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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第91回 生産者、料理家、行政が一堂に会して「食のプロジェクト」スタート
使われた海産物と料理

 佐賀県で進められている「唐津玄海食のプロジェクト」が、いよいよ始まった。この企画は、市町村合併に伴う新しい地域の景観とともに豊かで多様な食文化を発信しようというもの。しかも農業者、漁業者、料理家、行政、食の専門家などが、一堂に会して、食材の歴史的背景、栽培、加工法も明らかにし、プロの料理家が参加して、味わいも存分に楽しんでもらおうという全10回の「味覚ワークショップ」。

 スタートの一回目の2月7日は、イカの活き造りや朝市で全国的に有名になった呼子から。呼子は海産物がさまざまある。地元のフレンチレストラン「セゾンドール」で、海産物を使ったフレンチフルコースで始まった。普通の料理会とは、いささか趣が異なる。この日、料理の素材を提供した漁業、農業関係者が一堂に会した。料理の合間に、生産者が素材の物語を語ってもらうという趣向だ。また素材を紹介したテキストもこの日のために用意された。

 まずあいさつは、今回のプロジェクトの中心となった佐賀県くらし環境本部くらしの安全課の西博人さん。準備、段取り、料理家、農業者、漁業者、役場などの調整役を果たし、新たなコラボレーションを生み出した。こういった地域横断の連携の仕方と打ち出し方は、佐賀県でも異例だろう。事前に全国に向けた広報も行われ、各地からワークショップの予約が入った。またマスコミの関心も高く、いくつもの取材が入ったのである。なかでも地元の唐津ケーブルテレビは、全10回を追いかけて特番が製作されることとなった。

参加者に解説する前山仁シェフ

 料理の始まる前に前山仁シェフが料理メニューを解説。地場の魚を存分に使った創作のフレンチである。

・吟鯖の酢洗いねぎ醤油添え

・萬坊とら河豚白子のロティール。玄米、豆腐リゾットと共に

・宝凍イカと小野さんトマトの冷製パスタ

・ほんのり温かい萬坊厚切りとら河豚唐子風味

・うね鯨のラグー藤田さん葱添え

・呼子おごぜ吟醸酒蒸し

・呼子鮑ステーキ大根とロゼワインバターソース

・山口さん甘夏温製クレープ

・甘夏娘パウンドケーキ

・コーヒー

味覚ワークショップに参加した生産家のみなさん

 料理の前に素材の資料がテーブルに事前にメニューとともに配布されて、玄海水産振興センター金丸彦一郎さん、東松浦農業改良普及センター進藤幸広さんが、地域の素材を紹介をした。そうして、料理が順次出されながら、素材を提供した漁業、農業関係者が、食材について語るのである。その合間に、前山シェフも調理法やソースについて解説を行った。料理の素材から調理法も話すとあって、参加者から、そのうまみ、味わいが、どこから来ているのかを知って、納得といったうなずきがあちこちでみられた。また素材から会話も広がった。

 素材の話では、知らないことがいくつも登場した。フグは実は養殖で、玄界灘の海水を使っているが、陸上で育てられていて、安定した環境で、健康なフグが育つのだという。名物のイカは、2年前に開発された急速冷凍技術で瞬間冷凍されることで、活きたうまみを逃さずに提供できるようになっており、今回の料理で参加者には初お目見え。

好評だった冷製パスタ

 好評だった一つが「宝凍イカと小野さんトマトの冷製パスタ」だったのだが、なかでもソースには完熟しない青いトマトが使用され、これにドライトマトが敷かれて、少量のパスタとイカが入った、実に上品なもの。爽やかな酸味で、イカと素材のうまみが鮮やかに浮かび上がる、軽やかなパスタ。女性人から「幸せをもららす料理」の声があがった。

 「こんな料理会こそ、唐津がやるべき」「食事がうれしいし楽しい」「次回以降が楽しみで、いろんな食べ方があるのがうれしい」と参加者に好評。なによりも張り切ってくださったのは、生産者の人たち。「こういう形で私たちの農産物が知ってもらえてうれしい」とは、甘夏生産で知られる山口初さん。「私たちが地元で魚を食べるとなると刺身か煮物くらい。こういった形で違った料理にしてもらえると、売り込みをする場合にも、相手にいろんな料理の方法を話すことができるしありがたい」とは、魚を提供した古川勝彦小川島漁業参事。「俺らがまったく思いもつかない料理になる。俺らじゃ発想が浮かばない」と驚いた顔をしたのは、トマト生産家の小野芳文さん。味覚の豊かさが地域をつないだ、新しい試みは好評で迎えられた。

2月7日(水)12時30分〜14時30分

内容:鯨や磯魚(鯖、イカ、オコゼ、呼子の河豚など)を使ったフランス料理と甘夏を使ったデザートを味わう。

会場:"フランス料理店 「セゾンドール」

住所:唐津市呼子町殿の浦

電話0955−82−3655

定員:20人

料金:5,000円

★問い合わせ  佐賀県くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)

電 話 0952−25−7096    FAX 0952−25−7327

佐賀県くらしの安全安心課食育担当のメール
mailto:nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp

 2007年2月13日