第49回 3拍子そろった食育の現場 三重・モクモク手づくりファーム
農業をテーマに、農産物作り、加工品、食品の販売からレストラン、体験農業までを運営して人気の三重県の農業公園「伊賀の里 モクモク手づくりファーム」に春休みを利用して家族4人で行ってきた。実は昨年6月にコテージタイプの宿泊施設ができたこともあって、泊まることができるようになったからだ。泊まっておいしい食事ができて、温泉にも入れるとなると、家族では行きやすくなる。なにせ大阪からも名古屋からも1時間半もいった山間地で、決して近いところではないからだ。
3月29日に行ったのだが、あいにくの寒の戻りで、雪が降るという寒さ。だが宿泊施設は満杯。レストランも200名の予約で満員という盛況ぶりだ。参加している人たちは、主婦のグループや家族連れ、大学の学生のグループ、小学生のツアーなど、客層がじつに幅広い。このファームは年間50万人が訪ねてくるのだが、その人気の的となっているのがおいしいビュッフェ形式のレストランやバーベキュー。それに開園以来行われているウィンナー体験教室だ。
宿泊には、ここならではのユニークなオプションがある。無料の「朝の一仕事」というもの。朝6時半に、フロントに集合して、牛の乳搾りや、野菜の種まきなどを行うもの。近くにある牧場や畑に行くのである。僕らは朝の種まきを希望した。ほとんどの宿泊客が参加する。意外や好評なのである。さて、食事は7時半からビュッフェ形式での地域の農産物を使ったレストランでの朝食。地場産小麦のパン、牧場のジャージーミルク、自家製のハム、ソーセージ、地域の野菜を使ったサラダなど、盛りだくさん。これが実においしかった。
そうして朝10時半からの始まる「手づくり体験館」のウィンナー作りに参加した。ウィンナー作りは2人以上で予約制だ。料金は2名で3150円。3名以上はプラス一人1260円。10名以上はさらに割引となる。教室は3カ所にあって、僕らが参加したのはC館。木造で天井が高く、ガラスを多用した明るく清潔でお洒落な施設である。テーブルが20あり、パン釜、醗酵室、ボイル室などが併設されている。他に、パン焼きやイチゴ大福作り、豚まん作り、わらび餅作りなども行われている。
ウィンナー作りは、およそ1時間半。インストラクターの人の説明を聞いて、それから作業に入る。各テーブルには、ウィンナー用の豚肉、うまみを出す脂身、氷、スパイス、味噌、羊の腸、腸詰の道具、持ち帰り用の保冷バッグなどが準備されて置かれている。まずは、細かくミンチにされた豚肉に細かくかいた氷を入れてよく練る。氷を入れるのは、肉が温まらないようにするためだ。
よく肉を練ったらスパイス、味噌を加え、これに脂身を小さくちぎって入れる。脂身は、プチプチとした触感を得るためであるという。脂身をよく練りこんで、それから拳銃の形をしたウィンナー作りの道具で形にする。筒にウィンナーの肉を入れて、先に羊の腸をはめ込んだキャップをはめ込み、筒の反対側から銃のにぎりのような部分を入れて、筒の中身の肉を少しずつ押し出す。羊の腸から空気をなくして先を縛り、肉を入れていく。と、面白いようにウィンナー状の長いものができてくる。筒の肉がなくなったら、筒から外して腸のもう一方を縛り、腸の途中をお好みの長さにひねると、あらあら、よく見かけるウィンナーができあがある。
たっぷりのウィンナーが出来上がるのだが、これをボイル室で、ボイルにしてもらい、それから10分氷で冷やせば出来上がり。これを試食をして、専用の保冷袋に入れて持ち帰るのである。出来上がったウィンナーはピンク色。本来の肉のうまみが素朴に生きた上品な味のものである。
体験は大人気なのだが、きちんとした素材、清潔な場所、説明と指導が上手な専任のインストラクター、と、3拍子が揃っている。現在、食育の推進が国が進めていることもあって、各地で体験学習が盛んに行われているが、なかでもモクモクの取り組みは、群を抜いている。これらの体験教室を核として、米作りや大豆栽培、味噌作り、豆腐作りなど、さまざまなカリキュラムが用意してあって、あらゆる体験と味覚の受け入れが整えられている。(ライター、金丸弘美)
伊賀の里 モクモク手づくりファーム http://www.moku-moku.com/
「i-city」内の情報ページ http://www.ict.ne.jp/pickup/mokumoku/
2006年4月2日
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