第73回 夫婦で栽培から料理まで 大分・竹田の山のレストラン
豊かな緑に囲まれたなかで「ずっとここに居られる幸せを感じています」というのは、大分県竹田市荻町の標高680メートルの山間地でレストラン「ニンナ・ナンナ」を営む岩淵真さん・真理子さん夫妻。レストランは九州の木材を使い、古い学校のイメージで建てられたのだという。情景に良く溶け込んで、お洒落な雰囲気だ。周囲に花園とハーブ園と畑があって、岩淵さんは、野菜や米の栽培から行い料理を作る。ちなみに「ニンナ・ナンナ」とは「ねんねん・ころり」という意味。言葉のとおりに、ここでは子供たちの健やかな眠りと健全な未来があるような情緒がある。
この日いただいたのは、サラダ、ラザニア、ピザ、黒米のリゾット、ニョッキ、ビスコッティとフルーツケーキ、ハーブティー。すべて岩淵さん夫妻が、素材から作り上げた手作りの料理だ。一皿700円から。店は、土日に営業で予約制。11時から17時まで営業をしている。週末ともなると、大分、福岡の都市部から10組から20組のお客さんがやってくる。竹田では和食系の食事どころが多いから、岩淵さんのレストランは異色。景観も雰囲気もよく、都会の人には人気なのだ。
岩淵夫妻は、平日は農業を営み、できた農産物を使って加工品を造り販売もしている。加工用トマトを使ったパスタソース。竹田市はトマト栽培で有名だが、栽培されているのは生食用の桃色系の桃太郎。ところが、岩淵さんは、加工を考えてイタリアと同じ赤色系のトマトを栽培から行うというこだわりようだ。他にブルーベリーのジャム。ハーブ。バジルなど。販売は、竹田市の「竹田市わかば農業公社」を通じて道の駅や直売所などで行われている。
ニンナナンナの手作り食品が並んだ店内(写真提供:堀米千恵)
実は岩淵さん夫妻は1991年に東京から竹田市に越してきて、移り住み始めた。レストランを始めたのは98年からである。「東京で5人の子供を育てていまして、健全な食を子供に食べさせたい、どうして健康に育てていくか、悩んでいました。ちょうど有吉佐和子さんの『複合汚染』が、話題になっていた頃です」という。岩淵さんは、生協を通じて無添加の食品を購入したり、西荻窪にできた農産物を直売する「ほびっと村」に出かけたりしていたという。
いい食べの物を手に入れるには素材を自ら作るしかない。そこで、近郊で農業ができるところ、しかも田んぼがあるところを探し始めたのだという。しかし、希望にかなうところはなかなか見つからなかった。そんな中で気に入ったが竹田市である。
ニンナナンナの前の畑の岩川夫妻(写真提供:堀米千恵)
竹田と縁ができたのは、共同保育で知り合った家族が竹田市に移り住んだことから。それで竹田を知り、自然豊かな環境にすっかり魅せられたのだという。「安心で健康な食事をするには、できるものは自分で作る、素材から創る。そう思っていたので移住しました。それに理想は田んぼがあるところだったんです。そうして現在の土地を手にいれることができたんです」という。田んぼは5反5畝ある。
7年前には長男の径さん圭子さん夫妻が近くに住むようになり、1丁6反の畑でミニトマトを栽培し、本格的に農業を始めた。「長男夫婦と3人の孫がうちにやってきます。たいていのものは自分たちで作れる。それがうれしいですね」と、満利子さんは微笑んだ。
ニンナ・ナンナ
大分県竹田市荻町大平
tel.fax.0974-68-2778
ニンナ・ナンナ http://www.ninna.jp/
2006年9月29日
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