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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第92回 生カキを使ったイタリアンを生産者と味わう
からつん牡蠣とフルティカトマトの泡

 市町村合併で加わった地域の食を料理の専門家と味わってもらおうという「唐津玄海食のプロジェクト」。その2回目はイタリアンでのフルコース。旬の生カキをメーンに織り込んで、それに地域の食材が彩りを添えるという、見た目も美しく、味わいは素材の持ち味を生かした、やさしに包まれたぜい沢なひととき。

 料理を手がけたのは佐賀県唐津市和多田で2002年にフレンチ&イタリアン「ワイズキッチン」を開いた中江義行シェフ。中江さんは、北波多の出身で、1989年に料理人を志し90年、ホテルニューオータニに入社。その後、博多、幕張、佐賀の各ホテルでフレンチとイタリアンのレストランに勤務した。2001年にホテルニューオータニを退社し、2002年12月にワイズキッチンのオーナーシェフになり現在に至っている。

料理を手がけた中江義行シェフ

 この「ワイズキッチン」は、地元ではリーズナブルで、素材にこだわって美味しい、落ち着くということから人気の店。生カキの生産者の坂口登さんのカキが使われていることと、店の評判がいいということから、今回のプロジェクトの要請へとつながった。「実は、僕も地域と連携し、地域のためになることを、ぜひしたかった。僕は北波多の出身。北波多の人に聞くと、何もないと言われる。ところが、アスパラなんて、最上のものが手に入る。地域のものをもっと生かしていきたい」

 イタリアンでは、カキがボイルされたものやフライにされたもの、ポタージュになったもの、デザートになったものと、同じカキでも味わい、食感、見た目が、まったく異なる。しかもカキの素材をまるまる上品に生かしてある。そのバリエーションとバランスで見事な味わいが堪能できるように腕が振るわれていて、参加者からたびたび賞賛の声があがった。

・からつんカキとフルティトマトの泡

・からつんカキと相知のビッグな椎茸・タケノコ・一の塩飾り

・からつんカキと七山ほうれん草のポタージュ、カプチーノ仕立て・古代米のリゾット・からつんカキのポッシェ添え、自家製カラスミ風味

・相知のグリーンアスパラガスと伊万里牛のグリル、からつんカキのベーコン巻きポワレ添え、赤ワインソース

・からつんカキと七山・武藤さんのこだわり自然卵のクレーム・ブリュレ・カフェ(コーヒー)、パン2種(イカスミ、プティパン)

料理の素材について解説をする生産者の人たち

 料理には、中江シェフと、食材を提供した生産者のコラボレーションによる解説で、素材の背景から味わうという趣向。フルティトマトを提供したのは松本智栄さん。2年前から栽培を始めた品種で、こぶりで生食用だが、酸味と甘味のバランスがとれたもの。参加者から「最近は酸味の薄いトマトが多いなかで、酸味があって、それがほどよく、カキを引き立て好感がもてた」と感想が述べられた。

 シイタケはクヌギに咲いた原木がディスプレーされて、中山茂広さんが紹介した。原木になるクヌギは育てるのに10年。シイタケは菌を打って、二冬過ごしてできる。肉厚で、木と山の清涼な味わいがたちのぼるようなしっかりとしたもの。これに採れたばかりという旬のタケノコが添えられての料理にはため息がもれたほどだった。そうして皿の飾りには、ぜい沢にも地元の加唐島の海水から作られた塩が彩りに使われた。

 グリーンアスパラは岡口隆さんのもの。地元よりも、むしろ県外で人気で、福島にまで行っているのだという。土作りで、うまみを最大に出すように工夫しているという。長いままのアスパラが、3等分に切られて、先のほうのややある青くささ、そして下のほうの甘味を味わうという料理。これに伊万里牛とカキのベーコン巻きがあって、肉と野菜の調和がうれしい逸品となった。

 デザートの素材に使われたのは七山で標高500メートルの「ななやま農園」武藤智英さんの平飼の鶏の卵。「飼料もこだわって自ら配合したもの。卵が力強いし、味わいも最上」と中江シェフ。

参加者には食材のテキストが配布された

 この料理会、参加者で店の常連さんという女性お2人は「たくさんの人がいて、ものものしくて、何事かと最初は思いました。普段食べに来ていて、地域の素材にこだわった、いい店だとは思っていましたが、今回は、その生産者の人たちの顔まで見ることができて、ああこの人が作っているのかとわかって、とてもいい会だと思いました」と、新たな取り組みにも納得してもらった様子。実は、生産者も料理家と一緒に、素材から語るというのは、初の試みとあって新たな地域の連携が生まれたのだった。

●2月14日(水)11時30分〜13時30分

内容:カキを使ったイタリア料理を味わう

会場:イタリア料理店「ワイズキッチン」

住所:唐津市和多田西山3−36

電話0955−72−8716

定員:20人   料金:3,500円

★問い合わせ  佐賀県くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)

電話:0952−25−7096    FAX:0952−25−7327

佐賀県くらしの安全安心課食育担当のメール
mailto:nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp

 2007年2月16日