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  旅日記 no.028
沖縄粟国島
2005年2月23日
こんにちは。金丸弘美です。
今回は沖縄粟国島に行った話について。

 沖縄の粟国島に7年ぶりに行った。粟国は那覇から9人乗りのプロペラ機で北西に約20分。周囲12キロのサンゴ礁に囲まれた小さな島だ。映画『ナビィの恋』の舞台になったところである。
粟国は、「粟国の塩」で知られる「沖縄海塩研究所」の小渡幸信さんが、美しいコバルトブルーの珊瑚の海から塩を作っている。この塩のことを知って訪ねたのが7年前だったのだ。小渡さんの塩作り、その味わい、またいただいた塩の本によって、さらに各地の塩の違いのティスティングで本物の塩、それに塩の重要性を知ったのだ。
 以来、我が家の愛好の塩は「粟国の塩」になったし、『産地直送おいしいものガイド』(講談社文庫)、『からだがよろこぶ自然食2003』(学研)、『本物を伝える日本のスローフード』(岩波アクティブ新書)他、多くの本や雑誌で紹介してきた。
そうして昨年、イタリアのスローフード協会主催の世界生産者会議「テッラ・マードレ」に小渡さんを推薦したところ、小渡さんは部下の男性と塩のサンプル48キロも抱えてイタリアのトリノへとやってきて、塩作りのことを発表したのだ。

 今回の粟国行きは、小渡さんの「沖縄海塩研究所」が10周年で、その記念式典のシンポジウムの基調講演、シンポの司会で招かれたのである。
イタリアで一緒だった沖縄豚の保存をおこなっている養豚家の我那覇さん夫妻、福岡の雑誌「モンタン」編集長の田中智子さん、泡盛の店をもつ沖縄スローフード協会会長の田崎さん、古代米を復活させた佐賀の武富勝彦さん、なども再会して、また各地から集まった食にこだわる人たちと会い、楽しいひとときとなった。
 粟国の塩は、海から海水を汲み上げ、竹を1万2000本を吊るした大きな穴あきブロックのタワーから降らせて、海の風によって水分を飛ばし、少し濃くなった海水の灌水(かんすい)を、さらに大きなステンレスの釜で30時間薪で炊き、そうして自然のままに3日間にがりを落とし、また別に移して4日間おき、それを扇風機で水分を飛ばしながら袋詰めにするのである。

 できあがった塩はもまろやかで、海の香りをほんのりたたえ少し甘みがある。
これを料理に使うと素材の持ち味が大きく引き出され、うまみがぐんと広がる。
一度粟国の塩を使うと他の塩は使えない。また塩一つで料理が、ぐんと異なってくる。
料理のポイントは塩である。それもきちんとした自然の塩でないといけない。
ところが、その塩の素材の大切さをあまり知らない人が多い。

 海に囲まれた日本だが、国内で作られる塩は、全体のわずか14・4パーセント128万トンに過ぎない。輸入は85・6パーセントで、759万トンもある。
そのほとんどはメキシコ、オーストラリアからのものだ。
 実は、塩は食用だけではない。販売されているのは全体で879万トン。そのほとんどは、塩(NaCl)からできるカ性ソーダ(NaOH),ソーダ灰(Na2CO3)、塩素ガス(Cl2)、塩安(NH4Cl)などとして、合成繊維、石鹸、CD、アルミホイル、合成ゴム、生理食塩、水道水の消毒など工業用として用いられる。

 食べ物として直接かかわる醤油、味噌、漬物、ハム、バター、お菓子など加工に使われるのは11・1%で97万トン。家庭用食塩は2.8%で25万トン。
家畜の餌や雪国の雪を溶かしたりするのに使うのに6・7%で59万トンある。
食に直接かかわる塩だけでも国内では足りていない。人や動物では、塩は、血液の流れをよくし、消化を助け、神経の働きをつかさどる役割がある。
成人で塩は約13gが必要とされる。われわれの身近な家畜では、牛は一日79g、豚は5〜10g、鶏は0.8〜1gが必要なのだ。

 日本の食用塩は、兵庫、福島、香川、長崎、岡山、徳島にある6工場で作られ、海水を特殊な膜を通して濃縮し蒸気で炊いて作る「膜濃縮せんごう塩」(イオン交換膜方)と呼ばれるものがほとんで、塩化ナトリウム99パーセントのものである。これは1971年から政府で工業化された。これらの塩は塩っ辛いだけで、味をひきたてない。また、輸入した天日塩を一回海水で溶かして作る「再製せんごう塩」と呼ばれるものも作られている。これらの塩がほとんどを占めていて、粟国の塩のような自然の塩を使っている人は4%に過ぎない。

 塩は1997年まで専売制であったが、その後、自由に製造できるようになった。
そのなかで真っ先に昔の塩作りを再開した一人が粟国の小渡さんだったのである。
いかに塩が料理を変えるか。また味が塩で異なるか。ぜひ試してもらいたい。
 また自然の塩は、体に必要なカルシウムを始め、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガンを微量栄養素をたくさん含んでいるのである。
 粟国の塩の10周年には、全国から自然の塩の素晴らしさを知っている多くの人たちが集まったのである。

■日本ペンクラブ環境委員からのお知らせです。

 2005年、大田原市において、日本ペンクラブ環境委員会の「里山と文学」シンポジウムの開催が決定!!

 日本ペンクラブの環境委員会からのお知らせです。私たち環境委員は、文学を通して、日本の自然の豊かさ、素晴らしさ、またそれらが、文化や表現に大きな潤いと豊かさをもたらしてきたこ
とを、広く語り合いってきました。

 今回は「里山」を通して自然環境の大事さを訴え、「里山」を日本の文学や歴史に根付かせて行くのかをじっくりと考えていく集いです。里山の豊かな大田原市の協力によって生まれました。
 この「環境の集い」に、ぜひご参加」ください。

第1部 基調報告 「里山と文学」 金丸弘美

第2部 シンポジウム
 パネラー・
中村敦夫、 斎藤純 、田口洋美、金丸弘美 

総合司会 武笠和夫
コーディネーター 森 詠
制作  日本ペンクラブ企画事業委員会 

・日時 平成17年3月19日(土)
 午後2時〜午後4時(午後1時開場)  
・会場 大田原市総合文化会館ホール
所在地:〒 324 栃木県大田原市本町1-3-3
電 話: 0287-22-4148

http://www.mapfan.com/index.cgi?MAP=E140.1.12.8N36.52.2.9&ZM=9
新幹線:那須塩原駅下車(東京より約一時間)。
バスにて大田原市役所下車。所要時間15分。
http://www.city.ohtawara.tochigi.jp/sub-page/access/map-access.html3

●募集定員  350名  入場料 無料
(但し、整理券を持参のこと。整理券については先着順に配布
いたします。)
* 整理券については2月1日(火)より、企画課で配布いたします。
なお、往復はがきでの整理券の発行もいたしますので「企画課宛」投函ください。
* 問い合わせ先  
大田原市役所総務部企画課(TEL0287−23−8701)

主催  大田原市・日本ペンクラブ環境委員会