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  旅日記 no.052
「レザンジュ 春き」と「佐賀県の在来作物」
2005年8月10日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「レザンジュ 春き」と「佐賀県の在来作物」について

佐賀県で食のネットワーク「オリザ・ジャポニカ・クラブ」を立ち上げて、一回目の食事会を8月21日に予定している。一回目に選んだのは、佐賀県杵島郡白石町にある「レザンジュ 春き」である。
民家をそのまま使った料理店。料理店といっても、持ち主がお花とお茶の先生だということで、もともとは趣味から始まったもの。それで、正式に許可をとって営業を開始したのだが、火曜限定というところなのだ。

昨年、従姉妹(山口裕子)の紹介で店に出向いてとても気に入った。
まず雰囲気がとてもいい。木造の昔の家屋をそのまま用いていて、落ち着いたつくりなのだ。それに料理が素晴らしかった。素材を地域の、あるいは自分たちで育てた、旬のものを使った、創作和風料理である。器の用い方も品がいい。なにせお隣が有田、伊万里なのだから、それもうなづける。食事には、季節の花が飾られていて素敵だった。

一回目の会合に選んだのは、実は、「レザンジュ 春き」のような店を、佐賀県内で、いくつかチョイスをしてゆき、そこを私たちのネットワークが推奨する店として、拠点づくりをしたいからである。
おいしくて、景観に配慮して、地域素材を使い、その土地ならではの店である。こういう特定の店を選んでいくというのは、既存の団体では、実はなかなかできにくい。みんな平等にとなるから、結局は、どこがいいのか、一般の人にも観光客にも結果的にみえなくなってしまうのだ。

21日の食事会は、昼と夜の2回。30名づつの予約制。まずは理屈ぬきで、食を楽しむことから始めたいと考えた。呼びかけを行ったところ、昼間はあっという間に集まり、たちまち満員である。作家の山下惣一さん、スローフード・アワードの受賞者武富勝彦さんをはじめ、佐賀から多くの人が集まることになっている。県外からも、大分県から地域の食作りの参考にしたいと、申し込みがあり嬉しい限りだ。

この会では、僕たちのミッションをあきらかにするつもりだ。基本は、地域に根ざした本物の食を子どもたちに伝えることである。それと食文化と生物多様性を守り、発展させることだ。当日の配布資料として用意しているのが、「佐賀県の在来作物」のリストである。
在来種とは「固定種」とも呼ばれ、地域で昔から育てられ、種を採取して伝わってきたものである。ところが、現在は、海外のからの掛けあわせのF1(一代雑種)が主流になり、地域の伝統的な農産物が消えていっている。ぼくらの食べている農産物の約8割が、外来の種を使ってのF1といわれている。

例えば、大根であれば今は青首が、ニンジンだと向陽2号がというように、全国どこでも同じ品種。しかも味や個性が優先ではなく、大量消費流通に向いたものが栽培される。こうなると、海外の種の会社の独壇場になり、常に農家は種を購入しなければならない。おまけに私たちは、同じ味、画一化された料理を押し付けられることになる。まず、地域の個性が喪失してしまう。

在来の種の野菜復活で目覚しい進展をしたのが「京野菜」だ。現在、兵庫、大阪、京都、福島、福井、石川などが、在来の種の発掘とブランド化に力を入れている。岩手は雑穀に力を入れている。県や町なども力を入れており、予算もついている。ところが佐賀県は、まだである。佐賀は、米、イチゴ、キュウリの生産で有名だが、どちらかというと、大量の生産に眼目がいっていて、少量多品目多様の種には、力が入っていない。

「佐賀県の在来作物」には、「青うり」「女山だいこん」「ミズイモ」「カラグロ(芋)」「キノス(柑橘)」「ゲンコウ(柑橘)」「キャラ柿」「サカエモチ(もち米)」「三瀬在来(赤米)」「ツチグリ(きのこ)」などがある。いずれも、ほとんど出回っていない。誰が栽培しているのか、今のところは、わからない。

昔のものがすべていいとはいえないが、しかし、ほっておけば確実に消えていく。これらを特定し、おいしく評価が高いものがあれば、地場の直売所で販売すれば、復活する可能性もある。あるいは、新たなフレンチ、イタリアンなどの料理家たちの手で、昔の素材がうまく活用できる可能性がある。あるいは成分分析によって、栄養価の高いものとしての評価が生まれる可能性も出てくるかもしれない。
 それが地域の個性を生むことになる。

これは魚介類も同じことである。海産物の輸入は、約47パーセンぼ半分が海外から持ち込まれる。呼子は、イカで有名だが、最近は、福岡から持ち込まれる。わざわざ福岡からイカの生き作り
を食べに来るというありさまだ。アジの開きもノルーウエーというも珍しくない。アサリやサザエは韓国産が多い。つまり、地域に住むものが、地域本来のものを再発見しなければ、地域そのものの農業や漁業、それをベースにした食文化がなくなってしまう。地域の素材あっての地域活性化であり観光であり、パーソナルと思うのである。それを伝える活動をしたいし、こどもたちに伝えたい。

2回目は、浜玉の栄養士さん福山隆志さんと浜玉中学の協力で、一般参加の公開給食を予定している。浜玉中学は、農家と連携して、地物の農産物を給食に使っているのだが、味噌も大豆から育て手作りを使うというものである。地域連携が素晴らしい。こういう取り組みがあるということを広く知ってもらいたいと話したら、福山さんが校長に話してくれて快諾を得たという。

山下さん、福山さんたちと話したのは「地元の本物の味を知っているものが、まず、いちばんまっさきに旨いものを食べようよ、という会ににしたい。食べたいという人がいれば、販売する直売所や、食べることができる店を紹介すればいい。それが結果的には、地域振興であり、観光事業でしょう」と言ったら、「それはわかりやすい」ということになった。いよいよ始まりである。

●第一回 発足準備会.楽しく美味しい食事会

・場所:「レザンジュ 春き」
佐賀県杵島郡白石町大字福吉2009−1 電話0952-84-6201

・日時: 8月21日 日曜日 募集人員 30名    
・夜の巻・午後17時〜 参加費2500円 夜の巻参加希望( )名
先着順にて定員になり次第、締め切らせて頂きます。

・ご予約は、FAXにて8月15日(月曜日)までに
FAX0955-42-6435 またはE.mail:koubou_moe@yahoo.co.jp
白濱美保子 宛にお願い致します。

■掲示板
●スローフードのすすめ 食をテーマにした地域活性化のすすめ
金丸弘美&三國清三 in HIDA 講演と公開対談

・2005年9月6日 火曜日 19:00〜
古川町総合会館 大会義室 入場無料

― 講 演・対 談 内 容 ―

・第1部 金丸弘美講演会
「今、食の安全・安心と、食文化の見直しが始まった」
・スローフード運動〜食をテーマにした地域活性化のシステム。
・日本における各地の新しい町づくりの取り組みの具体事例。
・なぜ、食における取り組みが必要とされているのか。

・第2部 三国シェフと金丸氏による公開対談
「三國シェフの食べ物哲学と食育」

主催:飛騨市 お問合せ:産業経済部商工観光課
 TEL:0577−73−7463

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『スローフード・マニフェスト』(木楽舎=きらくしゃ)
金丸弘美、石田雅芳 共著 定価:1700円
(全国図書館協会選定図書)

 スローフード協会は110名のスタッフを抱えるNPOです。
彼らが小さな生産者を世に出し、それをプロモートすることで、
経済性を生む社会貢献活動をしています。イベント、出版、大学
運営、学校教育など、多彩な活動をしています。
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