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  旅日記 no.034
「僕は散歩と雑学が好き」
2005年4月6日
こんにちは。金丸弘美です。
今回は「僕は散歩と雑学が好き」のお話

「僕は散歩と雑学が好き」はコラムニスト植草甚一さんの本のタイトルだが、その植草さんとともに雑誌「ワンーダーランド」(のちの「宝島」)の創刊から編集にかかわった高平哲郎さん、津野海太郎さんたちの『第136回・紀伊国屋セミナー新宿植草甚一雑誌』に出かけた。出演は矢崎泰久さん、坂田明さん、中村誠一さん、中平穂積さんたち。植草さんのエピソードが次々語られる。これは高平さんのインタビュー集『植草さんについて知っていることを話そう』(晶文社)の中に登場する人たちがメインとなっている。
もちろん晶文社の「植草甚一スクラップブック」全40巻が復刻されているということも背景にある。

植草甚一さんがジャズやニューヨークの本などを出し始めた最初は1967年『ジャズの前衛と黒人たち』(晶文社)でこの本の宣伝のアルバイトを高平さんがしていたらしい。「僕は散歩と雑学が好き」は1970年、僕が東京に上京したばかりでこの植草さんの雰囲気に憧れて古本屋、ジャズ喫茶めぐりをしていた頃を思い出す。
その中には新宿の木馬やDYGももちろんあった。

僕の記憶にある植草さんは、ソニーロリンズが来日して中野サンプラザでライブをしていたときに、当時出たばかりの8mmテープレコーダで録音していた様子が思い出される。このころは僕もずいぶんとライブに行った。アート・ペッパー、キース・ジャレット、ウェザー・リポート、マンハッタン・トランスファーなどなど。カウント・ベイシー・オーケストラも行った。もちろん植草さんと直接面識のある渡辺貞夫さんや、日野晧正さん、山下洋輔さんなども聴きにいった。昔はジャズばかり聴いていたのである。

その後まさか高平さんに仲人になってもらい、なおかつ仕事を7年間にわたってすることになるとは思ってもみなかったのだが、紀伊国屋の椅子で高平さんたちの話を聴きながら、なぜ植草甚一だったのだろうと思いめぐらせていた。というのも、確かに植草さんの本は当時ほとんど全部買ったのだが熱心に読んだという記憶がない。
ただ、映画とジャズと雑学には魅せられていた。僕は、つまり植草さんのように自分の好きなもので暮らすという世界に憧れていたんだなと気づいたのである。当時は自分の面白いものに熱心で夢中になっていいんだよ、という大人はいなかった。

自分が面白いというものを形にする。テレビ「モンティ・パイソン」「今夜は最高!」始め、舞台演出、本「みんな不良少年だった」「スタンダップコメディの勉強」雑誌「トランヴェール」の創刊から3年間の企画編集で展開していた高平さんの好奇心に惹かれていたんだなと改めて気がついた。トークが終わって会場でばったりあったジャズプロデューサーの伊藤八十八さんと楽屋へ。久しぶりに高平さんや坂田さん、中村さんたちと再会できてなんとなく嬉しくなってしまった。

