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  旅日記 no.032
『里山と文学』
2005年3月23日
こんにちは。金丸弘美です。
今回は栃木県大田原市での『里山と文学』の集いについて。

 日本ペンクラブの会員となって6年くらいになるだろうか。そのなかにはいろんな部会があって僕は、2002年から環境委員会のメンバーになっている。昨年、初めてのシンポに参加すこととなってとても緊張した。テーマが『環境と文学』。メンバーは井上ひさしさん、新井満さん、斉藤純さん、高橋千劔破などである。
で、なにを話せばいいのか、とまどっていたら新井満さんに「自分のことを話せばいいんだ」と言われてほっとした。

 今年は3月19日、栃木県大田原市の日本ペンクラブのシンポジウムに参加することとなった。今回はなんと僕が基調講演で、テーマは『里山と文学』である。当日の朝まで里山について調べ、どんな話をしようか悩みに悩んだ。里山と一口に言うがいったい定義はなんなの、。文学上ではどんな表現があるのか、正直今から調べても簡単においつくものではない。ただ最近の児童文学で『泣けない魚たち』(阿部夏丸著)『水底の棺』(中川なをみ著)など、子供たちに里山との暮らしを真摯に伝える優れたものがあるということを語ろうかとも思っていた。

「里山」(有岡利幸著 法政大学出版)によれば里山とは「里人が日常的にあまりに遠くない山に立ち入り、山の産物の利用を繰り返すことにより里人の生活に役立つ山に改変されたもの。農用林とも呼ぶ」ということになる。それは遥か縄文時代に遡り、『古事記』『万葉集』の描かれる情景は、里山そのままでありそれは近代の徳富蘆花、国木田独歩まで続きさまざまな文学に表現される。さらには浮世絵や童謡、民話、落語、浪曲まで日本人の表現した多くのものの背景には密接に里山がかかわっている。それは日本人の暮らしそのものであり歴史でもあるというのが改めて理解できたのである。

里山が日本人から遠ざかったのはここ40年のこと。一万年以上の歴史のなかでこれだけ激動的に里山と乖離している時代はない。
それはどんな結果を招くのか、そう簡単に答えが出せるものではない。現実、農業の離農、里山へのゴミの不当投棄、戦後の朝鮮戦争による特需景気からの杉植樹の弊害や中国から持ち込まれた孟宗竹の拡大と里山の破壊など、問題は山積しているのだ。

だが、里山について勉強したことを話しても仕方ない。本番直前までどんな展開にしようか悩んだ。というのも講演は20分しかないのである。普段であれば1時間30分は話すのだがどう簡潔にもっていくか迷っていた。すると、楽屋でふと話した佐渡島のことやスローフード大学のことを「面白いからそのまま話しなさいよ」という、コーディネーターの森詠さんの助言で最近の実際に訪ねた土地のことをメインに語った。

それは沖縄名護市の柑橘シークワサーが加工販売でお金になり、農家が動き里山に植樹がされ景観が戻り始めたこと。佐賀県の武富勝彦さんの古代米が評価され昔の田の栽培が復活したこと、愛媛県内子町の直売所「カラリ」のリーダー野田文子さんが野草や麦の穂、唐辛子などのドライフラワーの販売で1100万円をあげ村が活性化していること、佐渡島・宮城県田尻で鳥が戻る冬場に水を張る田んぼがツーリズムと環境保護で注目されていること、などである。
幸いみなさんに「声も通るし、具体的でいい話だった」と褒めていただき、胸をなでおろした。

 後半は総合司会:武笠和夫さんで中村敦夫さん、斎藤純さん、田口洋美さんたちとシンポジウムを行った。その後7000種類の蝶を展示するという大田原市自慢の自然博物館を見学した。ここの博物館、テレビの「お宝 なんでも鑑定団」で登場した蝶のコレクションを250万円で購入して充実させたのだという。その展示のすごさと蝶の華麗さに仰天。それに博物館の方々がどの人も蝶に詳しい。ここで蝶と蛾と見分けがつかないほどの容姿をしているものがいること、実は蝶と蛾を分けているのは日本だけということを初めて知った。

