大分県竹田市はサフランの栽培で知られる。地中海原産のサフランが竹田に入ったのは明治36年のことだという。かつては全国的に栽培されたのだそうだが、現在は長野県、新潟県で、ほんの少し栽培される以外は、国内で流通するほとんどの生産を竹田市でまかなっている。竹田市では、サフラン農家が100軒あるという。サフランは、球根で美しい紫の花を咲かせる。
サフランと言えばパエリア。せっかくの日本でも珍しい生産地なのだから、農家の庭先で花を愛でながら、料理を作って食べようと企画されたのが「サフランを使った料理を楽しむ会」である。竹田市サフラン生産出荷組合の組合長の渡部親雄さん宅を開放してもらい11月8日に行われた。主催は、竹田研究所と組合の共催である。このイベント、サフラン栽培100年という竹田市の歴史のなかで、農家の庭先でパエリアというのは初の試みである。
渡部さんの庭にテントが張られ、机が並べられ、そこにガスレンジが置かれ、大きなパエリア鍋が並んだ。その横にはサフランの花が咲いている。別棟では、渡部さんの指導でサフラン摘みの体験ができるようになっている。出来上がった食事は、里山の景観の美しい田んぼの周辺にござを敷いて、ピクニック気分で堪能してもらうという趣向である。
参加者は30名限定。佐賀や福岡から来た人もあった。2つのグループに分かれ、サフラン摘みと料理を交互に行った。この日のために、竹田市産業建設部農林畜産課営農係の前原文之さんの手で、サフランの歴史、栽培法などを紹介した冊子が作成され、参加者全員に配布された。サフラン摘みは、渡部さんの指導で行われた。花弁は6枚。その中には、黄色い雄しべと紅色の雌しべがあって、雌しべだけを取る。雌しべを乾燥させたものがサフランになるのである。
料理は大きなパエリア鍋を2つ並べ、湯城さんの解説のもと、魚介バージョンと山里バージョンを同時進行で進められた。鍋はまず塩を振ってから、たっぷりのオリーブオイルを入れて、それから鶏肉、しいたけ、たまねぎ、パプリカなどをたっぷり入れる。そのイントロダクションからして、素人の料理作りとは手順や方法が違った。そこからトマトを入れ、ニンニクを入れ、水とサフラン水をなみなみと入れる。そうして煮立ったら、とがない米を入れるのである。
湯城さんの解説が、次々と入ってのライブ中継のような料理作りは参加者をくぎ付けにした。
「パエリアはお父さんの料理です。スペインではお母さんは指示を出すだけ。家族のためにお父さんが作るんです」
「パエリアは本来山の料理。ウサギや鶏やカタツムリやインゲン、パプリカなどを使います」
「魚介類が入るのは、後でできたスタイル。料理ではエビやイカはすぐ硬くなるので、先に取り出しておいて、後で飾り付けます」
「米はとぎません。米にたっぷりと肉や野菜のスープを吸い込ませ、その米の味を楽しむ料理だから。水で米をといでしまうと、水を吸ったぶん、味がうすまります」
など、パエリアの料理のポイントから、スペインのエピソードまでがちりばめられて、参加者も料理を行った。そして特別バージョンとして、湯城さん版の営業用のパエリアも披露された。出来上がった料理は、田んぼのそばのテーブルに並べられ、竹田市の竹を使った料理皿を使って、3タイプのパエリアとデザートを楽しんだ。晴天に恵まれ、景色もいいとあって、優雅な最上の料理会をなった。参加者から大好評であった。
●竹田研究所 竹田市産業建設部商工観光課
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