第83回 無添加・国産のしょうゆ造り 東京・近藤醸造
東京都あきる野市で醤油醸造をする近藤醸造には、近所の人たちがしょうゆの購入に多く訪れる。また年末にもなると、ギフトの需要も急増する。北海道から九州まで、東京からのしょうゆが送られる。醸造元からの直接販売で、お値段も手ごろというのもあるが、なにより、昔ながらの本物の調味料というのが重宝される理由だ。「贈る人が無添加で国産ということで贈答にしてくださる。そして使った人がリピーターになってくださるんです。お客さんに美味しいと言ってもらえるのがとてもうれしいですねえ。うちのしょうゆを使ってますと言ってくださる店も、ここ20年で増えました」とは、代表の近藤功さん。
近藤醸造は創業明治41年。近藤功さんは三代目となるが、先代からの手法を受け継いで今もしょうゆ作りを行う。材料は、大豆と小麦と塩と水。蒸した大豆と炒った小麦に麹を入れて種麹を作り、塩水に加えて発酵させる。発酵したものが「もろみ」。「もろみ」をしぼって醤油が生まれる。発酵は昔ながらの木桶を使い、一年から1年半をかかる。「今は、温めて半年くらいで発酵を早める方法もありますが、やはり一冬を過ごして、外気と同じ温度のなかでゆっくり発酵させたいんです。寒い冬を過ごしたほうが、味がしまる」という。14個の木桶で、年間400kl。1リットルで40万本のしょうゆを作る。
原料の大豆、小麦は国産。塩はメキシコの天日塩を使う。「大豆は、ほどんどが東北です。小麦は埼玉や群馬、栃木などの関東。去年は東京の小麦も使いました。水は秩父山系の伏流水です。塩は、国産の業務用は、イオン交換膜樹脂法(塩化ナトリウムの純度が高いもの)ですので、やはり自然の天日塩を使いたいので、メキシコのものにしています。大豆や小麦を使うのは、多少でも日本の自給率アップに貢献できるかなと思っています。1リットルのしょうゆを作るのに大豆が250g、小麦が250g、塩が180g、水が640mlと原料もかなりかかります」
しょうゆは、実は国内需要は減っている。むしろ日本食がブームの海外のほうで伸びている。「昔は、うちのしょうゆを使うのは、それこそ近辺だけでした。当時は、今のように調味料がありませんでしたからね。家族で18リットルくらい使っていた。3、4カ月ごとに近所を御用聞きをしてトラックでもっていった時代があったんですよ。使い終わるとお金をもらっていた。そんな時代があったんです」と近藤さんは笑う。今は、生協、デパート、こだわりの店などが近藤醸造のしょうゆを扱う。また国分寺、武蔵野市、西東京の学校給食で使われている。最近は、しょうゆのほかに作っているめんつゆやポン酢の人気も高い。
「しょうゆって素晴らしいと思います。塩、大豆、小麦が材料。だのに、香りも色も着いて、他にまねができないものができる。それがすごいと思います」と、近藤さん。その話しぶりが、いかにもしょうゆ作りが楽しそうという雰囲気なのだ。近藤醸造の所属する日本醤油協会では、しょうゆの歴史から醸造法、レシピブックなど、ここ3年で、資料作りを行い、2006年5月から小学校への出前授業を始めた。すでに10月までに80校で授業が行われた。好評ですでに145校から依頼がきているという。
出前授業の講師として近藤さんも積極的に参加している。これまで八王子、あきる野市、小平市、世田谷区などの小学校に出向いた。対象は小学校5年生の総合学習。「しょうゆのよさを知ってもらうのが狙い。醤油の不思議、微生物発酵を説明します。かなりいい反応が返ってきます」という。「醤油のすごさ、本来の美味しさを知ってもらいたい。これからも自然のしょうゆを作っていきたいですね」とうれしそうに語ってくださった。
■近藤醸造元株式会社
東京都あきる野市屋山田733−1
電話042−595−1212 FAX042−596−4151
フリーダイヤル0120−00−9659
2006年12月8日
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