夕刻、千保一夫市長、大武秋雄助役さんたちと懇親会となったのだが、今回の会の実現は作家の栃木出身で森詠さんと千保市長との親交から生まれたことを初めて知った。しかも、大田原市長はかつて造成で失われた森の復元を始め、地域景観環境を守るための石垣や垣根の復元助成、白鳥、タナゴ、鴨などの自然環境の保護、歴史的建造物の保護、さらには地域農産物を使った直売所やレストランでの地場産の販売などを始め地域を生かした活性化の取り組みに極めて積極的で行動的な方だと分かってとても感心した。

翌日は地元環境委員会の方の案内で、「平家物語」で知られる那須与一の史跡を始め古墳、天然記念物の「ザゼンソウ」の見学、白鳥や鴨のいる「羽田沼」の視察を始めさまざまな大田原の史跡、自然を見せていただいた。それにしても大田原の方々の市長を始め、地域の歴史や産物についての薀蓄は半端ではない。地域への思いをこれだけ語る行政の方々は初めてか、と思うくらい情熱的なのには驚いた。

市長の千保さんは、環境保護と地域農産物を生かした直売所の取り組みにとりわけ熱を入れていらっしゃる。
千保さんに強くお薦めしたのは、宮城県田尻町の白鳥とマガンが戻った田んぼ「冬期湛水水田」の取り組みの視察と連携。それと直売所については、日本でも元気な水戸の「ポケットファームどきどき」三重県の「手づくりモクモクファーム」の視察である。市長は「三重は無理にしても水戸には行ってみます。田尻のシンポは巴里行きで難しいが、部下にはいかせます」とのことだった。この熱に僕はすっかり大田原が気に入ってしまった。これから太田原は注目のところになるに違いない。

■『環境と文学』シンポジウム掲載・日本ペンクラブURL
http://www.japanpen.or.jp/katsudou/eventreport/2004325/environment.html

■2004年11月に実施した徳之島での長寿シンポジウムとその調査の内容が、『保健師ジャーナル』2005年3月号(医学書院)で12ページにわたり特集されています。この雑誌は保健所関係の専門誌ですが、鹿児島県、保健関係者はもちろん、テレビでも紹介されたために、あちこちから、問合せがとどき大きな反響を呼んでいます。

●目次内容は以下の通りです。
�.�ネス掲載の長寿者の町・徳之島で長寿シンポジウム 
 食環境ジャーナリスト 金丸弘美
��長寿の島、1000人アンケート調査を早世予防に役立てよう
 伊仙町保健センター 澤佐和子
�1眸�群島の元気長寿を支える食生活要因
 鹿児島県健康福祉部 吉田紀子

 ぜひ見ていただけると幸いです。URLは以下の通りです。
http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/00134/0013455.html
『保健師ジャーナル』編集部問合せ先
〒113-8719東京都文京区本郷5−24−3
�筺�03-3817-5774 fax:03-5804-0485

●徳之島で長寿の調査とそれによる地域活性化プランが2004年に「長寿シンポジウム」という形で実現しました。
 地元の保健センター、町役場を始め、住民の協力で、65歳以上1200名の食と健康の本格的な調査です。

 この模様は、『SBS南日本放送』で2005年3月3日に特番が組まれたほか、地元の新聞『南日本新聞』『南海日日新聞』『大島新聞』で大々的に報道され、調査の結果の一部は『日本経済新聞』2004年12月4日夕刊全国版で大きく特集されました。
 またこの調査をもとに、具体的な健康プラン、および地域の農業、食材による地域活性化の推進が進められています。ぜひご支援ください。

●以下の単行本でも長寿シンポの取り組みを特集しています。
『生産者のためのスローフード入門』(ベネット)
金丸弘美著 定価 1000円 
問合先03−5913−2627ベネット・担当 中村、青木)
(申込FAX03−5913−2628)
(冊数:送料1冊210円、2冊310円、3冊以上サービス)