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  旅日記 no.014
「きてきて先生プロジェクト」
2004年11月24日
こんにちは。金丸弘美です。
今日は「きてきて先生プロジェクト」お米のティスティングとおにぎり講座について。

「きてきて先生」という外部の社会人から小学校に講師を呼ぶ活動があることを知ったのはフィルム・コミッション専務理事の前澤哲爾さんからだったが、代表の香月よう子さんからその講師に選ばれたと、案内をもらった。僕のテーマは「食育」。学校は伊東市の旭小学校で、6年生に授業をすることとなった。聞けば伊東市は、4年前から市の予算で外部からの講師を招くことを全10校の小学校で行ってきたという。

11月17日、僕は静岡県伊東市の旭小学校6年生の授業に出かけた。小学校の先生になるのは初体験である。授業は、4つのお米の味を食べ比べてテースティングを行い、それぞれの好みのおにぎりを作るという内容。初の試みだから、はたしてうまくいくのか、準備は怠りないのか、どきどきしながら当日にのぞんだ。なにせ、授業に行く前に生徒から届いたお米や食の素朴な質問がどっさり。例えば「高いお米と安いお米はどちらが美味しい?」「安全な食べ物とはなに?」など、本質を突いたものばかりだったからだ。
 
 実は、授業に行く半年も前に担当の渥美弘美先生が東京に出てきて「きてきて先生」のメンバー香月さん、増田初美さんと、ほぼ半日かけて綿密な打ち合わせをした。そうして今回の授業のテーマを「塩」と「おにぎり」に決めた。素材な食材の豊かさを五感で体感し、それぞれに個性と表現があることを知ろうということなのである。渥美先生は打ち合わせ後、学校に戻り、事前の授業を行い、スローフードや僕の紹介を子供たちに伝え、「きてきてレター」というさまざまな質問を手紙に書かせ、それを僕に送った。
そして僕は生徒へ「ゆくゆくレター」を送ったのだ。

 しかし、先生もさすがに「塩とおにぎり」で、はたして授業がなりたつのか不安になったらしく、事前に徳之島の塩、伊豆大島の塩、イタリアの岩塩、普通の精製塩の4種類を、見た目(色、粒)、手触り(さらさら、湿っぽい感じ)、味の3つの観点でテースティングをしたという。すると子供たちは形状や味の違いなど、20種類以上の豊かな表現をし、先生をびっくりさせたという。好みを尋ねると、精製塩は「ただ塩っ辛い」と一人も選ばなかったらしい。

 本番の授業は11月17日の10時50分から始まった。
 まずは担任の渥美先生が炊いておいてくれた4つの釜から、55名4人1チームの生徒たち、それに参加したお母さん5名が持参した弁当箱に、その炊きたてのご飯を取りそれぞれのチームに戻り、4つのタイプのお米を、見た目、香り、味、触感で、それぞれの感想を書いていくというもの。そうして、形状(目)、香り(鼻)、味わい(舌)、手触り(触感)と五感をフル回転して、お米のテースティングをした。

 これが賑やかなこと。みんな一生懸命書いてくれ、そうして発表してくれた。それぞれ微妙な違いを次々に発表する。表情、表現の豊かさに驚いた。ものすごく子供たちは敏感だ。そうして、次に米の袋を出してどこの米かを当てる。用意したのは「地元のブレンド米」「魚沼産コシヒカリ」「三重県のモクモクファームのごーひちご」「豆穀米」。これが、3分の1の生徒が正解を出した。好みを尋ねると、ほぼばらけた。つまり、お米は高い安いで味が決まるわけでなく、好みがあるのだ。このティスティングの本当の目的は、それぞれ米に違いと個性があることを知ることで、その個性を選ぶ力と、表現を豊かにすること、五感を鍛えることなのである。そういう意味では大成功だった。

 おまけとして、スローフード大賞の受賞者の佐賀県の武富勝彦さんから送ってもらった古代米と雑穀をブレンドした「一三穀米」を入れたご飯を出した。これはメジャーリーグの松井秀喜選手が食べているというものだ。それを話すと、生徒たちは大喜び。
「おいしい」とみんなが言ってくれた。

 好みのご飯でおにぎりを作って、生徒たちと楽しい給食。それから、午後は、徳之島の塩作りのビデオ、お米の映像を見せて、質疑応答。次々と元気な質問が飛んできて、嬉しい悲鳴をあげるほど充実した時間となった。それにしても、米のティスティングで、これだけ表情と表現が豊かな答えが出てくるのかという、新鮮な驚き。校長先生にも、とても喜んでもらえた。生き生きした子供たちの顔が見えて、これほど充実した時間はないと思ったほど楽しい一日だった。

■伊東市の「きてきて先生プロジェクト」は、
フジテレビ
11月25日(木)11:30〜12:00
NEWS「FNNスピーク」にて5分ほど紹介予定です。

■きてきて先生プロジェクト http://www.kitesen.org/