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  旅日記 no.155
「宮津市の飯尾醸造を訪ねる」
2007年9月12日
こんにちわ。金丸です。
今日は「宮津市の飯尾醸造を訪ねる」です。
 京都府宮津市の飯尾醸造へお酢の蔵と棚田を訪問することとなった。恵比寿のフードマエストロ講座の19回の講座が開かれているが、そのなかに飯尾醸造の飯尾彰浩さんの酢のセミナーがある。ここの「富士酢」は、米作りから行われいて、しかも伝統的な静置発酵といって、お米をいったんお酒にし、そこに昔の酢を加えて、自然の力で発酵させる方法がとられている。現場を見に行こうというわけである。
企画をしてくれたのは、フードコミュニケーターの柴田香織さんと、広報部の奈良井清美さん。9月8日、朝7時50分の新幹線で、京都経由で宮津に向かった。京都から2時間かかる。実は、京都の日本海側に行くのは初めて。駅に飯尾さんが迎えにきてくれた。なんと飯尾醸造は天橋立のすぐそばで、景観がいいのでびっくりである。駅で他の生徒さんと合流し、全部で7人。楽しい旅となった。
初日は、海からの観光や食事となったのだが、海のそばだけに、お昼も夜も魚が美味しい。もっとも飯尾さんが、地元の店を厳選しておいてくれたからのこと。お昼は「すえひろ」での刺身定食。夜は「酒菜 禅」での刺身を中心とした料理をいただく。食事がひととおり終わった頃に、なんとハッピーバースディーのロールケーキが登場した。実は、この日は、私の55歳の誕生日。柴田さん、奈良井さんが、こっそり飯尾さんに頼んで手配してくれたらしい。
この日、「朝日新聞」に新刊「創造的な食育ワークショップ」(岩波書店)の広告が大きく載った。素敵な誕生日だなあと、ひそかに思っていたのである。ところが、夜には、フードマエストロ講座の生徒さんたちに囲まれての誕生のお祝いに感激だった。なんと幸せな時間だと思ったことか。
翌日、朝は温泉に入って天橋立まで散歩。天橋立を渡る橋の近く、智恩寺文殊堂を詣でる。とても美しく静かでよく手入れされていていいお寺。それから天橋立の松並木を歩く。海岸が美しい。おそらく地元の方々が漂着したゴミなどは、いつも丁寧に拾っていらっしゃるのではなかろうか? 天橋立は、空気がよく気持ちがいい。素晴らしかった。
11時に飯尾さんの迎えで飯尾さんの自宅へ。ここで、お母さん飯尾さとみさんとお父さん飯尾毅さんに迎えられての昼食。お二人とも若い。食事とお酢のせいかしらと、みんなの大きな話題となる。チラシ寿司、葉ずいき、まんがんじの煮物など、おいしくいただく。その後、棚田に向かう。
飯尾醸造の素晴らしいのは棚田での米作りから行っているとうことだ。棚田は標高400メートルにある。なんでまたこんな高地にと思ったら、飯尾毅さんが「なんでも平家の落人が、この地で開墾したらしい」とのこと。なるほど、そうでなければ、こんな条件不利地では、農業を営む人はなかったろう。
棚田の周辺はほとんが耕作放棄地か休耕田になっている。そのなかで飯尾醸造では、なんとか昔の米作りを残したいと地域の農家24軒と契約栽培している。みんなが農業を継続しているのは、買い上げ価格を高くしているということもある。値段は1俵(60kg)が2万6000円。相場が1万5000円だから、一般より1万円以上高い。
それと飯尾醸造の社員が栽培する田んぼが5反ある。5反といっても山間地の棚田だから田んぼは30枚にもなるという。もっとも毅さんに言わせると「それでも高齢者の多い地域では、これから10年後はどうなるかわからない。自分たちの田んぼも、自らとなると、せいぜい今の面積が限界なんです」という。
現在、政府は山間地の補助を1反あたり2万1000円しているが、これは平成22年まで。山間地は集落営農ので若い後継者のあるところで、集約化を進めている。が、宮津のような高地の棚田では、集約は難しい。若い人も50歳、あとは70歳になるという。こういう地域では、環境や景観保護での直接支払い、また飯尾醸造のような伝統的な加工品に対しては、積極的な援助をすべきだろう。
でないと、伝統的な食も、それを生み出す環境も将来は守れなくなるに違いない。棚田では、すべて無農薬で行われている。紙ロールを使ってのマルチによる除草対策(薄いロール紙で覆い、そこで田植えをする方法)と、一部は冬期湛水水田(冬場に水を入れて雑草を抑制する方法)などが用いられている。また苗作りも昔の方法の成苗といって、5枚葉の丈夫な苗づくりが行われていた。
金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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テーマは食育ですが、地域の活性化とブランド作りにつながる形としてまとめ、すべて実践に基づいて書いています。
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