こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「三國清三シェフと飛騨古川の旅」のお話
岐阜県の飛騨市古川町を8年ぶりに訪ねた。古川は素晴らしいところで、伝統の祭りと町の景観が、いまだに美しく保たれている。
新しい家も昔の建築様式を入れたものが少なくなく、それらは小額だが町からの補助も出されている。町並み保存が、個性を作るということを行っている稀な町づくりだろう。
飛騨市古川町への訪問は、今回も前回も古川町在住の指揮者・小泉和裕さん雅美さんの計らいによるもの。もっとも今度の旅は、シェフの三國清三さんと私とで、スローフードによる町づくりというテーマでの講演会と2006年に予定されているオーケストラと料理のコラボレーションの下見を兼ねたものだった。
僕だけは前日に入り、町の下見を兼ねて、農家を巡ることにしたのだが、用意された宿泊の旅館が素晴らしかった。「蕪水亭(ぶすいてい)」といって、昨年、120年前の民家を移築したという旅館。
たった三組だけが泊まれるというところで、民家の梁や蔵などが、そのまま生かされたもので、実に風情があった。
飛騨の地鶏や飛騨牛などの見学もさることながら、もっとも刺激的だったのは、やはり三國さんとの話である。三國さんとは2002年のイタリアのスローフード協会のイベントにご一緒したことがあり、旅は三度目ということになる。
講演の会場の古川総合会館は超満員。町が徹底的に宣伝をしてくれたおかげで人が集まった。それにやはり三國さんのネームバリューだろう。前半は僕がスローフードについてと新しい日本の農業の先進例を紹介し、後半は僕が聞き手にまわって三國さんにインタビューをした。テーマは食育である。
なかでも面白かったのが、キッズ・シェフの話。三國さんは子どもたちに地域の素材を用いて料理を教えることを各地の小学校で行っている。きちんとした素材で料理を作ると、子どもたちの表現や応用が素晴らしく広がるというのだ。しかも上手に旨いものができる。
これは、僕も小学校でオニギリ作りというもっとも簡単な授業で実感しているから、本物食材でプロの指導となると、さぞやリアクションは、すごかったんだろうなと、思ってしまった。僕も地元佐賀で、ぜひプロディユースという形で実現させたいと思ったものだ。
次になるほどと思ったのが味覚の話である。「ファストフードのような人工的な味や香りの刺激の強いものを子どものときに味わうと、微妙な味わいを感知する能力が育たない。味覚がぼけてしまう。そうすると脳の働きが弱くなる」というものだ。これも味覚教育を経験しているから、小さい子どもたちが、いかに微妙な味をしっかりとキャッチする能力があるかを知っているので、ファストフードの影響はすごく納得できた。
さらに、なるほどと思ったのが、「味覚教育における、甘味、酸味、塩味、苦味に加えて日本人が加えたものがうまみ。そのうまみの基はというのが昆布なんです」というもの。昆布はあらゆる出汁のもと。しかも確かに、いい昆布の味は、ほんとうにうまみそのものである。
三國さんは、味覚教育やキッズ・シェフを、子どもたちに本物の味を知ってもらうという以上に、自分たちの料理の仕事に携わるものにとって、味がわからない子どもが大人になったとき、料理会の危機を感じて行動を始めたという、非常にわかりやすい話だった。僕は、食の環境の悪化が、自分の家族の健康を阻害することを実感したからこそ、スローフードや食育に関わってきたから、個人的動機という点でも、三國さんには、非常に共感を抱いたのである。
講演が終わって翌日、三國さんと、はたして、古川で、料理の会ができるのだろうか、下見に行った。大きな設備としては、駅前の宴会場をもったビジネスホテルがあるが、厨房は和風で、洋食器がまったくない。導線もよくない。三國さんは、「旅館が見たい」と、古い旅館を急遽下見に。門構えのしっかりした旅館にを訪ね、なかをしっかり見ると「こちらがいいな。ただし、昼間に、手打ちそばと、和菓子とお茶。雰囲気がいいから、都会の人から喜ばれるでしょう。それからコンサートで、あとで料理では、どうかな」というプラン。すごく納得できる。
その後、2006年6月にできるというコンサートホールの近くあるレストランのある場所も、三國さんの希望で下見をした。「こちらでテントを張ろう。テントで食事だ」と三國さん。みんんが「えっ、テントでできるんですか?」「フランスでは、何度もやっている。そのほうが、こちらの町並みが生きるし、シチュエーションがいい。食器はレンタルすればいいし。メインは、昼間見た飛騨牛だね。地鶏はスープ。あとは地域食材を組み込んでコースを作ればいい」と、てきぱきと、プランが組みあがった。
さすがにプロである。地域のよさを存分に生かすということが、頭にあって、古川の景観、古い建築物、やすらぎ、地域食材が、見事組み込まれたアイディアである。僕は、すっかり感心してしまったと同時に、強い刺激を受けた。いつもそうだが、プロと呼ばれる人は引き出しが多い。だからどんな応用もきく。そんな場になんども居合わせた快感をしっているのだが、今回も、また味わった。ぜひ、古川の三國さんの料理会を実現したいと、強く思ったのである。
■掲示板
おいしい食のネットワーク「オリザジャポニカ・クラブ」始動
・第二回目は、公開の学校給食授業です。
《給食試食会・発足会スケジュール》
・午前11:20〜12:00
古川康佐賀知事の「子供たちへのメッセージ!」
浜玉中学校 体育館
・午後12:05〜12:35
給食試食会 同中学校 2F図書館
・午後12:40〜13:00
オリザジャポニカクラブ発足式 ひきつづき 同場所
場所:佐賀県唐津市浜玉町大江6番1号
電話(0955)56ー6650 唐津市立 浜玉中学校
日時:平成17年9月29日(木曜日)
開場…午前11:00 開催…午前12:05
参加費・・・500円(資料代含む)
募集人員 40名 定員になり次第しめ切らせて頂きます。
《第二部・発足会》
場所:佐賀県武雄市武雄5538ー1 電話(0954)23ー5165
武雄市文化会館 中集会室
日時:平成17年9月29日(木曜日)
午後19:00〜21:00
参加費・・・200円(資料代・会場費含む)
・呼びかけ人:山下惣一、古川康、武富勝彦、吉野好宏、 白濱幸広、 福山隆志、金丸弘美、岩崎道明、三浦正之、橋本祐充子、小島起代世、 白濱美保子(順不同・敬称略)(なお、このネットワークは、 あくまでも、個人の資格で参加・呼びかけが行われているものです) ご参加のお申し込みは、9月20日(火曜日)までに、メールまたは、 FAXにて事務局 白濱 美保子宛にお願い致します。
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TEL/FAX:0955-42-6435
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