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  旅日記 no.048
「地元の本物の味、本物の食、農業を繋ぐ、ネットワーク」
2005年7月13日
「地元の本物の味、本物の食、農業を繋ぐ、ネットワーク」

 僕の生まれは佐賀県唐津市。今年は、もう6度くらい帰っている。いろんな声がかかるからだが、今回は、佐賀県栄養士会の食育テキスト「佐賀発 食で育む 生きるちから」の発刊記念会に呼ばれた。昨年、「佐賀県食育推進研究会」が発足し、その発起人として要請があり、僕も参加し、テキストにスローフードについて執筆したといういきさつがあったからだ。

佐賀でいくつか行いたいと考えていたことがあって、少し早めに入った。一つは、農民作家で知られる山下惣一さんにお会いすることだった。山下さんの家は、唐津市の漁村部の湊にある。まだ昭和30年代の町並みが残る静かなところだ。山下さんの名前は、よく存じあげていたが、初めてお会いしたのは、3年前で、アイガモ農法の古野隆雄さんに誘われて、作家の島村菜津ちゃんと、訪ねたのだ。

今回は、唐津市青年会議所のイベント「食農祭 からつ大好きフェスタ」というのがあって、山下さんと僕とが対談をすることになっている。それで事前に打ち合わせをしておこうと思ったのだ。というのも対談時間が50分しかない。これは、対談後、午後は埼玉県で「教職員のための食育&スローフードディナー」という、シンポと食事会に参加することとなっていて、つまりは、唐津から埼玉まで移動するという事情があるからなのである。それで、対談のポイントを明確にしておこうと考えたからだ。

それと山下さんの本「百姓が時代を創る」(七ツ森書館)、「ざまみろ 農は健在なりだ」(家の光協会)、「村の本音百姓の本音」(全国農業会議所)を読んで、いくつか尋ねてみたいことがあったのだ。山下さんは、地域自給と、村の産業のことを書いていらっしゃる。そのなかに湊の直売所「みなとん里」というのがあって、奥さんたちの主婦グループが「かあちゃんまんじゅう」を作って販売しているという。そこをまず観てみたかったのだ。

午前中、「みなとん里」を見学した。こじんまりした木造の建物で、湊の農産物や魚類がたっぷり。鮮度よく、地域のものでいっぱいで好感がもてた。感心したのが、「日本ミツバチ」の蜜があったことだ。一般に出回っている蜂蜜は、ほとんど外来種の西洋ミツバチの蜜。在来の日本ミツバチの蜂蜜は珍しいのである。

山下さんを訪ねると、快く迎えてくださって、いろいろと話した。最初はお茶、すぐに僕は焼酎、山下さんはビール。しばらくして近所の寿司屋に移り、しこたま酒を飲んで、ひさしぶりに酔った。もう完璧な唐津弁である。

「あんたな、なんで唐津やのうして、奄美・徳之島ね?」
「そら、女房の両親が島の出身ですけん」
「唐津は、愛しとらんとね?」
「愛しとります。ばってんが、今ん唐津は、町並みは壊れかけとるし、農作物も地元で食べんごとなってるですて。山下さんの本にもあったばってん、大根おろしの輸入冷凍もんの、唐津も売ってあるてしってびっくりしたですたい」

「昔は、中町には、魚や野菜の行商の人たちの集まって、市のできとったね。あれこそが、地産地消たいね」
「はい。それこそ、今、いっているファーマーズ・マーケットだったですてね。唐津くんちを調べると、昔は農村と連動して、商業がなりとったですて。じゃっけんが、唐津くんちは、農村のお世話になった人たちももてなしたし、料理も地元の食材を使った。まさに五穀豊穣を祝った」
「あんたな、五穀豊穣てな、なんか知っとるね?」
「米、麦、あわ、ひえ、大豆、そば・・・・」
「ま、いろいろ場所によって違うてね」

「ところで『みなとん里』を見たら、日本ミツバチの蜂蜜のあったですばってん、あやんかごたるとば作りよらす農家ば、表に出して、表彰するごたる食の会ば、つくりたかつです」
「あんた日本ミツバチは見たね? よかとこ見つけたね」

「固定種の大根、天然の縮緬雑魚、七山のしゅんさいといったごたる、地元の本物の味、本物の食、農業を繋ぐ、ネットワークを作りたかとです。つまり、地域にしかないものこそが、ブランドであり、観光客が欲しいものであり、よそからでも食べにきたいという、観光でもあると思うとです。古川県知事にも話しました」
「そら面白か。どうね、今度の対談は、地域自給こそが商店街活性化に繋がるというテーマで」
「はいそれでいきまっしょ」
「唐津弁でしゃべるばい。よかね」

つまり山下さんと会う目的以外に確認したかったことは、スローフードのような、地域のオリジナルな食のネットワークを作ることを、全世界40カ国の農業の現場を、また日本の農業の現場を、みてきた山下さんに、面白がってくれるか、確かめてみたかったのだ。
こうして、翌日から、町おこしをする小島紀代世さん、肉の販売をする白濱美保子さんの力をかりて、あちこちの農家や料理店、加工の店を巡り、佐賀独自のネットワーク作りの話と、仲間になってくれそうな人々に声をかけ始めた。いよいよ、佐賀で、食の集いの発足である。

■掲示板
・7月16日(土) 「からつ大好きフェスタ」参加
シンポジウム 10:10〜11:00 
テーマ:「食と農が人を育て、スローな時代を創る」
講師:山下惣一・金丸弘美
会場:唐津駅前 唐津市ふるさと会館 アルピノ
主催:唐津青年会議所 

・毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/

・雑誌『一個人』(KKベストセラーズ)8月号(6月25日発売)・「五穀 元気の源 雑穀ご飯」好評発売中。

・雑誌『ソトコト』(木楽舎)8月号(7月5日発売)、「八王子ふたば保育園の楽しい給食」を紹介。好評発売中。

・好評発売中
『メダカが田んぼに帰った日』(学習研究社)
田んぼにメダカやサギや白鳥がやってきた。自然を呼び戻した田んぼの物語。本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

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山下 惣一 著 大野 和興 著 七ツ森書館 版