第75回 モクモク手づくりファーム 山間地に人が集まる理由
10月の3連休に三重県伊賀市の農業公園「モクモク手づくりファーム」に行ってきた。もう何度となく訪ねている。改めて行ってみると、本当に遠い。今回は、佐賀県唐津市から新幹線を使って名古屋経由で入ったのだが8時間を要した。名古屋からだと四日市を経て柘植まで行って、そこから広報担当の浜辺佳子さんに迎えてもらってと、およそ1時間半である。しかし、この山間地にある農業ファームには、連休は連日5000名もの人が押しかけていて、大にぎわいである。
「モクモク手づくりファーム」のことは、前にも紹介したが、農産物の加工とレストランを中心としたところである。だが、それだけでは、年間50万人もの人を山間部には引っ張れない。ここでは年間50本ものイベントが組まれているのである。そのイベントのいくつかを今回は紹介しよう。
連休中に行われていたのは、ブタ・ダービーである。広場にはダービー会場が設営してある。一日10レースが行われる。連勝複式になっていて、当たるとみかんやリンゴがもらえるのである。7枠があって投票する。投票は、ファーム独自の投票券がある。
買い物をすると100円で、100ブーの券がもらえる。500ブーで、一回投票ができる。このダービー、カモやヤギなど牧場に飼われている動物たちも登場したりする。でも、そのままでは走ってはくれない。そこで、後ろから追いかけるジョッキーを募集する。ジョッキーに選ばれ優勝すると、ジョッキーにもお土産がある。
ダービーの司会進行をスタッフ男女2名で行っているのだが、この呼吸が見事。さらに生演奏のファンファーレがあるという、凝った趣向なのだ。ダービーは、ゴールデンウィークも大好評で、たくさんの人を集める。もともとこのダービーは、アメリカで行われていたものをヒントに生まれたそうなのだが、それにしても、実にユニークなイベントを生み出したものである。
ダービーに興じる人たちを見ていると、なんだか体やバッグなどに丸いカラフルなシールを貼っている。なんだろうと思ったら、これがゲームになっている。入場すると丸いシールをくれる。色の違う5種類があって、全部集めると、プレゼントがもらえる。シールを集めるためには、自分が持たない色のシールを胸に貼った人を見つけ、ジャンケンをして、シールを取っていくというゲームである。これは見知らぬ人たちと触れ合ってもらおうと生まれたのだという。
モクモクファームのずっと上の方に行くと、教育ファームがある。そこには、ロバやブタなどが飼われていて、直接触れ合うことができる。教室もあって、休日には講座が開かれている。ちょっとのぞいたら、田んぼの生き物とアイガモ農法の話が行われていた。田んぼにすむ、タニシやドジョウなどの写真があって、子供たちが手を挙げ答えると、写真を貼って黒板で紹介していく。実際のアイガモも見せて、田んぼの生態の仕組みを解説していた。これとは別に、田んぼで実際に田植えから収穫をする取り組みをするネイチャークラブという会員制のものもあって、こちらの方では、収穫の最後にアイガモを食べるところまで行っているのだという。
牧場での乳搾りや、野菜の収穫や、ウィンナー作り、パン作り、イチゴ大福作りなどといったイベントが、さまざまに行われているのだが、それが、山間地まで人を引きつける大きな力の一つになっている。なんと修学旅行だけでも年間500組が訪れるというから驚きである。
そんななかで、新しい大人向けの新企画が始まった。「農学舎」という農業を行う団塊向けを意識した研修コースである。2000平米の農地を取得してあり、そこで、一区画64平方メートル(約19.3坪)で150区画が設けられていて、そこで、野菜作りを教えるというものだ。
このシステムの先例は、すでに東京の練馬区の農家で成功例があるが、モクモクは、広大な土地と自然に囲まれた環境のなかで、スタートするのだという。年間の研修料金は15万円。月に4回の講習が受けられる。そのほか、宿泊施設が、5回分泊まれる「ぼちぼちコース」23万円。10回泊まれる30万円のコースがある。野菜作りの講習のほかに、セミナーや料理会などのイベントも行うという。開講は2007年4月だが、すでに30名ほどの申し込みがあるという。(ライター、金丸弘美)
モクモク手づくりファーム http://www.moku-moku.com/
2006年10月12日
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