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  旅日記 no.037
「『話の特集』と仲間たち」
2005年4月27日
こんにちは。金丸弘美です。
今日は「『話の特集』と仲間たち」のこと

紀伊国屋のイベントで高平哲郎さんと久しぶりに会って、そのトークで登場した『話の特集』の編集長だった矢崎泰久さんの話が面白かったこともあって、本屋で「『話の特集』と仲間たち」(新潮社)を購入した。『話の特集』は1965年から1995年まで続いた雑誌である。この本が実は和田誠さんがアートディレクションを行いしかも完全無給、ただし徹底的にやりたいことをやるという実験精神に基づいた創作の場であったことを改めて知った。

なぜ多くのクリエーターがこの雑誌から生まれてその後、多くのメディアで活動した人たちを輩出したのかがわかるような気がした。
新しいアートディレクションを持ち込み、そこにカメラマン、作家、イラストレーターなどにクリエイティブな新しい創造の場を提供したからだ。寺山修司、横尾忠則、立木義浩、竹中労、伊丹十三、三島由紀夫、五木寛之、筒井康隆、植草甚一、永六輔、篠山紀信など時代を映し出した錚々たる顔ぶれである。

僕は和田誠さんが好きだったこともあってずいぶん本も読んだし、映画監督作品である『麻雀放浪記』『怪盗ルビイ』など全部見た。
高平さんの紹介で何度もお会いしたし、一度は事務所を訪ねてエッセイをお願いしたこともある。高平さんが演出された和田誠さんの100冊の本の出版記念会にも連れて行ってもらった。このときその人脈の多さとショーの構成の素晴らしさには仰天したものである。

なにせ座った席の周辺が、加賀まり子、篠山紀信を始め有名人ばかり。記念会は確か高輪プリンスだったと思うが入口から和田さんの本が一冊目からずらりと並んでいる。そして司会はチャコさんだった。ステージには谷川俊太郎さんと共著の本の表紙のスライドが写り、いきなり客席にスポットがあたり、谷川さんが朗読する。

『people』という本が出ると雪村いずみさんが登場して「ピープル」を歌う、といった具合で本のテーマに添って中野ブラザースがタップを踊り、真田広之さんと小泉今日子さんが歌うなど次々に人々が登場した。おそらくどんなショーを観に行ってもこんな豪華なメンバーはそうそうに揃わないだろう。それくらいいろんな人たちが集まった。

和田さんの今も続く創作の力は『本の雑誌』という実験の場を生み出した。それにしても矢崎さんの編集ぶりはすさまじい。
お金がないなかでまるで憑かれたように次々と創作の場を生み出していく。反面、お金には無頓着で手形詐欺に会い暴力団に連れられて軟禁されたり、あるいは天皇制のことを紙面にしたことで日本刀を持った右翼に事務所に闖入されたりと波乱万丈なのだ。
創作メンバーもただならぬ人ばかりである。遠藤周作は「瀬戸内晴海(寂聴)の故郷徳島には、晴海こけしや晴海手ぬぐいが売られていて手ぬぐいをお湯にいれると下半身が透けて見える」など、あることないこと話して相手を激怒させ、それを編集が勝手に原稿を替えたと責任転嫁を平気でしたりする。三島由紀夫は、原稿をもらいにいくと警察署に連れ出し剣道着を着せられ剣道をさせられ、いきなり面を打たれて失神する、などといった具合で、まあ個性的というか尋常ならぬ展開なのである。

だが、それだけに面白い。才能の集まるところには集まるものなのだなと感心することばかり。その人たちがお互いにインスパイアすることでさらに創作に拍車がかかる。そこが雑誌の面白いところだ。
現在の雑誌で面白いものにぶつからない。というのも、ほとんどが既成の有名な人をメインに据えて予定調和的になったものばかりだからだ。それに新しいチャレンジの場を与える先鋭的なメディアがみあたらない。

「『話の特集』と仲間たち」を面白く読んだのはここに登場する何人かの人々の仕事の現場を見せていただいた方や、ご一緒させていただいた方がいるという理由もあるのだがやはり僕も長いこと雑誌作りに関わっていたからだ。雑誌の出会いのわくわく感が、この本には詰まっている。本を読んでいたら雑誌編集をまたやってみたいなあ、と思い始めたのだった。

■掲示板
●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食を訪ねる連載開始。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/


●「スローライフ スローフード 長寿の徳之島」のツアーが開催されます。
 〜ゆらしい島のスローライフ〜

□南の奄美諸島、鹿児島県徳之島を訪ね、手付かずの自然や昔ながらの文化を大切にする島の人たちとのふれあいを通じながら、都会の日常生活では味わうことの出来ない、この島に根ざした生活を体感するシリーズ第2弾!!
農家や海辺を巡り、地域の人々と触れ合いながらゆったりした時間の中で豊かな食を楽しみます。
 
前回の旅の様子はHPにて紹介しています。
http://www3.synapse.ne.jp/mcmaru/yurashii01.htm
□日程:2005年6月9日(木) 〜6月12日(日) 3泊4日
□一人125、000円(会員)、一般127、000円。
□旅行費に含まれるもの:受講料、宿泊費(3泊)、航空運賃、貸切バス代、食事(朝3回、昼3回、夜3回)
□利用予定宿先:サンセットリゾート 0997-85-2349

◇内容
徳之島の人々とふれあい。サトウキビ収穫体験。吉玉誠一さんの珈琲園訪問。無農薬野菜の作農。馬鈴薯収穫体験。黒糖づくり体験。ゆっくり海アシビ。郷土料理の昼食。天然塩作り体験。珊瑚
礁の探訪と島の魚での手料理宴会(漁なくさみ)など。

企 画:朝日カルチャーセンター 電話:03-3344-2041 担当:大野
協力:ニッポン東京スローフード協会、
観光かごしま大キャンペーン推進協議会
旅行主催:日本通運(株)首都圏旅行支店日本通運
電話:03−6251−6356 担当:蔦谷(ツタタニ)・名塚
http://www.acc-web.co.jp/sinjyuku/0501koza/G0201.html


■好評発売中!!
『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)
金丸弘美著 絵・唐仁原教久
定価:1300円 四六版 176頁

・NHKラジオ『私の本棚』の連続朗読番組になったほか、
新聞、雑誌、ラジオなど90媒体で紹介されました。
本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

●金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html

・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/