第54回 古民家で土地の味を提供 佐賀「四季のご飯 紘」
佐賀県の「四季のごはん紘」。60年前の民家をそのまま生かした料理店
地域の景観や食材をうまくつかった料理店が、最近は各地で若い人たちの手ででき始めている。もともとある素材や建築物を生かしたもので、それだけに無理なく土地に溶け込み、地域の個性も生きるし、しっとりと落ち着いていて、食事を楽しむにはうれしい空間と時間だ。佐賀県杵島郡白石町の自然食レストラン「四季のご飯 紘(ひろ)」も、そんな一つだ。
田園風景が広がる麦畑の中にある木造家屋の一軒屋。かつての古い住宅だが、その家屋を上手に使った料理店である。麦畑の中の小道を歩いて暖簾(のれん)をくぐって中に入ると、天井の高い、しっかりした梁をわたした、旧来の日本家屋。その空間を使って、料理を提供している。
この日いただいた料理は、素材を生かしたシンプルなもの。
・黒米入り玄米ごはん
・ごぼう、車麩、シイタケ、コンニャクの煮物
・切干大根と高野豆腐の炊き合わせ
・グルテンバーガーと筍とシイタケの入ったマーボー豆腐
・玉ねぎの胡麻和え
・筍のチリソース
・蕨の和え物
・ノビルのテンプラ
・玉ねぎとわかめの味噌汁
・瓜の粕漬けと梅肉
・豆乳と黒ゴマのプリン
素材の持ち味を活かし、それぞれの味じわいを楽しむ。なかでも気に入ったのがノビルのテンプラ。春の香りと苦味が、口中に広がった。
経営は岩石貴宏さん(31)と紘子さん(27)ご夫妻。貴宏さんのお父さんの実家だったところを生かした料理店だという。開店して2年半になる。建物は築60年になるという。お昼は2100円。夜は3150円。予約制である。
土曜日、木曜日、水曜日には、料理教室も開いている。ご飯とおかずと3品を学ぶもので、一回が食材も含めて3150円。月ごとの食材を使い、朝10時から12時まで。そうして食事をして13時までという、もの。1回だけでの参加でもかまわないというものだ。
「旬の野菜が基本です。野菜は鹿島の無農薬のものを使っています。料理は畑の具合で変る。野菜が届いてからメニューは考えます。野菜は家でも少しは栽培していて、豆、スナックエンドウ、ソラマメ、大根、ズッキーニなどです」と、貴宏さん。
貴宏さんが料理店を始めるきっかけとなったのは、奥さんの紘子さんと出会ってから。それまでは、9年近くアジア各地を旅をして、それから地元に戻り、実家でギャラリーを開いていた。ギャラリーでお客さんに「食事を出したらいいのに」と言われ、その頃、アフリカの楽器のワークショップで出会ったのが紘子さん。一方、彼女は、自然食の店で働いていて、料理にとても興味をもっていた。こうして2人は出会って結婚し、お店が始まったというわけだ。
熊本出身の紘子さんは、気付けば、現在の料理の食の味わいは、おばあちゃんの味になっていたという。
「高校のときに下宿していて、おばあちゃんの料理を食べていました。後でわかったのは、今の料理の味って、おばあちゃんの味だった。化学調味料を使わないで、素材を生かした料理をしてくれていたんですね」
将来は、貸してある3反の畑を活かして栽培も増やしていきたいという。また地域の人たちと連携しながら、子どもたちに健康な食を広げていきたいという。(ライター、金丸弘美)
「四季のごはん 紘(ひろ)」
849−1206 佐賀県杵島郡白石町大字辺田1101
電話・FAX0954−65−3831
2006年5月4日
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