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  旅日記 no.065
「イタリアのスローフード」
2005年11月9日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「イタリアのスローフード」のお話

イタリアのスローフード協会国際本部にいる石田雅芳君の講義を聴きに学習院女子大学に出かけた。というのは、大学で半年間にわたるスローフードの講座が毎週一回の月曜日に行われているのである。
後半は、国際本部のジャコモ・モヨーリさんたちも来ることになっていて、イタリア本部の活動が紹介されることとなっている。

実は、僕はイタリア在住で日本人初のスローフード協会のスタッフとして活動している石田君との共著『スローフード・マニフェスト』(木楽舎)という、イタリアのスローフードの組織と運営内容を紹介する日本でも初めての本を出した。日本人で初のというのは、彼らの組織のNPO団体としての活動を紹介した初のものいう意味である。

もっともスローフードを有名にしたのは、もちろん島村菜津さんの『スローフードな人生!』(新潮社)だが、これには、スローフードのかかわる各地の食のことがたくさん出てくるののだが、NPOとしての組織活動としては詳細に触れられていない。だからどんな組織なのかいまいち理解ができなかったのだ。

そこで素朴なスローフードの質問を含めて、イタリア本部のあるピエモンテ州ブラに行き、石田君の案内と通訳で、本部スタッフ30名ほどにインタビューを試み、農家も巡って、彼らの活動の詳細を共著でまとめたのである。イタリアにいってわかったのは、スローフードは食べ物のことではないということ。NPO組織であって、その活動は、大型のイベント運営から大学、出版まで、おおがかりなプロモーション事業をする団体だということである。

日本にもNPOがたくさん出てきたが、スローフードのように140名もの専任スタッフを抱えて、しかも給料を払い、食文化という事業を行っているところはみあたらない。僕がもっとも関心をもったのは、彼らの出版活動である。すでに60点も出ているが、NPOで会員を組織することで、みずからの哲学に忠実な本を出していくことができる。しかも非常にグレードが高い。その本が彼らの運動とうまくリンクしている。

彼らの本で、もっとも感心したのが、「イタリアのオステリア」である。スローフード協会が推薦するオステリア、日本でいえば、小さな地域の食を出すレストランみたいなものだが、会員おすすめの全国1700店舗を紹介するガイドブックである。イタリアに行くと推奨マークのある店舗があるが、それが出版と連動してる。ガイドブックは毎年更新され、なんと年間8万部も売れている。こんなNPOと連携した本作りは、日本には見当たらない。

石田君には、出版部からオステリアでの食事まで、いろんな取り組みを案内してもらい、さまざまなスローフードの活動を知ることができた。そうして本も出すことができ、その縁で、僕も学習院女子大学で講義することになったのである。もっとも僕はイタリアの話ではなくて、日本の各地の活動を2回にわたって話すことになった。
というのも、現在、ほぼ毎週、農家の取り組みから、学校給食まで、さまざまな各地の食の活動を見ているからだ。

まずは、僕の講義の前に事前にどんな感じの講座なのか、またイタリア本部の新しい動きについても知りたかった。なにより学習院女子大学という名門校がどんなところか、好奇心もあって、でかけてみたのである。こんな機会はめったにあるものではない。

それに僕はときどき、あちこちの講義を聴きに出かけることも少なくない。いろんな学習が面白いのである。最近はありがたいことに、多くの知り合いから各地のシンポや学集会の案内メールが届くので、興味があれば、出かけて受講するようにしている。そういった
ところで、会う人たちは、ふだんの付き合いでは、会えないことが多いから、なおさら興味がわくのである。それに僕自身も講師で呼ばれる機会も多いから、どんな話し方が面白く展開できるか参考にするためでもある。

学習院女子大学の場所は高田馬場から車で5分ほどのところにある。
レンガの塀に囲まれたところで、中に入ってみると、外の喧騒とは嘘のように異なり、じつに静かで緑多く、清潔なキャンパスで、なんとなく気分が落ちついてしまう。教室に行く前に担当教授の品川明先生の研究室で、今回のコーディネーターである磯部泰子さんとお会いした。

石田君の講義は、3回のうち2回受講した。おさらいという面も多かったのだが、彼の紹介するスライドでは、知らない場面がいくつもあって刺激になった。なかでもあらためて紹介された「スローフード 食の大学」の、大規模な450年前の当時の避暑地を使った広大ない敷地にある全容。やはり由緒ある建築物を使った「マスターズ・オブ・フーズ」という食の学習教室などの設備と運営である。
こういったスローフードの学習活動が、じつは事業内容なのであるが、日本では、スローフードの活動は、まだほとんど知られていない。いまだに「郷土料理」とか「ファストフードの反対」とか「ゆっくり食べること」などと思われている。

僕の願いは、スローフードの戦略と組織運営、彼らの運動哲学を理解し、それを広めること。それによって、日本の地域活動の糧として、日本ならではの食文化の継続をはかりたいと思っているのである。僕は石田君の授業の後、改めて、スローフードの活動について、時間ある限り話あった。それは楽しい時間となった。


■雑誌特集
・『クロワッサン』673号 11月25日号(11月10日発売)
「全国版 おいしい体にやさしい ほんものの味をお取り寄せ」

巻頭特集で、どんと9ページ。田沼敦子さん、冬木れいさん、そして金丸弘美の3人が全国から選んだ、蜂蜜、パン、ジャムからお茶、お菓子、ご飯のあてまで、試食をして大公開。

・『助産雑誌』11月号(医学書院)
「特集 食事指導に加えたい スローフードの視点』
巻頭特集でスローフードの活動について書きました。

■講演会のご案内
●佐賀で「給食祭り」が開催されます。
・11月19日(土曜日) 9:00〜16:30
場所:アバンセ(佐賀市天神3−2−11)
電話:0952−26−0011
主催:佐賀県教育委員会・佐賀県学校栄養士会
対象:県内小中学校の児童生徒とその保護者および県民・学校
関係者
当日は調理実技、展示、農産物の紹介、栄養相談などがあります。
14:00から「食育」の講演とシンポジウムが開催。
基調講演:「これからの食を考える」 講師:金丸弘美
シンポジウム:「食育シンポジウム」
・学校関係者、PTA、学校栄養教諭他。金丸も参加します。

問合せ:0952−25−7234
佐賀県教育庁保健課

●山梨県甲府市で「健康長寿の会」が開催
日時:11月26日(土曜日)13:00〜15:45
場所:山梨県県立文学館 甲府市貢川1−5−35
   電話055−235−8080
主催:山梨県、健やか山梨21推進会議
参加予定者:一般関係者、健康団体、行政関係者など500名
大会テーマ「健康長寿をのばそう〜健康づくりは食育から」
1・知事表彰
2・講演:「健康づくりは食育から」講師:金丸弘美
3・アトラクション 体操


■金丸弘美のおいしいおとりよせの本 絶賛発売中!
『本物の味 産地直送ガイド』(廣済堂出版 1997)
『おいしくて安全な食べ物ガイド』(廣済堂出版 1998)
『食材宝庫九州 農水産・加工品取り寄せガイド』
(西日本新聞社 1999)
『産地直送おいしいものガイド』(講談社文庫 2000)
『こだわりの有機食品産直ガイド』(日本文芸社2001)
『東京おいしい野菜ガイド』(情報センター出版局 2001)
『からだがよろこぶ自然食2002』(学研 監修 2002)
『本物を伝える 日本のスローフード』(岩波書店2003)
『ニッポン東京スローフード宣言!』(木楽舎2004)
本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/

●金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html
・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/