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  旅日記 no.072
「ゆらしぃ島のスローライフ」
2005年12月28日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「ゆらしぃ島のスローライフ」について

 僕が農村に行くようになったのは、15年前からだった。それは、保育園に子どもが通い始めて、周辺にアレルギーの子どもが、すごく多いことを知ってからだ。子どもの3分の2がアトピーなのである。
そのことを妻・早苗に話したら、早苗自身が高校生の頃、重度のアトピーで、ステロイド剤の使用で肌は黒くなり、頭は白髪となり、車椅子生活をするほどだった、と知った。そうして20歳までは生きられないと医者に言われたという。

当時、早苗は家族とともに鹿児島から移住し、大阪に住みだした頃、環境の激変、食生活の変化が体を変えてしまった。当時は万博の頃で、急激な都市化と工業化で、光化学スモックが発生した。ダイエーができ、輸入冷凍食品や安い輸入農産物が販売され始め、インスタント食品がもてはやされた。ファストフードや、ファミリーレストランが相次いででき始めた。

僕らは、まさにその時代に育ったわけで、インスタントや冷凍食品や、コーラなどが素晴らしいと宣伝され、それを盛んに食べた世代なのである。しかし、食と環境の激変は、彼女の体を蝕んだ。姉・大ぞの千恵子が知り合った栄養士さんがきっかけで、食から改善するということが始まった。それは、できるだけ、昔の日本食を取りいえれることだった。そうして、早苗は元気を取り戻した。

そんなことを知ってから、アトピーの子どもたちを抱える親や、アトピーに詳しい先生などずいぶんと訪ねた。そのなかで、私たちが食べる日常の食べ物、ファストフードやコンビニのインスタント食品を始め、多くのものが、健康被害をもたらす要因になっていることを知った。

そもそも僕自身がもう何年も、食を生み出す畑や田んぼのある風景から遠ざかっている。そこで、田んぼに行ってみようという活動が始まった。食べ物は現場からみないと理解できない。それは、僕の家族や子どもたちに、へんなものを食べさせたくない。僕たち自身の健康ということを考えたからだ。そうして千葉県の田んぼに行ったことを皮切りに、北海道から沖縄まで出かけることになった。

2001年から早苗と子どもたちは、健康と環境を考え、早苗の両親の故郷であった奄美・徳之島に移住した。そのなかで願ったのは、徳之島に、僕が全国のネットワークで知り合った、多くの地域活動を島に繋ぐことだった。健康を考えて島に移住したものの、島は環境が変り始めていたからだ。

畑の整備で景観が崩れたり、珊瑚が死んだり、島にも多くの輸入食材が入って、昔の地域の食が失われ始めていたのである。そうして若い世代は、本土と同じ食生活になり始め、健康被害がはっきり出始めていた。沖縄と同様に、若い世代に生活習慣病が、広がり始めているのである。おそらく、このまま進めば沖縄も奄美も、あと20年もすれば長寿はいなくなるに違いない。

徳之島での、昔ながらのサトウキビからの黒糖作りや、サンゴ礁からの塩作りを雑誌の『オブラ』(講談社)の取材から始まり、『ソトコト』(木楽舎)での島の柑橘タンカンといった取材、BSでのテレビロケなどの機会を利用して、島の失われつつあるものを、紹介していくことが始まった。その間、島での勉強会や懇談会、講演などにも呼ばれなんども参加した。そうして、今ある島の環境こそが、もともとあるものが素晴らしいものであり、島の観光や活力につながるものであることをなんども訴えてきた。

そのなかから、すこしずつ、共鳴する人たちが現れた。なかでも、大きなきっかけとなったのは、学研の編集長・大西由美子さんが、僕にエッセイを書くことを強く薦めてくれて『ゆらしぃ島のスローライフ』を、手がけたことだ。「ゆらしぃ」とは、島の言葉で「ゆっくり」という意味だ。早苗との島に行くまでのこと、島の人たちとの暮らしを書いたこの本は、雑誌やテレビやラジオに、なんと73媒体も登場した。

本に書いたことが、次々に実現した。島の自然の風景や農家と地域の食材を楽しむことができないかと書いたら、朝日カルチャーセンターの呼びかけで2004年に実現した。本土の農村のネットワークと連携すればいいのにと思っていたら、三重県のモクモク手づくりファームの呼びかけで沖縄に全国の農家のメンバー集まったときに、徳之島の人たちも参加してくれた。

泉重千代さん、本郷かまとさんの生まれた土地だから、きちんと長寿調査をして、そこから長寿を生んだ暮らしや食べ物を探して、そこから町おこしを始めればいいのにと言っていたら、これも2004年に実現した。そうして、島の保健センターの所長の澤佐和子さんを始め、地域の人たちが、自主企画による、島のツアーや、子どもたちとの地域の発見ツアーなどが誕生した。また、先進地視察で、モクモク手づくりファームに紹介された、高知の馬路村農協や、福岡県のぶどうの木などに、島の人たちが訪ねてくれる機会も生まれた。

もっと島の農産物を見直して、本土のプロの人たちと連携すればいいのにと思っていたら、横浜の櫛澤電機の澤畠光弘さんが、ケーキの木村さち子さん、パンの加藤晃さんを、島に連れてきて、農業高校の加工所を開放しての、農家と高校生との、島の食材を使っての、加工品作りも実現した。
そうして徳之島の食材の塩や黒糖を使ったパンも生まれて横浜で「幕末アンパン」として売れ始めた。

こんななかから、僕は、今年、鹿児島県からの依頼で「あまみ長寿・子宝プロジェクト」の委員に推薦され、奄美の町おこしに参加することになった。ようやく地域の人たちと、地域の活動と、県の動きと、重なり始めた。
2006年は、2月に奄美で会議が行われ、住民参加で、政策作りが始まる。
また、徳之島では、地域食材を使ったレストランや、直売所の展開も始まるはずである。2006年は、これまでのものが、一つにつながる。そんな期待で夢がふくらんでいる。

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・農業や漁業や田舎暮らしをしてみたいという人のための情報雑誌が、国の機関である「全国農業会議所」から発刊されました。

「農林漁業就業・ふるさと情報 イジュウ・インフォ iju info」各地の農業や漁業での働き手を求める地域の情報や田舎暮らしなどの、県の窓口や各地の体験情報などが掲載されています。

年4回発行で、1月、5月、7月、10月、1月に出ます。
申し込むと無料で送ってくることになっています。

http://web-iju.info/から、またはFAXから申し仕込むことができます。

●問合せ先:全国農業会議所iju infoメディア・チーム

105−0001東京都港区虎ノ門1−25−5
虎ノ門34MTビル 
電話03−5251−3907 fax03−5156−0363

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■好評発売中!
『ゆらしぃ島のスローライフ』(学習研究社)
 金丸弘美・著 絵・唐仁原教人

奄美・徳之島に移住した家族と島の人々との物語。
第10回ライターズネットワーク大賞受賞。
NHK総合、NHK FMで連続朗読番組として放送。

「この本は、スローフード、スローライフに応える
実践的教典である」(東京農業大学教授 小泉武夫)
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●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/

●金丸弘美正式ホームページ
http://210.255.173.147/tml/kanamaru/kanamaru10.html
・ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
・日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会http://www.nt-slowfood.org/