第63回 地元産の材料でオリジナル菓子を作る 大分・佐伯
和菓子をいただく機会は、あまりない。またどこでも簡易なお菓子が氾濫するなかで、和菓子の立場はそうよくはないのでは、と思っていたら、元気な和菓子屋さんが、大分県の佐伯市にあった。「お菓子のうめだ」である。清潔で明るい店舗のなかで、販売されているのは洋菓子に和菓子。一部のあめやせんべいを除いては、すべて自家製である。
人気の商品がいくつもある。その筆頭が、自家製の餡を使った饅頭「佐伯むすめ」である。可愛らしい丸い一口サイズの饅頭。品のいい小豆の餡が入っている。小豆の皮をとって練りこんだ餡だという。どおりで上品な感触である。甘さも控えめで、素材の味わいを存分に生かしてある。皮はという味噌を練りこんだもの。といって味噌という感じがしない。味噌の本来もっているうまみと甘みを引き出したもの。なるほど、人気があるはずである。一個60円。
「佐伯むすめ」は、芋とチーズを練りこんだものもある。製品を開発したのは、梅田和裕さん。現在二代目である。梅田さんに人気の秘密をうかがうと、自家製の餡にあるという。現在、お菓子屋さんで、自分の店で餡まで練るところは少ないという。餡屋さんから購入しているところが多いのだそうだ。ところが、梅田さんは、餡から皮まで自ら材料探しから製品化まで行っていて、それが、独自の微妙な味わいと個性を育んでいるという。
「和菓子はあんこが命。それが地元の和菓子を作り、奥深いものになるんです。一軒一軒違う。親父が亡くなり、それから製餡を始めました。12年前からです。2年くらいして餡が安定してきました。自ら作るようになって面白くなってきた。やりがいがありますねえ」とうれしそうに梅田さん。その笑顔が、楽しさを表していた。小豆は質のいい北海道産を使う。味噌は県内のものを使っている。味噌を探すのも、相当の時間をかけて厳選したものという。
うめだでは洋菓子も扱っているが、洋菓子はどんな新しい製品も比較的作りやすいのだそうだ。東京で有名なパテシェが作ったお菓子も翌日には業者を通してレシピが手に入り、材料も決まったルートがあるので、同じものが地方でも簡単にできてしまうのだという。その点、材料から探し出す和菓子には、やりがいが生まれるのだという。
「佐伯むすめ」と並んで人気なのが「イチゴ大福」。もち米を使った皮で地元産のイチゴをくるんだものだ。こちらは白く美しい生地がやわらかく、イチゴをそのまましっかり抱え込んでいる。一口食べると生地の白の美しさと、イチゴの赤とのコントラストが、際立って見える。
しっとりした味わいの地元のイチゴを使ったジェラード
最近、梅田さんが、新商品として売り出し始めたのが、ジェラードである。イタリアの機械を導入して作ったジェラードは、まるで、上品なチーズのように滑らか。材料には、佐伯の地域のものがふんだんに使われる。イチゴ、ミルク、むらさき芋、ブルーベリー、梅、カボスなど、さまざまなジェラードが誕生し始めた。
「和菓子もジェラードも地元のものを使って作りたい。楽しいですねえ」と、また満面の笑顔となった。梅田さんが生み出す和菓子もジェラードも、どこにもない佐伯市だけの、オリジナル。それが素晴らしい。
お菓子のうめだ
大分県佐伯市城下西町1−1
電話:0972−24−1231
2006年7月14日
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