第85回 フルコースなのに低カロリー
赤い果実とトマト、ピーマンのガスパチョ牛フィレ肉のキャベツ包み山葵佳味、森の茸添え
フレンチのフルコースで、360kカロリー、塩分2.2gという健康的なメニューで、ふだん食事が制限されている糖尿病の人たちにも十分なディナーを楽しんでもらうという、実にユニークな会が行われた。主催したのは、糖尿病センターを持つ「医療法人社団 こころとからだの元気プラザ」(下村満子理事長)。
題して「360kカロリー、塩分2.2グラムの美味しいフレンチ・フルコースディナー・サロン」。開催されたのは12月21日の夕方。日本橋のロイヤルパークホテルである。今回4回目になるディナーは、低カロリーの料理を長年研究してきた岩月明シェフと下村満子さんが出会ったことに始まる。
糖尿病で食事制限がある人たちに多く接していた下村さんは、毎日、粗食で同じような食べ物を食べて、かえってストレスになっている人たちがいるのを知った。そんなとき、岩月さんとの出会いがあった。フルコースでたまにはゆったりと食事をしたい。そうは思っても糖尿病では叶わない。それがフレンチで、低カロリーで実現する。下村さんは岩月さんと意気投合し、サロンが実現した。たった一回の会だったが、リクエストが多く、今回は4回目の開催であるという。
まず、着席して渡されたコースメニューとディナー案内が、意表をついている。前菜から、メイン、デザートまで、すべて食材の一つ一つに、量、カロリー、淡白、脂質、食物繊維、塩分が付いているのである。また案内状には、今回の料理をあらかじめ「医療法人社団 こころとからだの元気プラザ」の関連団体「財団法人東京顕微鏡院 食と環境センター」で栄養成分が分析され、その内訳までが解説されるという親切さ。さらに、一般的な料理の参考値が示されている。
それによれば、「とんかつ定食 1103kカロリー」「刺身定食 530Kカロリー」「折り詰め幕の内弁当(焼き鯖)695kカロリー」「ハム野菜サンドイッチ 370kカロリー」「フランス料理フルコース 1400Kカロリー〜2000kカロリー」などとなっている。通常、私たちの食事は成人男性で2200kカロリー、女性で2000kカロリーといわれるから、いかに一般の食事でバランスをどうとるかは、大切なことになるわけだ。まして、フルコースとなれば、一日の大半以上の食事をすることとなる。
この日のメニューは、
・冷製秋野菜のコリアンダ香味蒸し煮アルザンスの思い出
・新鮮な根野菜のスープ(玉葱)
・平目と野菜の漆器焼き重ね盛り
・牛フィレ肉のキャベツ包み山葵佳味、森の茸添え
・赤い果実とトマト、ピーマンのガスパチョ
・コーヒー、パン
ちなみに「牛フィレ肉のキャベツ包み山葵佳味、森の茸添え」を引き合いに出してみると「牛フィレ肉 60g カロリー80 淡白12・3 脂質2.9 食物繊維0 塩分0.1」となる。他の素材は、シイタケ、舞茸、シメジタケ、バルサミコ酢、キャベツ、照り焼きソース、バター、山葵である。それぞれの成分内容が全部示してあり、合計が102カロリー 淡白14・2 脂質3・9 食物繊維1・9 塩分0.1 である。
ディナーでは、すべて食事を出されると同時に岩月シェフからの解説がつく。脂分をさけるために肉は軽く焼いて脂分を省いてあるのだという。塩分を少なくするために塩水をつくりそれを刷毛で塗るという。もっとも最大のポイントは、素材探し。素材のいいものを使い、そのうまみをいちばん引き出すことを考えると、調味料もほとんどなくて、いい味を引き出せる。素材探しは、最新の注意を払い、今も力のある素材を探しているという。
料理は、岩月シェフの話の通り、素材と素材の微妙な、うまみ、薫り、酸味などが、融合しあって繊細さのあるハーモニーを作り出していて、非常に上品で味わいのある料理。しかもこれが、食べてみると意外や十分な満足感がある。存分に味わい、語り、ゆっくりと食べるからだろう、充足感に満ちたディナーであった。
特別参加した、東京農大教授の小泉武夫さん、音楽評論家で作詞家の湯川れい子さんも、食事の前は、低カロリーのフルコースと聞いて、みなさん美味しさ、量的なことも、半信半疑だったとのこと。それが、みなさん大満足という大好評で太鼓判であった。これから、こういったライフスタイル提案型の料理は、これからもっと評価され広がっていくだろうということを実感した会だった。今回の会は、2006年で一度終了し、次回から食材や料理メニューを改めて、再開する予定だという。(ライター、金丸弘美)
ロイヤルパークホテル 電話03−3667−1111
医療法人社団こころとからだの元気プラザ http://www.genkiplaza.or.jp/
2006年12月27日
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