紀伊国屋を後にして向かったのが、日本橋高島屋の店「美ゅら YUJIN」。というのも徳之島の丸野清さんのHPを観ていたら、「HAIKAJI(南風)ライブ」があり「ぜひお出かけを」とあったからだ。徳之島出身の佐平仁志さんの経営する琉球レストランだという。行ってみると僕の本を読んでくださったという人が何人もいらした。
おかげでたちまち会話が広がった。雰囲気もいいし、料理もおいしい。バンドHAIKAJIはリンケンバンド初代三線、喜納昌吉チャンプルーズ二代目三線の金城賢プロデュースの琉球バンドだという。CDをリリースしたばかり。演奏が始まると客席も盛り上がって久々に踊ってしまった。なんか最近は、沖縄や奄美のリズムが心地いい。
少しこちらの音楽について調べたくなってきた。
散歩と雑学ついでにふらりと寄ったのが銀座松屋のデザインギャラリーで高知在住の梅原真さんの「とさのかぜ展」。僕がよく知っている作品の中で有名なのは高知の馬路村農協「ゆずぽん酢」。他に「四万十川の青のり」、大方町精糖製産組合の黒砂糖のパッケージなどがあった。どれも素朴で力強い。明治時代の広告デザインを改めて素材の持ち味とをブレンドしたような新しい感覚がある。海岸を美術館と見立てた実験的なプロジェクト「砂浜美術館」の全国からTシャツを集めて浜辺に展示したというインスタレーションが面白かった。これはクリストのようだけど非常に自然とが調和している。土佐の絵師・広瀬金蔵こと絵金の屏風絵(歌舞伎看板絵)を蝋燭で観るという展覧の演出も素晴らしい。

展覧会のタイトル「とさのかぜ」は雑誌の名前からとられているのだが、梅原さんはそのエディトリアルデザインを手がけ、地域の食材や暮らしを丹念に拾い上げている。力強く個性的。こういう雑誌の視点こそが地方のパーソナリティを育てるのだと思う。以前、福岡で筒井がんこ堂さんが編集していた「FUKUOKA STYLE」を思いだしたが梅原さんのはシンプルでスマートである。高知も素晴らしいことが広がっている。

●「美ゅら YUJIN」
中央区日本橋2−6−5日本橋2丁目ビルB1F 日本橋高島屋裏
TEL 03−3243−5222
●梅原真 とさのかぜ展 松屋銀座 3月23日〜4月18日
 松屋銀座7階デザインギャラリー展

■沖縄の「粟国の塩」10周年記念シンポジウム

粟国の塩は、海水を使い薪を使って作る塩で、もっとも気に入っている塩です。塩作りをする小渡幸信さんと会ったのは8年前。先般行われたイタリアスローフード協会のトリノでの「テッラ・マードレ(母なる大地)」に推薦したところ、小渡さんは、塩作りで発表を行い大きな反響を得ました。また、カルロ・ペトリーニスローフード協会会長来日時の懇親会も参加してくださり、多くの方々との親交、塩を通して大きな交流が生まれました。

粟国島の10周年の模様が、ホームページに掲載されています。

■私と「塩」と「食」 金丸弘美
http://www14.plala.or.jp/wappa/salt/st01-int.html

■盛大に『粟国の塩』10周年記念イベント
島内外から270人余りが集まり、祝う
http://www14.plala.or.jp/wappa/salt/st01-r1.html

■製糖工場見学 最盛期、全国から十数人の季節労働者が
キビの絞りカスから高付加価値の研究進む
http://www14.plala.or.jp/wappa/salt/st01-r2.html

■基調講演 スローフードと日本の動き 金丸弘美
●『粟國の塩』10周年記念イベント〈第1部〉
http://www14.plala.or.jp/wappa/salt/st01-dt1.html

■シンポジウム 「塩・食・健康・環境・教育を考える」
●『粟國の塩』10周年記念イベント〈第2部〉
▼パネリスト  =発言順
宮城弘岩さん 「沖縄物産企業連合」社長
森本茂さん 「大地園」代表
武富勝彦さん 古代米復元農家
中村成子さん 料理研究家
塩川恭子さん 「食の学校」主宰
司会 金丸弘美 
http://www14.plala.or.jp/wappa/salt/st01-dt2.html

●なお「粟国の塩」は、私の本
『本物を伝える 日本のスローフード』(岩波書店)で紹介しています。アマゾンから購入できます。http://www.amazon.co.jp/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・■好評発売中!!
『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)
金丸弘美著 定価:1300円 四六版 176頁

・NHKラジオ『私の本棚』の連続朗読番組になったほか、新聞、雑誌、ラジオなど90媒体で紹介されました。
本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

●金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html

・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/