こんにちは、金丸弘美です。
今日は「徳之島での街づくり」について
12月6日から14日まで、久しぶりに徳之島で過ごすこととなった。というのも子供が通っている徳之島高等学校の「これからの農業」の授業を頼まれたからで、少し時間を多くとってでかけることにしたのだ。徳之島は、とても暖かく、ときどき蝶が舞っている。ちょうどパパイアやバナナの時期で、完熟のものが食
べることができた。島は、イベントが目白押しである。着いた日が大相撲の巡業の日で、翌々日は桂三枝、桂文珍の落語会。その両方に出かけて、島の休暇を楽しんだ。
そんななかで、伊仙町長の大久保明氏と氏職員と、Iターン者と語る夕べというのが行われた。わが家もIターンにあたるので、参加することにした。全員で10数人。これまでにほとんどの人に会っているので初対面はごくわずか。改めて出会いの機会ができて嬉しい時間である。このなかで、Iターンから観た徳之島の現況と改善点の話が聴きたいということで、いくつか意見交換会が行われた。
「町長は環境保全型農業を推進すると、2004年の長寿シンポジウムのときに宣言したのに、その後の具体的な活動がみられない。あれは一体どうなっているのか」と、するどい指摘をしたのは、島に来て25年になる吉玉誠一さん。吉玉さんは、誠実でまじめな性格なので、みんなから好かれている。コーヒーやバナナ、キャサバなどを栽培している。
すべて農薬や化学肥料は使わない。吉玉さんは農地を借り受けて、これまで農業をしてきた。いい作物ができるようになると、必ず土地を返してくれてせまられる、という憂き目にあって、もう6回も農地を転々としている。こんな人にこそ、農業をしてもらいたいと思う。
「いい人がたくさんいて、情も懐も深い。だけど公私混同も激しい」と言ったのは東京からつい最近来た松岡由紀さん。彼女は、公的な仕事の調査事業をしていたこともあって、海外の事情も詳しい。伊仙町では、サトウキビ栽培の拡大を目指して畑の改善事業を行い、あちこち森林を伐採している。またダムもできている。
彼女に言わせれば「ダム掘削で、観たこともない断層が出てきた。
この島には、これまで知られなかった歴史的なものがまだまだ眠っている。そこをこそ知るべきだ。それを島の中心に据えるべき」と言う。
うちの妻と何人からでたのが、農業での除草剤を廃止して欲しいとの要望。多くの畑では、未だ除草剤が使われている。ちょうど、衆議議員の議会で、有機農業推進法が採択された翌日ということもあって、話は、有機農業のことについて、かなりの意見があった。Iターンから観ると、空き屋の紹介や、迎いいれ、街づくり、また観光の態勢などが、十分とはいえない。またインフォメーションも不十分にうつる。
さて、大久保町長からは、「サトウキビ栽培農家の拡大」「道路の拡幅」「公設市場の開設」など、新たな街づくりの構想が述べられた。これに対して、僕の意見は、サトウキビ畑の拡幅と後継者のある農家への集中は、おそらく将来性はない、というもの。
まずサトウキビの単価が安すぎる。国は将来の輸入自由化の方向にあり、かりに徳之島規模の小さな畑を拡大したところで、生産
が増えても、農業生産だけでは将来性はないだろう。さらに環境を破壊するだけで、農業の先行きはないだろう。
道路の拡幅は、目先のお金は動くだろうが、将来の街づくりのビジョンを明確に掲げておかないと、確実に地域は衰退する。これは松岡由紀さんも同じ意見。全国の街づくりをみていると、優良な土地ほど、道路拡幅に使われ、車の通路になってしまう。さらに郊外の大型店に客を奪われ、地域雇用をなくしてしまう。土地をもっている農家、工事をする土建業には、目先の大きなお金は転がり込むが、将来の永続的な街づくりにはなるとは限らない。
また結果的に地域の税収も激減する。ほとんどが失敗している。
公設市場の開設も、他の業者を入れる方向で進んでいるようなのだが、これも他人任せでは、地域貢献というところでは、うまくいくとは限らない。地域のほうが、自らマネジメントできる形、経済性も加味して、経済的主導権を握る形の展開でなければ、うまくいかないだろう。なにも悲観的なことばかりではないだろうが、現在のさらに先のビジョンを立てなければ将来性はない。
すでに農業生産では、将来性はないとわかっていた、大分県大山町や三重県のモクモクファームなどは、生産、加工、販売、レストラン経営、市場の形成、自らの農産物栽培の独自性を確立して、環境保全も含めて、観光ツーリズムまでの展開を行っている。徳之島も観光、商業、農業、サービス、そして奄美諸島の癒しのある自然と環境を加味した、マネジメントと商品開発が必要なのだが、そのビジョンが明確に出てきていないのが、もどかしい。もちろん、なんとかせねばと動いている人たちもいる。
明るい希望は、2004年、僕も関わって1200名の長寿の調査を実施したことが大きな波紋になっているということだ。実は、長寿の島といわれた徳之島の若い人たちに生活習慣病が拡大していて、現在の食生活では、長寿の町はなくなるという結果だった。
そこから伊仙町の保健センターを中心に、地域の食材の見直し、子供たちの生活調査、具体的な食生活改善プログラムへの住民参加、食育の推進などが、大きく動き始めているということだ。
■「食育」をテーマに、本を書きました。話題の本です。
イタリアでのスローフード協会の食のワークショップや、静岡の小学校の「おにぎり」での味覚の講座、徳之島での1200名の長寿の食の調査と町を巡るワーキング、全国の学校給食の現場など、自ら参加したものをメインにまとめました。
ぜひお読みいただけると幸いです。
・書 名 『子どもに伝えたい本物の食』
・著 者 金丸弘美
・価 格 1、680円(税込)
・出版版元 NTT出版
・問合せ先・申し込み NTT出版 遠藤・今井
電話:03−5434−1001
FAX:03−5434−1005
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番組コーナー:「金丸弘美のス農(ノー)フードな旅」
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