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  旅日記 no.062
「渡辺えり子さんの風回廊」
2005年10月19日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「渡辺えり子さんの風回廊」のお話

久しぶりに渡辺えり子さんの舞台を観にいった。彼女が劇団3○○を解散して、再結成した「宇宙堂」の5周年記念ということもあったし、うちの長男・知弘にえり子さんの芝居をみせて、新しい世界をのぞかせたいと思ったということもある。

世田谷の三軒茶屋にあるパブリックシアターでの「風回廊」は、さまざまな風にのってくる夢や過去や死や思い出や、世間の噂、さまざまなもろもろが、一つの、まるで、また大きな風になって吹いていくかのような物語である。

いろんな登場人物が交錯して、またいくつもの物語が織り成して、だからどうと説明がしにくいのだが、忘れ去られたタバコ工場団地と、それと、団地の近くにあるらしい、さびれた、リゾートの「紅ホテル」というところにいろんな人が集まって、そこに過去も未来も夢も折り重なって、話が展開する。

なんだか、バブルまでの日本の、一つの象徴のようなタバコ団地とリゾート。それはタバコが、奨励され、そこに多くの人々と文化があったはずなのだが、またタバコ農家の繁栄もあったはずだが、それは、今となっては、嫌煙と健康害もあって、どこか忘れされれようとしている。そうまるで煙のように。

リゾートも繁栄の証であったはずが、今では、閉鎖しかかり、地方のお荷物になっている。そこに、人生のどこかではぐれてしまった人たちが、集まってくる。小さい頃、忍者ごっこをして、行方しれずになった女の子。浪曲師の息子で、だがアコーディオン弾きになりたくて、なぜかベニスにいった音楽少年。

「紅ホテル」に、「日が暮れない」と、永遠に黄昏のない人生を夢見てきた女性。「ピース」のタバコに、まったく害のない「ピース」を開発を夢見た男。などなど、さまざまな人が登場する。

それはまぎれもなく、えり子さんの夢物語ではあるのだが、それがときに、まぎれもない夢のように、あるいは、ドリームのように、あるいは思いでのように、重なっている。

舞台の台詞ですごいなというのがあった。「少年は夢をみるのだから、寝かせて夢をみさせることはない」というようなものだったか。
たしかに、僕らも小さい頃、とんでもない想像の夢を見た。それは本気で空を飛んだり、変身したり、あるいは山や海を冒険したり。
それは夢だったか、夢想だったか、現実であったか、幻想であったか。でも、どれもが真実で真実でなかった気もする。

だが、今はどうだろう。現実においては、現実がすべてで、もう少年のような、現実の延長線上でありながら、まぎれもなく現実以上の真実の夢には、とうてい滑り込めない気がする。ところがどうだ。
今、うたたねの中では、どこか知らない町に行っているようなことがある。大人は、夢の比重が高くて、実は大きな価値を占めていると思い込んでいる現実の方が、薄っぺらなのかもしれない。

そんなことを思わせた舞台だった。僕はえり子さんの言葉の広がりと、舞台の広がり、夢や現実や、遠い向こうの風の便りが、ひとつになって融合する手腕にいつも感心してしまう。

とくに今回は、アコーディオン、三味線、ギター、舞踏、タップなど、ちょっとふだんにないコラボレーションがあって、そこも面白かった。

劇場では、久しぶりに松金よね子さん、田岡美也子さん、小田島雄志先生と再会。楽屋では渡辺えり子さん、野田秀樹さんの事務所の社長北村明子さんと再会した。かつてよく会って、飲んだり、食事をしたりした人たち。

もうひさしく会ってなくて、さらりと挨拶を交わしたときに、さまざまな、もう遠ざかった、昔のことも思いさされて、それが、まるで、えり子さんの舞台の延長のように、過去からやってきた登場人
物の一人のような気分になったのだった。

●お詫びと訂正
10月5日配信「唐津市浜玉中学校の公開学校給食」のなかで、「小島紀世代さん」とありましたのは「小島起代世さん」の間違いでした。
訂正をさせていただくとともに、深くお詫び申し上げます。

■雑誌の紹介
・栄養士さんたちの専門雑誌『食生活』の小特集を書きました。
テーマ:「いま、身近になったスローフードを考える」
『食生活』11月号(フットワーク出版)
電話03−5776−6633 http://www.shokuseikatsu.jp/

・「ソトコト」(木楽舎 電話03−3549−1011)
http://www.sotokoto.net/top.html
「ソトコト」では毎月全国の学校給食を紹介しています。

■テレビの紹介
・唐津地区の唐津ケーブルテレビで「浜玉中学校の公開給食」が、特番として放映されます。
 11月14日(月曜日)〜19日(土曜日)の毎日
 放映時間(1日5回の放送があります)
 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00

・再放送
 12月5日(月曜日)〜10日(土曜日)の毎日
 放映時間(1日5回の放送があります)
 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00
 http://www.people-i.ne.jp/

■講演のご案内
・11月12日(土曜)午後2時から4時
 自然循環型農業と地域活性化「食とこれからの地域づくり」
 講師:金丸弘美

・場所:千厩公民館
 岩手県一関市千厩町千厩字館山50番地 
 電話0191−52−2309
・主催:千厩自治会協議会

・問合せ:一関市役所千厩支所地域振興課内 
 担当・金野 電話0191−53−3928

■「唐津くんち」の本 絶賛発売中!
・『えんや 写真集・唐津くんち』(写真・英伸三 家の光協会)
・『えんや! 曳山が見た唐津』(無明舎出版)
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●金丸弘美正式ホームページ
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・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/

●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
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