「野の花」の料理を作ったスタッフを紹介する橋本さん
2006年2月7日から始まり3月8日まで全10回で行われた「佐賀県唐津玄海食のプロジェクト」。いよいよ最終回である。
9回目の3月7日は、福岡県に近い山間地の七山にある「野の花」で地域の山菜や野菜などを使った料理が紹介された。
七山は人口約2600名。7割が山林。かつては林業で栄えたところ。しかし林業が低迷している。このため、森林を使ったツーリズムや少量多品目の野産物栽培や加工など複合的な経営を目指している。なかでも人を集め注目を集めているのが、町で営む「鳴神の庄」という野菜や農産物加工品の直売所である。
常時出荷しているのは150軒ほど。地元の野菜や果実、加工品が販売されている。年間のレジ通過者は20万人を超える。そうして2004年の3月直売所の傍らにレストランを作った。それが今回の舞台となった「野の花」である。調理にはフードプロデユーサーの橋本裕充子さんがアドバイザーとして入り、地元の方々と、地域農産物を生かした料理を作り上げた。
メニューは、鶏のつくねの黄身ソース、つわと厚揚げの煮物、七山の旬の揚げ物、七山の旬の和え物、みそ汁、わさび寿司、しろご飯、おにぎり、とろりプリンゼリーわさび添え、グリルパンのごぼうジャム、である。七山で採れた農産物がふんだんに使われ、その季節の彩りにみなさん感嘆の声があがった。
最終日の3月8日は、全国に知られる約200年前の建造物を残した老舗の「洋々閣」での自然薯(じねんじょ)を用いた懐石料理。これは佐賀北西部の中山間地の北波多地区が自然薯の産地ということから、老舗の旅館で料理をということになった。「洋々閣」のご主人が、北波多出身でということもあり、地元でも初の旅館と農家のコラボレーションが誕生した。
当日は、自然薯生産者の小林和良さんが、最良の自然薯を栽培するために土中内で波板やパイプを使って、その中で薯を発育させるクレバーパイプという独自の手法が紹介された。懐石は、むかごのご飯から、白和え、むかごのつみれなど9品が並んだ。この日は、東京の京王プラザホテルの研修をはじめ、東京、福岡からも参加者があった。東京から日帰りという女性は「場所も素晴らしい。自然薯が、こんなにいろんな味と彩ができるというので感激でした。唐津に日帰りでも来たかいがありました」と、絶賛だった。
これで連載でお届けしたワークショップはいったん終了した。開催にあたってのコンセプトは、
(1)現地の景観を取り込んで特性を生かして実施する。
(2)米、農産物、果実類、魚介類など、すべて専門家の手によって、地域食材の特徴、栽培法、味わいなどを紹介する詳細なテキストを作成する。
(3)ワークショップは、農家、漁師、料理家、食のコーディネーターをはじめとする専門家が参加し、食の背景、料理法を含めて紹介する。
(4)和食、フレンチ、イタリアンなどの料理家がコラボレーションし、新たな味わいの食の展開をはかる。
(5)現地の場所を利用するばかりでなく、地域によっては、伝統的な旅館、地域で人気のレストランなどでの料理をしっかり味わうものあり、バラエティーに富んだものにする。
(6)食材は、地域の旬のものをメインにする。塩、醤油といった調味料や、日本酒まで、厳選したものを使う。
(7)地域の多様性と味覚、多彩な個性や人を前面に押し出し、地域のドラマを知ってもらう。
ということだったのが、狙い通りのものになった。また地域の新しい出会いは、これからの食と景観を使った観光事業や食のブランド作りの大きなきっかけにもなった。これをベースに佐賀県では、さらにバージョンアップしたツーリズムを計画するという。(ライター、金丸弘美)
●七山
3月7日(水) 12時〜14時
内容:わさび、鶏卵、葉わさび、鶏卵を使った料理を味わう
会場:農家レストラン「野の花」
住所:唐津市七山大字滝川1048−3
電話:0955−58−2057
定員:30人 料金:1,500円
・料理人(橋本裕充子さん)
●東唐津
3月8日(木) 12時〜14時
内容:自然薯の懐石
会場:洋々閣
住所:唐津市東唐津2丁目4−40
電話:0955−72−7181
定員:20人 料金:2,000円
★問い合わせ
佐賀県くらしの安全安心課食育担当(西、北村、内田)
電話:0952−25−7096 FAX:0952−25−7327