第76回 地域に貢献する学校給食 大分・佐伯
大分県佐伯市の佐伯市立昭和中学校(奈良五郎校長、生徒181名)の学校給食を訪ねた。この地区は弥生といって、佐伯市街から15分ほど行った山間部の農業地帯。最近、合併で佐伯市となったところだ。学校の給食は、弥生学校給食センターで行われている。幼稚園3園、小学校3校、中学校1校の、合計7校。とはいっても全部で756名と、数は多くない。1食あたりの給食費用は幼稚園180円、小学校215円、中学校で245円。弥生地域の学校給食のユニークなのは、すべてがランチルームで、全員で食事をするということだ。昭和中学校も大きなランチルームで食事をする。
ランチルームは調理室が併設されていて、そこから調理した料理を生徒たちが、各教室ごとに、給食担当が配膳をして、全生徒と先生が一斉に食事をする。とても壮観だ。生徒にたずねてみると、ランチルームのほうが、教室で食べるよりも、気分も変わるし、いちいち教室まで運ばないでいいし、とても楽だのこと。好評である。
この日登場した給食は、初メニューだという大分県産の鶏を使った「大分トリニータ丼」。由来は、Jリーグの「大分トリ二ータ」の名前からきたもの。大分の鶏(トリ)と大分県産のニラをかけて誕生したものだという。これにもずく汁、しらす干し、みかん、牛乳と、大分県産の食材をたっぷり使っての給食。素材がいいので、おいしく食べられる。一緒に食事をした生徒たちも「給食はおいしい」と評判がいい。
弥生学校給食センターの専門学校栄養職員の松木喜美子さんによると、ご飯は自校炊飯で、大分県産のお米を使っているとのこと。年間200回ほどの給食の140回以上を米飯にしている。これは他の学校と比べても多いそうである。また肉類、魚類、野菜類も、できるだけ地場産、大分産を使うようにしているという。ちなみに昨年一年間の使った野菜22品目の統計をみると、佐伯市産は24・5%、大分県内は18・8%にもなる。他は、地域で手に入らない季節の野菜も、ほとんどが大分に近い九州産である。野菜もおいしいわけである。また月の第一、第三水曜日は「弥生の日」とし、学校周辺の農家のものを使うように心がけているという。
給食のときに、座った席に三角形に折ったメニュー表が、立っていた。名前がきちんと書いてある。中を開くと、栄養価、ビタミン、給食のメニュー内容が書いてある。お洒落な趣向である。ゲストが見えて、学校給食を一緒にするときには、必ず松木さんが、作成して置いているのだという。ランチルームを見回すと、後ろのほうにユニークなテーブルを見つけた。野菜や魚の漢字と英語名が書かれたカードである。裏を返すとひらがなになっている。魚は、どんな魚までも書いてある。大人だって読めなさそうな漢字がずらり。ゲーム感覚で楽しめて、漢字と食材がわかるとあって、生徒には好評だという。
給食のことを話してたら奈良校長先生から「うちの地区は、給食費を滞納する人が、皆無なんですよ」との話。それには驚いた。実は、各地で給食費の滞納や未払いが、少なからずあって、その対策に頭を悩ませているとは、よく聞く話だからだ。実はこの弥生地区では、各学校の地区のPTAの会長さんが、すべて集金を担当しているのだという。「すごく大変かもしれませんが、コミュニケーションをとる上でも、大切だと思っています」と木村さん。
また小学校向けには給食センターから「モグモグ通信」という給食の便りを児童を通して親向けに、中学生は「スクールランチ」という便りをPTA会長を通して直接親に配布している。「モグモグ通信は、給食や健康づくりの内容や、児童が、親に学校給食で食べたものを家でリクエストをすることがあるので、人気のメニューなどを載せたりします。スクールランチは、PTA会長さんを通して、ただ集金というのではなく、生徒の食事調査や健康のこと、家庭でのメニュー提案を、家庭向けにしているんです」という。弥生地区の給食は、地域のコミュニティー作りや文化の育成に大きく関わっている。
2006年10月20日
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