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  旅日記 no.068
「イル・ポスティーノ」
2005年11月30日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「イル・ポスティーノ」のお話

 ここ一週間、全国を巡った。すべて食がらみである。しかも、食育に関連している。月曜日に学習院女子大学での食育の日本での取り組みを紹介したのに続いて、火曜日は東京国際フォーラムでの生
協の交流会と展示会、水曜と木曜日は秋田で「食推進フォーラム」の関係者と展示、金曜と土曜は山梨県甲府で食育のフォーラム参加、日曜と月曜は鹿児島で「奄美・子宝長寿」の県庁での会議、火曜日
は佐賀県伊万里で農業改良普及所の集いと、多くの人にあった。
 ここ15年、千葉県の佐原市の田んぼから始まって、北海道から沖縄まで全国を旅をしてきたが、そこで出合った、食に関わる真摯な人たちのおかげで、僕は、さまざまなことを教えてもらった。そのことを、今度は、あちこちに伝えたいと思っていたら、次々と声がかかって、各地の活動の伝達役をすることとなった。

旅は、まるで郵便配達を思い出させ、イタリアの「イル・ポスティーノ」や中国の「山の郵便配達」ではないけれど、一つの話の運びをする喜びを感じるようになった。映画は、人の言葉、思い、喜び、ときには恋を運ぶのだが、理想を言えば、映画のように、感動を伝えられる役割を担えればと、いつも思うのだ。
 食の旅の中で、3年前から、ものすごい興味をもって、毎月訪ねるようになったのが、学校給食である。そもそもの始まりは、沖縄の長寿の村・大宜味村(おおぎみそん)の取材がきっかけだった。長寿の村の飛行機会社の機内誌の取材だったのだが、行ってみると、もうあらゆる雑誌、新聞、テレビで、登場したところばかり。それだけではつまらないなあと、思っていたとき、ふと思いついたのが、「長寿の村の子どもたちは、なにを食べているのか?」だった。
急遽、役場に行って紹介してもらったのが、大宜味村の給食センターの栄養士・北城むつみさんであった。彼女たち栄養士の仲間は、村の農家を訪ね、どの農家がいつどんなものを作っているのか、すべてリストアップがしてあった。それらの食材を用いて給食を作り、郷土の料理を給食用にアレンジしたものを写真に撮り、すべてレシピ付きでファィルしてあったのだ。

北城さんは、沖縄の子どもたちに、ファストフ−ドやハンバーグ、カレーなど、簡単な食が広がり、郷土の食べ物が薄れていることを憂えていた。そうして、将来、長寿はいなくなると危機を感じていたのである。実際、沖縄では、若い世代に生活習慣病が広がり、早世の人が急速に広がっている。

北城さんの出会いは、強烈であった。すっかり魅了された。彼女のことをあちこちに紹介した。それから深い関係(?)となって、彼女のことを妻にも家族にも徳之島の人たちにも引き合わせ、徳之島にもきてもらい、食の取り組みに、おおいに刺激を与えてもらった。
彼女が沖縄の名護市に転勤となって、今年名護市の給食センターにも行き、彼女の職場もしっかり見学させてもらった。沖縄に行くと、必ず北城さんと食事をするようになった。

北城さんが東京に来たときに紹介された仲間というのが、長野県奈川小中学校の杉木悦子さん、それに佐賀県浜玉中学校の福山隆志さん。いずれもすぐれものの栄養士さん。北城さんの仲間ならと、二人の食場を訪ねた。二人とも北城さんに負けず劣らず、農家を巡り、地域の連携をはかり、子どもたちを思い、地域の食材をふんだんに取りいれた給食を行っていた。どちらも素晴らしかった。

この3人の影響もあって、僕は、「ようし、毎月、全国、給食を食べに行こう。取り組みを伝えよう」と、張り切って、沖縄から秋田まで、給食を食べに行くことにしたのだ。あちこち行ってみると、熱心な栄養士さんにめぐり合う。しかも、素晴らしい給食を出している。最近では、江戸川区立篠崎第4小学校、八王子ふたば保育園、南アルプス市豊小学校にうかがったのだが、もう圧倒された。

篠崎第4小学校は、すべて国産素材で、材料から取引先から生産者まで、すべて公開され、材料から子どもたちに伝えている。ふたば保育園は、こどもたちが毎日料理やご飯炊きを手伝っている。豊小学校では、農家の連携はもちろん、給食に使う農産物を子どもたちが栽培して食べるという活動も行われていた。

こういった活動は、地元でもなかなか知られていない。だからこそ、伝えることが必要だと思った。というのも、子どもたちに健康を手渡すのは、熱心な栄養士さんや農家や学校の人たちの役割も大きいからだ。国が食育を進めているにもかかわらず、一方で、市町村合併の合理化もあって、給食センターの設置と大型化、給食の外部の委託化なども始まるという、矛盾も出始めている。栄養士、調理師さんたちの負担は大きくなるばかりだ。

そのことも含めて、給食の素晴らしい活動を行う、栄養士さんを始めとする地域取り組みをもっと広げたいと、思うようになった。それは、北城さんを始めとする、素敵な人々に出会ったからに他ならない。

■テレビ放映のお知らせ
奄美・徳之島でロケをした特別番組が放映されます。

・BS-i(TBS系衛星デジタル放送 チャンネル161)、「i-style」
での、金丸弘美の番組の再放送(予定)のお知らせです。
http://www.bs-i.co.jp/i-style

この作品は2003年に製作されたものですが、好評で、何度か放映
され、この度再放送がきまりました

このロケがベースとなって島のことを書いたエッセイ
『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)が生まれ、ツアーができ、あらゆるメディアに登場するきっかけとなりました。

・12月19日(月) 18:00〜18:54 
「究極のスローフード 夢と情熱の徳之島コーヒー」
「脱都会!人生最良の日々 悠々の島暮らし」
「温故知新 古代塩とドラゴンフルーツ」
「太陽(ティダ)と島土(アーニチャ)のめぐみ 地産地消の長寿市」

・12月21日(水) 18:00〜18:54 
「熱く激しく、そしてやさしく 牛と共に暮らす」
「大地の記憶を呼び醒ます カムィヤキ古窯群」
「島の宝 人の宝 長寿の秘訣教えます」
「太陽と黒潮のめぐみ 大人の遊び 追い込み漁」

・12月28日(水) 18:41〜18:54 
「島の母さんは元気です!長寿の食卓」

・特別番組等で放送日時が変更になることもございますので、
併せまして、番組ホームページ
http://www.bs-i.co.jp/i-style)等での
ご確認もお願い致します。

●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/

●金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html
・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/