげた。 開催一ヶ月以上前からマスコミ各社に話をし、インターネットなどを使って告知。こうして九月十九日、福田酒造を開放しての三十名限定の料理会が開かれた。会費は三千五百円。遠くは山口県や大分県からの参加もあった。 料理会では、酒蔵を見学してもらった後、お酒二種類と甘酒、もろみ酢のティスティング。それから料理家と漁業者、農家を紹介し、料理の内容と素材を専門家が説明した。メニューは地元素材を使ったもの。「カナトフグのエスカベッシュ」「アスパラガス入りジャガイモのパテ&トマトのブルスケッタ」「サザエの炭火焼 エスカルゴ見立て」「ナベタのアクアパッツァ」「ウチワエビのスパゲッティー」「甘酒と夏香のムース」などなど。 なかでも「ナベタのアクアパッツァ」と「甘酒と夏香のムース」が参加者から絶賛。早速、翌日から谷川さんのレストラン「紺や亭」でメニューに加えられた。 料理会は、若いスタッフが、平戸の海辺の石ころを箸(はし)置きにしたり、葛(くず)の花を摘んでテーブルに飾ったりと、徹底して地域のよさが生かされたイベントとなり、参加者から大拍手が起こった。(平成19年9月30日) Copyright © 2006-2024 Hiromi Kanamaru All Rights Reserved.
|