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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第89回 地域の食材で給食作り 大分・竹田
子供たちのため野菜を作る堀さん

 大分県竹田市の久住地区にある久住学校給食共同調理場では、地域と連携した給食の取り組みが行われている。調理場で作る給食は、久住小学校、白丹小学校、都野小学校、久住中学校、都野中学校5校の402食。食材の野菜は、地域の農家の「菜園グループ」の8人のメンバーからほぼ毎日届けられる。キャベツ、ほうれん草、白菜、ネギ、ゴボウ、ニンジン、サトイモ、大根、イチゴなどだ。地域との連携は昭和50年に調理場ができたときから行われている。

 「菜園グループの方が、自分で持ってきてくださいます。背負ってきたり、軽トラックで運んでくださいます。多いときは使う食材の70パーセントになるときもあります」と話すのは学校栄養士職員の淵範子(ふち・のりこ)さん。たりないものは、地元の商店や地域食材を扱う「わかば公社」から調達している。

 「菜園グループ」の代表は堀シゲ子さん。学校の近くで農業を営んでいる。堀さんは、給食が始まって以来というもの、ずっと子供たちのために野菜作りをしてきた。「楽しみだし、自分の健康作りでもある。野菜を持っていくと小学生が、手を振ってくれる。キャベツがおいしい、キャベツのおばちゃんと呼ばれたりしてね。それがうれしくて」と堀さん。堀さんは、安心安全で美味しい野菜をということからすべて農薬を使わない。防虫には、焼酎と赤唐辛子の液を薄めてまいたり、虫を手でとったりしている。

 堀さんの畑には、子供たちが野菜作りの体験でやってくる。また学校に頼まれて大根栽培を教えにいったり、「招待給食」で呼ばれたりもする。栄養士の淵さんが、堀さんたちの取り組みを紹介するポスターを作製して学校に張り出したり、給食のときに学校をまわって話したりもしていることから、子供たちにも地域の野菜作りのことが良く知られているのである。もっとも菜園グループのメンバーが高齢化していること、市の財政難から他の多くのところで行われ始めた合理化での外注化のうわさもあって、将来の地域のつながりも不安視されている面もある。

調理場で揚げられるギョロッケ

 給食のお米は大分県産のひのひかり、肉は久住の黒毛和牛、魚は給食会を通してのもの。料理に使うだしは、イリコ、カツオ、昆布を用いる。米飯は週に3回。パンは2回。それもピザトーストやフレンチトーストにしたりと工夫している。また県産の米粉パンも人気だ。「子供たちに食の安全はもちろん、本物の味を伝えたい」と堀さん。メニューは、冬場は暖かい汁物、夏は冷たい冷やしソーメンを入れたり、郷土の料理も取り入れるなど工夫をこらしている。

 また竹田市では、月に1回「ふるさと給食の日」を設けて、地域の食材を利用した給食が行われる。このため栄養士さんたちが集まって会議をしてメニュー作りをする。竹田市では全国でも珍しいサフランが栽培されているが、そのサフランを使ったごはんも給食に登場したりする。この日は、淵さんたち栄養士は、地域の生産家や生産物のポスターや放送用の資料などを作成し学校に配布して、地域のことを知ってもらう活動をしている。また大分県では、年に1回は「学校給食まるごと1日大分県」が行われていて、そのときには県産での給食が大分県全域での取り組みもされている。

久住小学校でのランチルームの給食

 給食は午前中に作られ、車でそれぞれの学校に運ばれるのだが、その一つ、久住小学校にうかがった。生徒は88名の学校。構内は木をふんだんに使っていて、落ち着いた環境のいいところだ。学校ではランチルームで、全生徒と先生が一緒に食事をする。学校では、6年生から1年生の縦割りでのグループ活動が、掃除や、芋ほりなどで行われているが、ランチルームでの食事でも、学年別での給食のほかに、グループ別の給食とが、交互に行われている。「縦割りを通じて年長の児童たちの下にたいする思いやりや、リーダー意識を育てるためにおこなわれています」と後藤禮子校長先生。

米粉のパンはしっかりした味わい

 ランチルームは、広々として天井も高く、採光もよく設計されている。この日のメニューは、米粉のぱん、ギョロッケ、かに玉スープ。小学生1年生のテーブルで、楽しい給食をいただいた。(ライター、金丸弘美)

 2007年1月25日