第95回 原木栽培のシイタケ狩りとデコポンのデザート
佐賀県で行っている「唐津玄海食のプロジェクト」。合併したさまざまな地域の特性と食材を活かして、食を楽しんでもらおうというワークシップ。1回目の呼子の磯魚のフレンチフルコース、2回目の唐房のカキを活かしたイタリアンフルコース、そうして3回目の肥前町の魚介類を使ってのブイヤベースまできたときに、口コミがどっと広がり、その後、問合せが相次ぐようになった。
4回目は、山間地の相知での原木栽培のシイタケ狩りとバーベーキューとシイタケご飯。相知は68%が山林という山間地。美しい棚田があり、棚田米が評判のところ。それと原木からのシイタケ栽培でも知られる。クヌギから植林をして、それを伐採して、1メートルあまりの「ほだ木(原木)」を作り、これにドリルで穴をあけ、菌のコマを打ち込んで、山林の中で育てる。2冬を経てシイタケができる。原木からだと12年ほどかかる作業。しかしできたシイタケは肉厚で、しっかりしていて芳香も強く、味わいも豊かだ。
この原木栽培のシイタケ狩りは、JAの方で、4年前から取り組まれていたもので、すでに評判がよかったものだ。今回は、食のプロジェクトとの共催という形で進められた。募集は80名だったのだが、1週間もしないうちに満員となった。25日の当日は、相知町の公園に参加者が集まって、マイクロバスで、シイタケ栽培の林(ほだ場)に移動。そこで、思い思いにシイタケを採る。採ったシイタケは秤にかけて料金を払ってお土産となる。参加者は夫婦や家族連れなど多彩。
この後、原木栽培と一般に販売されている菌床栽培(おがくずや米ぬかを使った栽培)の違い、食べ比べ、シイタケご飯と佐賀牛を使ったベーべキュー、原木へのコマうち体験など、シイタケの科学から料理までが紹介された。参加者からは大好評。「ただ美味しいものを食べるのではなく、ものづくりの原点から考えたイベントでとてもよかった」(松本喜久治さん、利久子さん夫妻)。「みんな温かく、おじいさんたちが話してくれるのがいい。それはとても大事なこと。本物の味を教えてもらえた」(吉松須和子さん)。「原木栽培のシイタケがとても美味しい。それに子供の体験させられるのがいい。体験を通して勉強できるのが素晴らしい」(笠原紀子さん)
2月28日は、玄海灘に面した浜玉町の鏡山の中腹にあるベゴニアガーデン「ポンポコ村」での「ハーブとデコポンのマリアージュ」が開かれた。浜玉町は、佐賀県の北西部にあり福岡県に近い町。周辺に山々があり、海岸部に接して盆地状の平野がある。この一帯は江戸期からのみかんの産地。現在でも県内トップクラス。ハウスみかんとデコポン(清見とポンカンから生まれた)で知られる。
「ポンポコ村」は、もともと甘夏の観光農園をしていたところ。名前の由来は、狸が住んでいたことによる。軽食もでき、かつ素晴らしいのは、玄界灘と4キロにわたる江戸期にできた防風林の松林「虹の松原」が一望できることだ。ここで地域の特産であるデコポンの新しい食べ方を紹介しようと試みられた。
デコポンのデザートを作成したのは、和多田の「ワイズキッチン」中江義行シェフ。登場したのはコンフィチュール、ジュレ、ババロア、ジェラート、ブリオッシュ、セックの6品が一皿に盛られて登場した。その美しさに参加者からため息がもれた。そうして調理法もレシピとともに披露された。これに佐賀県神埼郡三瀬村にあるハーブ園「ミツセファーム」のニース、マルセイユ、リバプールの3種のティーが、代表の村山充史さんの解説とともに提供された。
会では、佐賀県果樹試験場の新堂高弘さんの作成した「デコポン物語」というデコポンの詳細な歴史や栽培方、品種、栄養価、料理までを記したテキストが配布され、生産農家代表の岩田哲さんとともに、参加者との質疑応答も行われた。見た目の違い、品種がどうやってできたのか、1年の管理、堆肥の違いまでの質問に丁寧に回答がされた。岩田さんからは、ハウス栽培が、原油高騰から温室維持の重油、ハウス資材が値上がりし、採算があわない農家も出ている現状や、市場出荷に委ねているために地域に価格決定権がない実情なども紹介された。
「テキストがあって、これは農家にも助かります。食べたデザートは初めての味で、びっくり。こんな形になるなんて初めて見ました。とても美味しい。こんな美味しいものがでるなら、女房も連れてくればよかった」と、生産農家の岩田さん。お洒落なデザートで景観が楽しめ、またデコポンの深い考察もあってという催しに、大きな拍手がおきた。
●相知
2月25日(日)11時30分〜13時30分
内容:しいたけの塩焼、しいたけご飯を味わう しいたけの原木栽培体験つき会場:JAからつ相知支所撰果場(唐津市相知町相知71-1)
電話:0955-62-2300
定員:80名 料金:2000円
●浜玉 2月28日(水)14時〜16時
内容:デコポンを使ったデザートとハーブティーを味わう
会場:鏡山「ぽんぽこ村」(唐津市浜玉町浜崎2079−1)
電話:0955−56−8580
定員:30人 料金:1,500円
料理人:中江義行シェフ
★問い合わせ:佐賀県「くらしの安全安心課」
くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)
FAX 0952−25−7327
メール nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp
佐賀県くらしの安全安心課食育担当のメール mailto:nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp
2007年3月11日
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