第52回 東京・神楽坂で“個性的”南仏料理
神楽坂には、メーン通りから脇に入ると、個性的な店がたくさんある。古い店から新しい店まで混在していて、歩きながら発見を楽しめる町だ。そんな中の一つが「ピル ウ ファス」である。地下鉄の神楽坂駅からすぐを脇に入ったところにある。こじんまりとした入口に設けられた、瓦のひさしをあしらった赤い扉のドアが可愛らしい。中は、ゆったりとした造りになっていて木を多用した温かい雰囲気。席は全部で26席ある。
南フランスのイメージのコンテンポラリーな感じで作られたのだという。料理も南仏を中心としたフレンチ・イタリアンである。それというのも、店主である斉藤かすみさんは、毎年3回も南仏に行っていて、知り合いのレストランで修業してきたのだという。レストランができてからは、回数が減りましたというのだが、それでも年間2回は南仏に行っているという。
「南仏にマルセイヤンというところがあって、そこのレストランで、毎回1カ月は修業をしている。実は、うちのお店の名前は、知り合いがフランスに出していたときの名前『ピル ウ ファス』からとったものなのです。コインの裏表という意味」と斉藤さん。料理はランチがメインで1890円。水曜から土曜までの11時半〜16時まで。心行くまで時間を楽しめて、凝っているけどさっぱりしてる。夜は金曜の予約のみ。
「料理の素材は季節のものを使い、ヘルシーなものにしています。極力バターやクリームは使わない。野菜のピューレに変えたりしている。素材そのもの濃度を高めることで補う。季節外のものを使わない。野菜を作る人にも食べる人にも自然の姿のレストランの料理をわかってもらえればと思います。お魚仕入れは築地。野菜は千葉からと青森からの知り合いから取り寄せているものを、あとは近所で、私が確かめてしっかりした季節のものを使います」
この日のランチメニューは、
・サフラン風味のキノコのマリネ
・ナベットオイルを入れた金時豆のスープ
・ムツのポワレ
・イチゴのデザート
「料理はフランス料理のテクニックでイタリアンを作る。今年は、テイクアウトもしています。サラダとかワインにあうものとか。お菓子の素材とかを扱っている。実は講習をうちではやっていて、それに使うものも販売しているんです」
レストランで登場した料理をそのまま習うことができたら、そう思う人は少なくないだろう。それが「ピル ウ ファス」ではできてしまう。日曜日と火曜日には、お店で教室を開いているという。
その教室がユニーク。どこから入ってもどこで止めてもかまわない。1回が材料費込みで7000円。前菜とメインとデザートを学ぶ。
「お店での教室は、今年で8年目になります。1回のけいこは8名です。1回1回が独立した教室なのです。ええ、メニューは毎回違う。もうお店がなかった15年前からしているのですが、よほどのことがない限り、作り続ける。ずっとメニューを考えてますね。好きなんです。ですから、新しい食材を試すとか大好きですし、やってみたい。農家のかたで、どうしたらいいというのがあったら、ぜひやってみたい」
おっとりした感じの斉藤さんだが、料理の話となると身を乗り出して意欲満々なのである。もし神楽坂で、ちょっと優雅なランチをしてみたいという方にはお勧めである。
「ピル ウ ファス」 東京都新宿区神楽坂6−8
電話・FAX:03−5261−9120
2006年4月25日
|