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  旅日記 no.058
「手づくりモクモクファームのチーズ」
2005年9月21日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「手づくりモクモクファームのチーズ」のお話。

 たて続けに乳製品の工房を三箇所訪ねることとなった。そのなかの一つが、三重県の手づくりモクモクファームだ。今度、ジャージーを飼って牧場を作り、チーズやミルクを販売するというのでみにいったのである。

可愛らしい木造のチーズ工房があって、坪田香保里さんがチーズを作っていた。7月1日にできたばかりである。フランスに三ヶ月修行してきたのだという。モクモクのすごいのは、若い人をどんどん研修に行かせて、先端の技術を学ばせてしまうことだ。

週に2回カマンベールチーズを作っているという。ジャージーのミルクそのままを使った上品な味。すごくいい味で、クセがなく、食べやすい。日本人好みかも。ところで、訊いてみたかったのが、チーズにおける発酵のこと。というのも、むこうのこだわりのチーズは、ミルクにある自然乳酸菌を用いてチーズを造るのがたくさんあって、それは日本では、保健所の問題もあって、できないのではないか? ということだ。

というのも、イタリアに行って初めて知ったのだが、スローフード協会が推薦しているようなチーズは、日本では造れないということだった。それは放牧の牛や羊、ヤギなどを、国産の餌で育てた家畜のミルクのなかにある自然乳酸菌を使う自然発酵によるものだ。まず国産の餌を食べさせる畜産は、日本国内ではまずないといっていいだろう。国内の穀物自給率は28パーセントだが、畜産ではほとんどの餌が輸入である。

日本では必ずミルクを一度殺菌してしまうので、自然の乳酸菌は死んでしまう。そこで改めて別の乳酸菌を入れて発酵させるのである。
だから、イタリアのような、いろんな味の、さまざまな形状のチーズは日本ではできない。なにせ乳酸菌は何千種類とあるのである。おまけに羊、ヤギ、牛で、乳脂肪率も違うし、味も違う。牛も種類によって味が異なる。餌でミルクの味も違う。日本では、ミルクやチーズは、ほとんどがホルスタインである。

生活の習慣やミルクやチーズの食文化の違いというのもあるが、ミルクには他の雑菌もあるので、日本の気候では、雑菌も増えやすいという理由もあって、殺菌がされるらしい。それと大量生産、大量流通を前提としたミルクつくりがされてきたということも大きい。
したがって、日本では、チーズもヨーグルトも一度ミルクを殺菌をして、それから乳酸菌を新たに入れたものが市販されている。

これはモンゴルや、トルコなどのヨーグルトも同じで、ときどき雑誌などで出てくる自家製のヨーグルトも、自然乳酸菌である。日本の家庭の漬物も乳酸菌発酵だが、漬物をするのに、一度熱して、改めて菌をいれないのと同じことだ。つまり、むこうのチーズやヨーグルトは、日本の味噌汁と同じで、家庭で作るもの、がもともとは前提となっている、ということだろう。

一時大流行になったカスピ海ヨーグルトなんていうのもほんとうは存在しないことになる。菌をもってきたからといって、それを日本のミルクを使った時点で、もうまったくの別物である。まず現地にカスピ海ヨーグルトなどは存在しない。それに自然乳酸菌と、その土地の畜産のミルクによるものが、現地のヨーグルトだから、日本国内で手に入れるのは不可能ということになる。

坪田さんによると、たしかに現地のチーズの自然発酵のものは、日本ではできないとのこと。ただ、いろんなチーズを造る材料や菌などがあって、いろんな組みあわせができる材料もたくさんあるということだった。

モクモクでは、ジャージー種のミルクを65度30分の低温殺菌。
これを30〜34度にさげて、フランスの乳酸菌とオーストラリアのレンネット(牛の4番目の胃にある酵素)を使って発酵させるのだという。ジャージーを使うのは、乳脂肪率が高く、おいしいという理由からだ。

僕がチーズやヨーグルトに関心を持ち始めたのは、じつは、ここ3年のことである。ある出版社でヨーグルトの本を造ることになって、八王子の磯沼ミルクファームに毎週のように通った。牛から造るヨーグルトを目指したのだ。ところが編集部と話しているうちに、世界のヨーグルトや、市販のヨーグルトのことも入れたほうがいいという話になって、いろいろ調べていたら、そもそも、ヨーグルトやチーズを造る材料と過程が異なるということに気づいたのである。

そこで、本のコンセプト自体がうまくまとまらず、中断してしまった。企画は宙に浮いたままだ。しかし、今は、日本でのチーズやヨーグルトがわかったし、一方で小さいながら、国内なりにいい製品を作る牧場がいくつもあることもわかったので、改めて本を作りたいと思っているのだが、どこか声をかけてもらえないものだろうか?

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TEL 0164-26-2710 FAX 0164-26-2715
E-meil newsupport@siren.ocn.ne.jp

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