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ゆらちもうれ
「ゆらちもうれ」は、奄美・徳之島の言葉で「ゆっくりしていきなさい」という意味です。 ちょっと一休みして、食の現場からの直送レポートを楽しんでいただけたらと思います。
2005年 2006年 2007年 
このページの記事は、2005年4月から2007年3月まで、全国の食をテーマにした各地の新しい取り組みを「毎日新聞」のデジタルメディア「ゆらちもうれ」で、毎週、写真付きで紹介したものです。
第99回 モクモクが三重・津に団塊世代向けレストランを開店
団塊世代には懐かしい外観にしてある

 農業と地域の連携した地域の活性化の新しい取り組みとして、何度か取り上げた三重県伊賀市西湯舟の「モクモク手づくりファーム」。ここは山間地にある農業ファームだが、周辺の松坂市、鈴鹿市、四日市、草津市、名古屋にレストランも展開している。いずれも地域の食材を使ったビュッフェ方式なのだが、その6店舗目の店「風にふかれて」が三重県の津市に2007年3月3日に登場した。

 新しい店舗は、これまでの店舗とかなり趣が異なる。奈良県の古民家の4軒分を解体して、その素材をふんだんに使った日本家屋。総工費1億円というレストランは、小さな風車があり、入り口の横には子牛が飼われている。その子牛を飼うために専任の担当者がいる。小さいながら日本庭園もある。店内は木をふんだんに使ってある。席数は100席。

子牛がいることで親子連れの見学も多い

 レストランのメニューは、野菜がベース。「体にいいもの」がコンセプト。厨房(ちゅうぼう)の奥には豆腐工房があり、できたての温かい豆腐が出てくるようになっている。食材の野菜類は、この近辺の芸農町、安濃町の農家10軒と契約をして、朝8時に届けてもらう。その日の野菜の種類によってメニュー構成が変わるという、地域の旬を優先したやり方。あとの食材は、モクモクファームの工房で作られたものが使われる。「地産地消」は、よく言われることだが、地元農家と直接連携したレストランは津でも初めてだという。

 営業はお昼が11時から15時30分。夜は17時30分から22時まで。料金は昼が1800円。夜が2300円である。客単価は2000円。スタッフは、社員3名とアルバイト40名で運営している。開店してすぐから大人気で、1時間待ちの盛況。平日で320人。休日で400〜450人と好調な出だし。客層の35パーセントが50歳以上。夫婦も多いという。この店、団塊世代を意識して作られたものなのである。50歳以上だと150円の割引となる。

奥には座敷があり予約も可能

 「これまでの店舗は30代、40代の女性で85パーセントを占めていました。この新しい店は、団塊世代、50歳以上を意識した店作りをしています。私たちは特典のある会員制度があり、2万5000名がいます。半分が三重県なのですが、そのなかで一番多いのが津市で、2700名がいます。ですから津の店は希望が多かった。周辺は高級マンションが多くあります。市場調査をしてみると50歳以上の居住者が多いことがわかりました。そこで年齢の高い層の店を作りました」とは、広報担当の浜辺佳子さん。

 「平均で300名のお客さんを想定していましたので、ほぼ予想通りの展開です。料理はヘルシーを意識しています。ですから、モクモクファームのメインとしてきた、ハム、ソーセージ類のコーナーも少なくなっていて、野菜類を中心とした献立になっています。本格的なスーイーツのコーナーも作りました。出来立てを出すことになっていまして、これも好評です」と、浜辺さん。

木をふんだんに使った店舗内

 画一した店を作るのではなく、地域のパーソナルとなり、かつ地域食材をうまく再度組みなおし、お洒落に展開すれば、活気のある店作りができる。モクモクのレストランの展開は、多くの地域の商店街や街づくりに大きなヒントを与えてくれそうだ。

 もともと「モクモク手づくりファーム」は、山間地の養豚農家の組合から、ソーセージ作りやハム作りの加工品の販売から始まった。そこからウインナー体験教室、レストラン展開などに広がった。現在、社員240人、アルバイト400人が働く。売り上げは37億円。次年度には40億円になるという。地域の農業を主体とし、加工、販売、レストラン展開までをつないだ、彼らの試みは、当分目が離せそうにもない。(ライター、金丸弘美)

●「風にふかれて」

三重県津市一身田上津部田3005−2山の手テラス内

電話:059−236−0909

 2007年4月12日