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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第93回 シェフと主婦で本格ブイヤベース作り 大分・佐伯
料理を指導する河野辰也シェフ

 大分県佐伯市で、佐伯の豊かな魚介類を使った「食育ワークショップ ブイヤベースの料理教室」が2月22日、調理施設のある保健福祉センターで開かれた。この催しは、食育事業を推進している佐伯市企画課が佐伯市魚市場とPTAを結んで実現したものだ。

 佐伯市は漁港があり、多くの新鮮な魚が揚がる。しかし、最近は若い人たちの魚離れもあって、身近な魚をお母さんたちに知ってもらいたいということから企画されたものだ。小魚をお洒落に簡単に、それもプロの料理家の指導で、楽しく食べてもらおうというものだ。

 このワークショップの講師を務めたのは、地元でもよく知られるレストラン「ムッシュ カワノ」のシェフ河野辰也さん。河野さんは、フランスの三ツ星レストランで働き、オランダ、ドイツ大使館の料理長を勤め、8年前に生まれ故郷の佐伯市でレストランを開いた。人気のシェフの料理指導とあって定員30名は、あっというまに満員となった。

魚の紹介をする佐伯魚市場の瀬脇隆宏さん

 当日はレシピと料理法とともに、食材をよく理解してもらうために佐伯市魚市場にあがる魚の種類と量、それに旬の一覧が作成され参加者に配布された。さらに魚市場の代表である瀬脇隆宏さんが、自ら会場に来て、この日に使う魚と魚市場の様子を紹介した。

 当日使われた魚は、採れたてのホウボウ、ウチワエビ、カワハギ、月見貝、赤エビ、コウイカ、ハマグリ。魚の紹介の後、河野シェフが、自ら素材の下準備から料理までを披露。「ブイヤベースというのは、地中海の漁師の料理で、ぐつぐつ火を炊いて煮る、という意味なんです。ですから多少大胆に、作ってみましょう」と河野さん。といっても、素材の扱いから包丁の使い方、コショウの振り方まで、ポイントと細かな手順を説明する。

シェフ自ら料理のポイントを直接の指導

 「ペーパータオルを使うのは、雑菌を避けるためです」「材料を切るときは、まず野菜の香りの薄いものから切ります」「オリーブオイルにニンニクを入れて軽く炒めますが、焦がさないよう。焦がすとスープがにごります」とか、丁寧な説明にお母さんたちは熱心にメモを取る。

 料理の紹介の後、それぞれテーブルで、いよいよ料理の開始だ。すべてのテーブルをシェフが回り、お母さんたちの素朴な質問にも、丁寧に答えるとあって、料理会は、大変な盛り上がりだ。料理ができあがると、いよいよ試食会。

できあがった佐伯の魚介類のブイヤベース

 「美味しいです。料理の味に性格が出ていると言われました(笑い)。シェフに言われて、味も、何回もみました。一回目より二回目、三回目となると味がよくなるってことを知った。味は塩で調えるだけで甘味は野菜のそのままでいいということも知りました。魚料理も調理次第で、美味しい料理になることがわかりました」とは、参加者の小野照美さん。

 やはり参加者の山部亮子さんは「すごく美味しかった。魚を使うのは慣れていないので、うまくできるか不安だったけど、豪快にと先生がおっしゃるので、簡単にできそうに思えた。海外の素材を使わないとできないと思っていたら、佐伯のものでできると知って、それがよかった。家でお客さんがいらっしゃったときに出すといいなあと思いました」と、嬉しそう。

 「楽しかった。今度は子供とともに参加したい。ホウボウなんか生でみることも、扱うこともないから、それを使うことだけでも、よかったし、楽しい会でした」とは、和合芳美さん。また多くの方が共通してあげたのが「知らない人たちと一緒に料理をして、知り合いになれたこともよかった」ということだ。

 料理指導をした河野さんは「とてもいい試みだと思います。素材の違う使い方を知ってもらえる。また僕にとっても、生の声を聞くことができるのでいい機会でした」と言う。楽しい雰囲気に包まれた、しかも地域の素材や港や料理家や、人をつないだ素敵な会であった。

 2007年2月24日