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  旅日記 no.017
痛快娯楽大作『カンフー・ハッスル』(功夫)
2004年12月15日
こんにちは。金丸弘美です。
きょうは痛快娯楽大作『カンフー・ハッスル』(功夫)について。

 地方にいることが多いのだが、それでも東京に戻れば、たいていは本屋か映画会社の試写に通うことになる。試写で最近観たのは、オリバー・ストーン監督『アレキサンダー』、ジム・ジャームッシュ監督『コーヒー&シガレット』、ミッシェル・ゴンドリー監督『エターナル・サンシャイン』、エリアス・マーヒッジ監督『サスペクト・ゼロ』、ケヴィン・マクドナルド監督『運命を分けたザイル』、セルジオ・カステリット監督『赤いアモーレ』、アラン・レネ監督『巴里の恋愛協奏曲』、ニック・カサヴェテス監督『きみに読む物語』、ジョエル・シュマッカー監督『オペラ座の怪人』、アントワン・フークア監督『ライトニング・イン・ア・ボトル』、クァク・ジョヨン監督『僕の彼女を紹介します』、イム・チャンサン監督『大統領の理髪師』などである。

 音楽の圧倒的素晴らしさを再確認した『オペラ座の怪人』、記憶という美しさを映像に写し取って老人のドラマと折り重ねた『きみに読む物語』、マーチン・スコセッシが制作に関わりブルース音楽をアメリカ現代史の背景を見せながらの圧倒的ライブのドキュメント『ライトニング・イン・ア・ボトル』、『マルコビッチの穴』でユニークな視点から自己のアイデンティティに迫ったチャーリー・カウフマン脚本のふたひねりもしたような恋愛映画
『エターナル・サンシャイン』というのが印象的だった。

 なかでも最近、超娯楽的な作品で後味がよくて、痛快だったのは『少林サッカー』のチャウ・シンチー監督・主演の『カンフー・ハッスル』である。
香港のカンフー映画が、これまでの綿々と続く娯楽映画、たとえばブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』や、幻想的な『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』などのエッセンスを盛り込んで、あるいは中国にある武道や京劇のような芸能、さらには幻想的な伝説『西遊記』を始めとする、さまざまな物語を、潜り抜けて、新しく衣装替えしたような、楽しさ、奇想天外さ、華麗さ、可笑しさを、花開かせた。

 話はギャング団「斧頭会」が台頭して横行するなか、その「斧頭会」に成りすまして庶民が集まる団地「豚小屋」で小金を騙し取ろうとしていたシン(チャウ・シンチー)は、住民に逆にとっちめられ、また「斧頭会」からもにらまれる。ところが、シンが関わったことで、「斧頭会」と「豚小屋」との対立が始まるのだ。
 実は「豚小屋」には、とんでもないカンフーの使い手が潜んでいた。おののいた「斧頭会」幹部は、新しい使い手を雇い、二つの集団は抗争を始める。

 なんだか黒澤明監督の『用心棒』に似ているのだが、二つの対立する集団から生まれる抗争から、「斧頭会」の雇った必殺請負人が「豚小屋」のカンフー達人に戦い挑むあたりから、超次元的な幻想の神話に突入するかのような戦いが始まる。そのメンバーは、一見冴えない容姿だが、実は社会のなかに身を隠していた超能力者たちなのである。これが、歌舞伎の『天竺徳兵衛異国噺』ではないが、実に派手で華麗で、軽快な立ち回りをみせる。

 さらにひとひねりもふたひねりもあって、そうして大きな包み込むようなロマンチズムも湛えた作品なのだが、なによりも感心したのは、セットと庶民の暮らしのディティールの細やかさである。隠れカンフーの達人が住む団地は、さながらヒッチコックの『裏窓』を思わせたのだが、それよりも素晴らしい。俯瞰するカメラがズームしていくと、そこに餃子作り、仕立て屋、床屋などが、見えてきて、それぞれの暮らしが一望できる仕組みなっていて、ここが圧倒される。そのディテールがしっかり埋まっていることが、後半の奇想天外さをしっかり支えるリアリズムになっているのである。

 映像もセットも美術も衣装も調和が取れている。なによりカンフーの使い手が、それぞれ鍛え上げた京劇やカンフーの実力者揃いで、立ち回りが優雅であることが素晴らしい。こうやってみると、東洋のカンフーを取りいれた『マトリックス』や『キルビル2』などが薄っぺらに見え、所詮借り物という感は否めない。その点『カンフー・ハッスル』は、本家の面白さを娯楽作品として堂々と炸裂させたかのようである。

◎『カンフー・ハッスル』 2004年中国・アメリカ合作
監督・制作・主演=チャウ・シンチー
出演=ユン・ワー、ユン・チウ、ブルース・リャン、ドン・ジーホワ、チウ・チーリン、シン・ユー他。
◎1月1日より公開

■大好評だった奄美・徳之島の旅の第2弾が決定しました。
ぜひお出かけください。
〜ゆらしい島のスローライフ〜『奄美に訪ねる長寿の食』※徳之島の方言で「ゆらしぃ」は「ゆっくり」という意味
同行講師:食環境ジャーナリスト 金丸弘美氏

南の奄美諸島、鹿児島県徳之島を訪ね、手付かずの自然や昔ながらの文化を大切にする島の人たちとのふれあいを通じながら、都会のでは味わうことの出来ない島の生活を体感するシリーズ第2弾!!農家や海辺を巡り、地域の人々と触れ合いながらゆったりした時間の中で豊かな食を楽しみます。
 
第1弾(6/17-6/20)の旅の様子はHPにて紹介しています。
http://www3.synapse.ne.jp/mcmaru/yurashii01.htm

□日程:2005年2月10日(木) 〜2月13日(日) 3泊4日
□旅行代金:お一人様 153,000円(ACC会員)
 155,000円(一 般)
□募集人員:20名様(最少催行人員15名様)
□旅行費用に含まれるもの:受講料、宿泊料(3泊)、航空運賃、
貸切バス代(日程表内に記載)、食事(朝3回、昼3回、夜3回)
□利用予定宿泊先:2/10-2/13 サンセット・リゾート
Tel:0997-85-2349
□お申し込み方法:日本通運(株)首都圏旅行支店へ。
□お申し込み締切日:平成17年1月27日(木)
◇内容
徳之島の人々とふれあい。サトウキビ収穫体験。吉玉誠一さんの珈琲園訪問。
無農薬野菜の作農。馬鈴薯収穫体験。黒糖づくり体験。ゆっくり海アシビ。
郷土料理の昼食。天然塩作り体験。珊瑚礁の探訪と島の魚での手料理宴会
(漁なくさみ)など。              
企 画:朝日カルチャーセンター 電話:03-3344-2041 担当:大野
協力:ニッポン東京スローフード協会、
観光かごしま大キャンペーン推進協議会
旅行主催:日本通運(株)首都圏旅行支店日本通運
電話:03−6251−6356 担当:蔦谷(ツタタニ)・名塚
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0501koza/G0201.html


■『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)
エッセイ:金丸弘美 イラスト:唐仁原教久 写真:阿部雄介
デザイン:レスパース 若山嘉代子
◎本はアマゾンから購入ができます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054023126/249-1566876-8006749


■徳之島の暮らしがテレビで特集で紹介されます。
テレビ東京 日曜ビッグバラエティ
『日本縦断! 元気村に暮らす人々』
12月19日(日曜)19:54〜20:48