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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第94回 特選素材でブイヤベース作り 佐賀・肥前町
魚介類を豊富に入れたブイヤベース

 佐賀県で始まった「唐津玄海食のプロジェクト」。2月24日は、肥前町での「晴気の魚介でブイヤベースのワークショップ」を実施した。肥前町は佐賀県の西北部に位置し、湾を挟んで長崎県の鷹島町、福島町と向い合わせに突き出した半島部分にある。丘陵地で、上場大地と呼ばれ、多くの棚田がある。ここで栽培される米は、最上のものと評価も高い。沿岸部はリアス式海岸で、さまざまに表情を作り、他の地域にない個性ある景観をもっている。釣りの場としても人気が高い。人口は8760人。世帯数は2523戸である。

 ワークショップを行ったのは伊万里湾に面した世帯数54戸人口221人の晴気地区。この地域は縄文弥生から中世時代にかけ文化を築き、半農半漁を主な生活の営みとしてきたところ。しかし、近年は、さまざまな環境の変化からか漁獲量が激減している。現在、肥前町漁業協同組合に所属する組合員は17人。最近は、漁獲量の激減からカキの養殖も行っている。

ワークショップに参加した地元の漁師さんたち

 ワークショップの会場は、港のすぐそばの晴気公民館。今回は、和多田のレストラン「ワイズキッチン」の中江義行シェフが、漁港まで出向き最上の食材を用いて料理を公開で紹介しながら進めるワークショップとあって、30名の定員をオーバーして、会場は満員の37名。遠くは秋田、大分、長崎からの参加者もあった。

 公民館の内部を教室形式とし、前のテーブルには、晴気牡蠣生産組合代表の岩本仁さん、唐房牡蠣生産者坂口登さん、玄海水産振興センター副所長の芝山雅弘さんを始め、関係者が並び、カキの養殖、この地域で採れる魚や環境などをテキストを使って解説。この中で、環境の変化から漁獲量が減っているという話があったとき、会場にいたのが広津素子衆議院議員。漁業者とともに原因究明のために調査を遂行し、政策提言を行う、という思わぬ話も飛び出した。

 生産者の解説の後、奥の調理室に移って、中江シェフの調理のライブが始まった。この日、用意されたのは採れたてのアラカブ(カサゴ)、メバル、晴気のカキ、緋扇貝(ひおうぎがい)である。特にカサゴは、この地域での伝統の一本釣りの最上のもの。ずらりと並んだ材料だけで、会場がどよめいた。

 「これだけの最上の素材を扱えるだけでも、ここに来た甲斐があるというものです。フランスのマルセーユで生まれた漁師料理のブイヤベース(ぐつぐつ煮るという意味)は、本物の味を守るために憲章があって、魚類以外は入れないということになっていますので、これは、あくまでも唐津流。ご家庭でもできるものを紹介します」と中江シェフ。

ブイヤベースの料理法を紹介する中江さん

 用意された浅鍋にたっぷりのバージンオリーブオイル。これに唐津産のみじん切りのニンンク、それに甘味と酸味が強い小ぶりの唐津産のざく切りのフルティカトマト。そこにサフランと日本酒をいれ、それから、相知産の椎茸の出汁と昆布出汁をたっぷり入れる。そこにまるごとのカサゴとメバルがあふれる様に、鍋に並べて入れられ、ゆったりと煮込まれた。煮た魚は皿に盛られた。残った煮汁に緋扇貝と生カキを入れて椎茸のスライスがたっぷり入れられ、こちらも魚と一緒に器に盛られた。

 料理のライブには、囲んだ参加者から次々と質問も飛んで、より具体的に料理が理解できるものとなった。まずは、ブイヤベースが、人数分テーブルに並んでの試食会。上品なスープでやさしい味わい。脂ののったメバル、さっぱりとしたアラカブ。ぷりぷりとした白い身が、口のなかではじけるようなうまさ。自然の塩味を身につけた非扇貝と、グリコーゲンたっぷりでふくよかではちきれるような身をもったカキからは、海の香りが、さわやかにわきのぼる。

試食する参加者

 そうして残ったスープには、肥前町のアイガモ農法で栽培された棚田米が加わり、パエリアが作られて出され、参加者は、肥前町の海の幸を堪能したのだった。「みなさんに、ここまで来ていただけて嬉しかった。意見を聞くことができただけでもいい会だった。ぜひ続けて欲しい。お客さんに普段の普通のいつもの素材も食べてもみたいとも言ってもらえたことも嬉しかったです。感無量でした」と、カキ生産者の代表の岩本仁さん。

 「想像以上の素材が揃い味が出て、お魚もいいし、椎茸もいいし、米もいい。ここで料理と作って食べるだけでも、素晴らしいですよね」と中江シェフ。約2時間にわたって行われたワークショップ。最後には、生産者とシェフに会場の参加者から大きな拍手が贈られた。

●2月24日(土)12時〜14時

内容:魚介類を使ったブイヤベースを味わう

会場:晴気公民館

住所:唐津市肥前町入野丙1038−3

定員:30人  料金:3,000円

料理人:中江義行シェフ

★問い合わせ  佐賀県くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)

電 話 0952−25−7096    FAX 0952−25−7327

佐賀県くらしの安全安心課食育担当のメール
mailto:nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp

 2007年3月1日