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  旅日記 no.015
佐渡島「佐渡百選」の「食」の旅
2004年12月1日
こんにちは、金丸弘美です。
今週は佐渡島「佐渡百選」の「食」の旅です。

 佐渡島に「食」のアドバイザーとして行って欲しいと、「ソトコト」編集部の榎本ゆう子さんから話があって、11月21日から23日にかけて出かけた。今回のメンバーは、シェフの三國清三さんとカメラマンの菊池和男さんである。お二人とも、考えてみるとイタリアのスローフードのトリノでの食の大イベント「サローネ・デル・グスト」でも一緒だった。こういう人たちと旅ができる最大の楽しみは、食にとても詳しいから、新しい視点を発見させられることである。

 新潟へは地震の影響で、まだ新幹線が不通なので、新潟空港まで飛行機で、それから6人乗りのセスナで佐渡島に向かった。佐渡島には、新穂村の環境保全型の田んぼ見学に行って以来だから、3年ぶりということになる。今回の旅は、新しい佐渡市が進める地域振興政策の一環で、佐渡島の住人が選んだ「自然」「食文化」「歴史」「芸術」「芸能」の「佐渡百選」から、食に対してのアドバイスをするというもの。さらに、僕の場合は、3月11日から13日までツアーを行うことになっているので、その下見も兼ねている。

 現地の空港に行って驚いた。観光課の人から、佐渡汽船の人やら、テレビ局の人やら、広告代理店の人まで、10名近くの出迎えである。まるで大名行列のように、みなさんの案内で、島を巡ることになった。佐渡島は、人口79、000名、大きさは東京都の1・5倍もある。車で走っていて気づいたのだが、自然と人工的な景観とがうまく調和していて、昔ながらのものもほどよく残っているし、申し分ない環境だ。

 案内されたのは、初日は、りんご園、干し柿、佐渡のかき養殖、酒蔵。翌日は、漁港のイカの水揚げ、郷土料理、味噌蔵、合鴨農法、ふぐの加工。最終日は、海藻をつかったイゴネリなど、盛りだくさん。あちこちで、ちょこちょこ試食すると、たちまちお腹がふくらんで、もう途中で食べられなくなるほど。

 僕の家族が徳之島に住んでいて、しかも徳之島から飛んできたばかりだから、どうしても比較してしまう。佐渡島は、意外や温暖。しかも、遠島となった知識人が多く住んだこと、江戸期に金山があったことで、歴史的な建造物がたくさんある。豊かな漁場、田畑があって、歴史的景観も、食べ物も、とても豊かなのである。どれをみてもほどよく調和しているように思えた。

 ただ敢えて言うなら、ちょっとした組み合わせをかえると、もっと大きなアプローチができるなぁということである。例えば、郷土料理と地元の蕎麦はとてもよかったのだけど、これに歴史的建物の散策と、その建築物で食べる・・・とかすれば面白いし、食卓に自然の木々や花々をいけると、もっと素敵だ。それで、花々や、食の素材までを、さりげなくきちんと語れる人がいれば、申し分ないと思った。また「佐渡百選」に登場しないような雑木林とか沿岸の風景とか、古い町並みとか民家とか、それらが組み合わさると、もっといい。

 ロバート・デ・ニーロがやってきたという酒蔵「北雪」のお酒のティスティング、合鴨農法で自給自足しているという農家での新米で烏骨鶏の卵かけご飯などというのも楽しかったが、それにもまして楽しかったのは、実際に食の現場で交わす、三國さんや菊池さんとの会話だ。それは例えば、牡蠣の養殖で舟に乗り、その牡蠣の養殖から、牡蠣殻の還元まで、三國さんはするどく質問をする。すると、海を守るために漁師さんたちが山で植林をして、山を守ることで、そこから流れてくる水を守り、海を守る活動をしていることが分かったりしてくる。牡蠣殻は、土壌改良剤、鳥のえさ、道路作りの素材として無駄なく還元されている、といったことだ。
 あるいは、漁港に行って魚種の豊富さをみて、菊池さん、三國さんから「これだけ魚がいろいろいると、ここでブイヤベースを作れば最高のものができるなぁ」という一言だったり、干し柿を試食して「ちょっとシロップを入れて、これをデザートに使うと最高だな」という三國さんの一言だったりする。

 佐渡島から戻って、11月10日、三國さんから「NHKに出るから」と言われていたのをすっかり忘れていたところ、徳之島の女房から電話をもらって、あわててテレビをつけた。三國さんが自身の現在と修行時代について、畑のテーブルでアナウンサーに語っている。その話の中で、農家を巡り、素材そのままの、ありのままを生かした料理作りの修行を重ね、素材の持ち味を生かしてどうアレンジしていくかということから料理が生まれているのだ、ということを知った。

 フランスでの修行時代「畑から朝とってきた食材があって、曲がったものは曲がったままに、まっすぐはまっすぐのままに、それを生かしなさい。と教えられた」というセリフに、ちょっと感動した。このテレビを見ていて、佐渡島で同行させてもらったのが、とても大切な時間だったなあ、と改めて思ったのだった。


■『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)が、マスコミ20媒体以上に紹介されたベスト118に選ばれました。
"ブック・レビュー・ガイド b"の調査媒体〔新聞20紙・雑誌250誌(2004.9月現在)〕から抽出した2004年上期(1〜6月)のデータ54,976件の集計をベースにマスコミに紹介された話題の書の上期総合ランキングで、上期(1〜6月)にマスコミで紹介された書籍27,314冊の中から、マスコミからの紹介件数が20件以上のベスト118です。
http://www.honn.co.jp/Ranking/2004FH/2004FH.html#001

■伊東市で行なった「きてきて先生」が「静岡新聞」に紹介されました。
http://www.shizuokaonline.com/local_east/20041119000000000032.htm

■マグドナルドをテーマにした『スーパーサイズ・ミー』の公開は12月25日に決定。来日したモーガン・スパーロック監督にインタビューをしました。その模様が12月3日発売の『週刊金曜日』(12月3日号)に掲載されます。

■『ゆらしぃ島のスローライフ 奄美に訪ねる長寿の食』の第2弾が決定!!
2005年2月10日から13日まで。3泊4日。
・お問い合わせは、朝日カルチャーセンター03-3344-2041(事業部)へ。
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0501koza/G0201.html