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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第96回 名護屋城で鮨の宴 佐賀
会場となった「茶苑 海月」

 10回連続で行われた佐賀県の「唐津玄海食のプロジェクト」。そのなかで予約で真っ先に埋まってしまったのが、史跡「名護屋城跡」の一角にある「茶苑 海月」での鮨の宴である。名護屋城といえば豊臣秀吉が、400年前に築城したところだが、お茶会が盛んに行われたことでも知られる。当時の茶会にちなんで建てられたのが数寄屋造の茶室がある「茶苑 海月」。普段はお茶会にしか使われないところだが、粋にすしを握ろうというものである。

 名護屋城跡のある鎮西町は、佐賀県の西北端。人口は約6900名。玄海国定公園、玄海海中公園の指定も受けている景観も美しいところ。昔から漁業が盛んなところだが、今回のワークショップでは、地域の魚を使っての鮨。すしを握ったのは、唐津市中町の「鮨処 つく田」のご主人・松尾雄二さん。県外からの客が多数訪れる名店として知られる。最上のシチュエーションを設定したことで、次々訪れる参加者の人たちが、入り口に来て感嘆し、庭を見回してしばしうっとりと立ち止まったり、散策したりという姿が、あちこちに見受けられた。

漁業の現状と魚介類の解説を聴く参加者

 茶室に教室形式にテーブルがしつらえられ、まずは佐賀県玄海水産振興センター副所長の後藤政則さんが、この日のために作成した基礎資料が参加者に配布された。その資料をもとにサザエ、ヒオウキガイ、アワビなどの貝類が解説された。鎮西のアワビ漁業は弥生時代から行われていたという。養殖が始まったのは1981年から。鎮西で有名な5〜6センチの養殖のアワビは「一口アワビ」として知られている。鎮西のアワビは日本の主に4種類のものから、もっとも漁獲量の多いエゾアワビを養殖したものという。

 続いて地元の漁業について話したのは、アワビ生産者の西健司さん。西さんはアワビ養殖23年。鎮西町には53名がカキ、ヒオウキガイなどを養殖しており、そのうち4人がアワビを手がけているという。他に小型定置網でカワハギ、フグ、イカ、イサキ、アンコウ、アジ、鯛なども獲っている。最近は、環境の変化から漁獲量が減っているという。また市場では、大手スーパーを中心に出荷がされ、出荷できない形の揃わない小魚の価格が下落。一箱300円と箱代金も出ない価格という。小魚が地元でも消費自体が落ちている厳しい現実も紹介された。また後継者が育っていないとの話も出た。参加者から地域で連携したり、宅配をしたり、地元の店で使う取り組みを早くするべきという、激励と厳しい質問も飛んだ。

鮨をにぎりる「鮨処 つく田」主人の松尾雄二さん

 すしは、持ち込まれた鮨のカウンターで、参加者が4人づつ、全10カンを、3カンづつ順次、松尾さんの解説付きで直接目の前で握ってもらうというもの。氷でしめて脂を落とし昆布でしめた養殖タイ、そしてサワラ、コウイカから始まり、クロムツ、アワビ、ヒオウキガイ、サザエ、ウニ、アナゴなどが握られた。すべて地元産である。下処理がしてあってシャリとの相性を考え、すっとうまみが口に溶け込むような味わいが工夫されている。

 アワビは、殻ごと蒸してあり、やわらかくすっと口のなかに溶け込むよう。そこからふんわりと海藻の香りが漂う。ヒオウキガイは、普段は、すしネタにはしないそうだが、漬け込んでやわらかくしてあり、貝柱を手のひらで平たくして、上品に握ったもの。サザエは、煮きり醤油で煮て柔らかくしたものを切り、軍艦巻きで。鎮西の小粒で味わいの豊かなウニは、巻物にして、食べやすくしたもの。といった具合。一つ一つの解説に参加者は、うなずいたり、質問をしたりと、すしの素材から味わいまで存分に堪能した様子。

会場となった「茶苑 海月」

 参加者から大好評。「景色、すしともに楽しめました。すしの味わいは半分以上が食感が大切なんだと感じて、とてもおいしく食べることができました。4人ごとに順に食べる。つく田の松尾さんが、4人のために握ってくれる。自分に特別にという感じで、一つ一つ思いのこもったもので、ぜい沢をさせていただきました」(堀田貴子さん)「場所が最高。女性が着物を着て出かけたくなるところで、その設定が素晴らしかった。板前さんが、ネタとシャリは、同じくらいのほうがいいんだよ、とか、一つ一つの質問にもきちんと返してくださる。すしは、いちばんぜい沢な食だなあと、感激でした」(堀米千恵さん)。お二人は、この日のために大分県から仲間と、わざわざ出かけてきたのだという。

●鎮西

3月2日(金) 12時〜14時

内容:魚介類 "魚介類を使った鮨を味わう(鮨屋の出前サービス方式)

場所:茶苑「海月」

定員:20人   料金:5,000円・鮨職人(つく田 松尾雄二)

★問合せ

くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)

電 話 0952−25−7096  FAX 0952−25−7327

佐賀県くらしの安全安心課食育担当のメール
mailto:nishi-hirohito@pref.saga.lg.jp

 2007年3月16日