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スローライフ旅日記
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  旅日記 no.030
「イタリアスローフード協会カルロ・ペトリーニ会長来日」
2005年3月9日
こんにちは。金丸弘美です。
今回は「イタリアスローフード協会カルロ・ペトリーニ会長来日」について

 イタリアスローフード協会の創設者で、現会長カルロ・ペトリー二さんが来日した。滞在は2月23日から3月4日までだったがこの間イタリア大使館の記者会見、日仏会館での講演会、丸の内ミクニでの懇親会と都合3回会うことができた。
 
 実はペトリーニさんとは2002年のトリノのサローネ・デル・グストで、また2003年のブラのチーズのときに本部の中庭で会っている。
今回の来日にあたっては記者会見のインフォメーションと農家との懇親会の呼びかけを手伝った。おかげで多くの生産家とも再会ができて楽しいものになった。

 記者会見と講演会でスローフードの食文化の明確な定義をじっくりと聞くことができた。それこそ望んでいたことだ。
なかでも初期のスローフードの発足がワインと食文化の会であったのだが、ファストフードの出現によって味覚が均一化されるなかで、新しい世紀のガストロノミー(食文化)とはなにかと議論してきたことから打ち出した方向が味覚の多様性というコンセプトだったという点である。そうしてNPOスローフード協会としての食文化を推進する事業が始まる。

 とくに学校の味覚教育に力を入れこれまでに1万5000名の教師がスローフードの教育プログラムに参加したという。その大きなきっかけは子供たちが青いリンゴの香りををシャンプーの香りがすると言い、今では生産の現場から子供たち離れた環境にあり、本物が見分けがつかなくなっているということだ。子供たちが正しい食べ物や飲み物を選択できるようになること、料理の知識や生産のことを知るというところから始まったということである。
つまりスローフードのNPOが子供たちに正しい味と食を伝えることが根底にあったというわけである。

 さらにもっとも危機感を抱いたのは食の大量生産による農業の衰退、画一された味、さまざまな種や畜産の淘汰である。
「ここ50年は食文化が根絶やしにされる時代だ。農村の知識や伝統的な文化を破壊してきた。1950年イタリアは48%が農業だったが現在は4%であ
る。アメリカは38%から今や1%。日本は6%になったと聞いた。生産自体が工業化され、大量生産、クオリティの低い生態系を毀すものとなった。私たちはシステマチックなものから生物多様性を守る運動を始めた。生産を守るだけでなく知識を守ることを始めたのだ」

「今、一日の間に5種のフルーツや野菜が失われ、動物の種類も失われる。イタリアでは乳牛の種を4つ、8つの羊を失った。この状況は悪化している。それは大量生産をめざしたからだ。ソ連ではアゼロジューレという乳牛が存在した。一日当たりのミルクの量は15リットルだった。そのうち一日40リットルのホルスタインが出てきてアゼロジューレは飼わなくなった。種をなくしただけでなく、一つのチーズもなくしたのだ。
何世紀にもわたってきた遺産であるにもかかわらず、生産性のために牛は犠牲になった。ガストロノミー(食文化)を考える人々は、今、本質を考えるときにきた」

「ガストロノミー(食文化)とは重要なものである。食文化は料理のことだと思っているかもしれないがそれは大間違いだ。複雑な科学の体系である。たくさんの学問からなっている。農業、畜産、食品の加工知識、その裏には経済活動がある。その多様な交流がないと食文化はない。そこには政治も経済も健康もあるだろう。もう一つの重要なことは肥満問題である。食品のクオリティとは賢い賢明なものである。他の科学文化と違うのは、複雑で多くの学科にまたがっているということだ」

 そうしてスローフードの考える食文化の食品のクオリティについての話が度々登場した。「食品のクオリティには三つのファクターがある。一つは感覚的な、味がよいというクオリティ。味覚的においしいものでないといけない。それは文化的な価値という意味でもある。
二つ目は、クオリティが高いということは、環境を尊厳したもので、生態を壊すものであってはならない。除草剤を使った農業のように、生態系を壊すものであってはならない。
三つ目は、社会的に正統的なものであること。その生産活動に携わる人たち食品には正当な報酬(ほうしゅう)を受けていることが大切なのだ。これらの一つが欠けてもいけない」

 さらに現在、イタリアも日本も食費にあてるお金がどんどん下がっていることから少し、まともな食べ物に支払いをするようにも呼びかけた。さらに、東南アジアで行われている企業と商社による環境破壊のエビの養殖に対しての反対キャンペーンを行うこと、2004年にトリノで行った「テッラ・マードレ(母なる大地)」を来年、今度は世界131各国5000名の生産者に加えて大学教授、シェフ100名を加え食文化と多様性を世界発信するということ、それに日本からももっと多くの人が参加するように呼びかけた。


【お詫びと訂正】
3月2日配信しましたマガジンの件名に誤りがありました。大変失礼致しました。訂正してお詫び致します。
誤)金丸弘美のスローライフ旅日記
正)金丸弘美のスローライフ旅日記 No.29


●参考
なお、記者会見の模様は、毎日新聞社・佐々本浩材記者によってWEBでも掲載されています。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/travel/green/archive/news/2005/02/20050226org00m1000010
●スローフードの組織の詳細については、イタリアスローフード協会が認定した『スローフ
ード・マニフェスト』(木楽舎)
石田雅芳、金丸弘美共著(全国図書館協会選定図書)で紹介しています。本はインターネッ
トで購入できます。アマゾン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054023126/249-1566876-8006749

■〜ゆらしい島のスローライフ〜の旅が決定! 参加者募集!!
『奄美に訪ねる長寿の食』のご案内
※徳之島の方言で「ゆらしぃ」は「ゆっくり」という意味
黒砂糖作り・塩作り体験編 

同行講師:食環境ジャーナリスト 金丸弘美
訪問先:鹿児島県徳之島

南の奄美諸島、鹿児島県徳之島を訪ね、手付かずの自然や昔ながらの文化を大切にする島の人たちとのふれあいを通じながら、都会のでは味わうことの出来ない島の生活を体感するシリーズ第2弾!!
今回はとくに美しい海での体験と宴会、島の野菜を使った島料理教室、長寿の食の料理など地域の人々と触れ合いながら食を楽しみます。

第1弾の旅の様子はHPにて紹介しています。
http://www3.synapse.ne.jp/mcmaru/yurashii01.htm
また単行本『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)で
徳之島のことがたっぷり堪能できます。本の購入は、アマゾンからできます。http://www.amazon.co.jp/

□日程:2005年6月9日(木) 〜6月12日(日) 3泊4日
徳之島の人々とふれあい。サトウキビ収穫体験。吉玉誠一さんの珈琲園訪問。無農薬野菜の作農。黒糖づくり体験。ゆっくり海アシビ。
郷土料理の昼食。天然塩作り体験。珊瑚礁の探訪と島の魚での手料理宴会(漁なくさみ)など。

□一人125、000円(会員)、一般127、000円。
□旅行費に含まれるもの:受講料、宿泊費(3泊)、航空運賃、貸切バス代、食事(朝3回、昼3回、夜3回)
□利用予定宿先:サンセットリゾート 0997-85-2349

企 画:朝日カルチャーセンター 電話:03-3344-2041 担当:大野
協力:ニッポン東京スローフード協会、
観光かごしま大キャンペーン推進協議会
旅行主催:日本通運(株)首都圏旅行支店日本通運
電話:03−6251−6356 担当:蔦谷(ツタタニ)・名塚
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0501koza/G0201.html