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  旅日記 no.011
イタリア・スローフードの旅
2004年11月2日
こんにちは。金丸弘美です。
今日はイタリア・スローフードの旅について。

 偶数年でイタリアのトリノで行われるスローフード協会最大のイベント「サローネ・デス・グスト」という食の祭典に行ってきた。9月21日から25日まで行われたこの会は、全世界から食材、生産者、料理人、マスコミなどが集まる食の博覧会だ。食をテーマにさまざまなイベントが繰り広げられる。
 今回の目的はサローネへの参加ではなくて、同時開催された「テッラ・マードレ」(母なる大地)という生産者会議である。日本からも90名近くが参加したのだが、僕が推薦した人たちも行くことになって、同行させてもらうこととなったのだ。
会場の「パラッツォ・デル・ラヴォーロ」に着いたら巨大な体育館みたいなところに教室を併設したようなところだった。宿泊は日本人のほとんどが指定された郊外のホテルで往復2時間もかかる。
 しかも130カ国5000人の生産者を集め、160のテーマで話し合うというのだからただごとではない。開会式と閉会式を含めて4日間で、とてもではないが回りきれない。テーマにはものすごく興味があるが、いかんせん体は一つだ。
 例えば「資源/種子なくしては何もできない!」とか「資源/グロバリゼーションと地方経済の破壊」とか「魚/ 小規模漁業:環境保護と市場戦略」といったもでのある。
全体を通すコンセプトは画一化する食の企業戦略から地域の食文化を守り、どう経済性をもたせるか、ということである。
 僕がのぞいたのは「農業/食を通した(カタツムリ、昆虫、その他の動物)ペスト・マネージメント、合鴨農法、 古野隆雄」「資源/ 火山のもたらす宝 火山地帯は農の多様性に富んでいる。火山との共生は可能か? ながさき南部生産組合 近藤一海」「食肉/ 生物多様性のための地域種」「塩/食品保存と環境保存 世界で最も古い調味料の食文化上、環境上の意味。職人技術の保存から、消費者を含めたマーケットでの再認識への戦略。沖縄海塩研究所 小渡幸信」などである。
 ところが進行がうまくいかなかったり、通訳が意味不明だったり、一人の持ち時間があまりに少なく、私が見た限りでは、紹介で終わった感じで、とても問題提起から交流まではいかない。 もっとも、少ない時間ながら熱心な質問が飛び交った。世界の人たちが一同に会せば、これだけ違うのか、という多様性をあらためてしった。
ただし同じ言語圏の人たちは、それぞれの技術交流をしていたし、それと、集まった日本の農家のメンバーは、相当国内でも意識の高い人たちばかりで、「これは日本側から発信すべき課題だよ」という声があちこちからあがった。早速日本に戻ってこれを具体化させようとなった。
 トリノには2日半いてフレンチェからトスカーナに回ったのだがもっとも印象的だったのはアグリツーリズムとチーズと養豚の農家巡り。こちらは長崎の近藤さんと八王子の青木隆夫さんとめぐったのだが、二人とも農業の専門家だから、餌から飼育、加工、畑まで見る視点がまったく違う。そうして、ぼくらがわかったのは、チーズも放牧も餌も畑の耕作も日本ではまずありえない方法で行われているということだ。
 例えば自家製のチーズは日本では法律所生乳は使えないし、サラミもカビを生やすものはできない。餌は輸入が75%で、イタリアのような放牧で自給の餌も、まずありえない。つまりそんなところに地域の多様性とスローフードが立脚しているのである。かなり地域に寄り添った食をみつめないと、スローフードはできない。逆に言うと、つきつめる食材開発が、地域の高付加価値商品を生み出すということでもある。
 この旅でインスパイアされて、本を一冊書くことができた。そうして11月3日、わが故郷「唐津くんち」の我が家の手作り料理を囲んで「ミニ版テッラ・マードレをしよう」となり、佐賀の古代米の武富勝彦さん、福岡の合鴨農法古野さん、北海道のフードコーディネイタの高井瑞江さんをはじめ、何人か集まることになったのだ。
 
 
■故郷の祭り「唐津くんち」。
 この日は、各家庭で料理を作ります。その模様が生中継でNHKで全国放送されます。
11月4日(木曜日)午後2:00〜5:00まで。『お元気ですか 日本列島』
「豪華で豪快 女たちの唐津くんち」です。
唐津のお祭り料理について、私が解説を行う予定です
 唐津からは午後3:15分頃の中継予定だそうです。
 
 
■唐津くんちの本が出ています。
◎「えんや 写真集:唐津くんち」写真:英伸三 文:金丸弘美 家の光協会
◎「えんや 曳山が見た唐津」金丸弘美著  無明舎出版
◎『本物を伝える 日本のスローフード』金丸弘美著 岩波アクティブ新書