映画評
    オーガニック(有機栽培)の推奨    (聖教新聞 2009年7月7日掲載)

映画「未来の食卓」を観て

健康は食と環境が密接に関わる

 フランスの小さな村・ガール県バルジャック村で学校給食をオーガニック(有機栽培)にするという試みが描かれます。それに2004年にユネスコのパリ本部で行われた医者や専門家の環境破壊や農薬、化学物質、食品添加物などが与える人体の影響のシンポジュウムの様子。そして大型化された農業の現場で働く人の化学農薬の健康被害のことが織り込まれて、食と環境が密接に関わっていることを、わかりやすく映像で伝えてくれます
 フランスの農業はEU諸国ではトップクラスの規模で、自給率も100%を超えています。そのことから日本もフランスのように農家を集約して大規模化し合理化すれば生産性もあがると引き合いにだされます。そして実際に大規模化が推進されています。
 ところが一方で、農家の人たちは農薬による被害をうけて健康を損ねる人が多くいること。化学肥料や農薬を大量に使うことで土が力をなくし保水力が弱り土が川へと流れだし水の汚染を起こしていること。小さな生き物たちの多様性を奪う環境破壊につながっていることを、映像は伝えます。また子供たちが食べている多くの市販の食品には添加物が含まれ、健康を損ねることも知らされます。
 これはフランスの話なのでしょうか? 実は日本のまるで鏡のような作品です。というのは映画に登場する科学者や専門家が語るデータ、たとえば、これからの子供たちが現在の大人たちよりも寿命が縮まるおそれがあるといったこと。がんや糖尿病が増加傾向にあること。といったことは、日本国内で発表されていることと同じなのです。
 また子供たちを取り巻く市販の簡易な食が大量に生産され、それがコマーシャリズムで普及し、それを食べることが日常化し健康被害にいたることも日本と同じです。日本の科学者や専門家も詳細な分析を行いデータを公表し、子供たちを取り巻く食の環境の改善を訴えている人はたくさんいます。映画はフランスの話ですが、私たち日本の食のテーブルの話でもあるのです。
 日本では2005年、食育基本法を制定し、食の改善を進め、健康な食を子供たちに伝えるように訴えています。子供にも糖尿病や肥満やアレルギーが増加傾向にあることがわかったからです。2008年には有機農業推進法が制定され、オーガニックが日本でも推奨されるようになりました。持続的な農業につながり、生物の維持にも重要だとわかったからです。
 「未来の食卓」に共鳴できたのはアトピーになった子供たちに300名以上も会い、日本国内の農家や食の現場をめぐり、子供の食が大人たちの都合によって、とんでもないものを食べさせる環境を生んでいることを知ったからです。一方で学校給食も各地に食べに行き、また有機農業の現場や多くの専門家たちにあって、食の環境を少しでも変えようという人たちにも多く会ったからです。