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スローライフ旅日記
各地の食の取り組みや地域活動、本や映画のことを紹介
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  旅日記 no.114
「カボスとおにぎりを使った味覚の講座」
2006年10月24日
こんにちわ、金丸弘美です。
今日は「カボスとおにぎりを使った味覚の講座」のお話

 竹田、佐伯、唐津、別府、福岡、平戸、千葉と、めぐって、ようやく東京に10日ぶりにもどった。この間、講演や講座やシンポジウムなどをしたのだが、ほぼ連日の移動。よくアメリカ映画で、たとえば『グレン・ミラー物語』から、現在の『レイ』にいたるまで、必ず巡業の場面が入るのだが、アメリカ大陸の移動を考えると、こんなものじゃないんだろう。ちょっとした、旅芸人にでもなった感じだ。

不思議と疲れていないのは、各地で、すごい手ごたえを感じているからだ。テーマは『食育』と『食からの地域再生』である。全国の事例を具体的にパワーポイントで紹介しながら、現在の地域再生や農業行政の課題にもふれつつ、具体策をみつけるという話をしている。僕は、評論家でもコンサルタントでもないから、できるだけ足で歩いて、小さいながらも実践を交えながら、組み立てていくという手法をとっている。

なかでも一年がかりでおこなっている竹田市と佐伯市は、具体的なワークショップという形の展開を始めたのだが、その活動が、大きく動き始めて、とても感動を覚えた。竹田市では、竹田南高校での、大分県の名産のカボスを使っての味覚講座を行った。この講座は、保健課健康増進課の堀田貴子さんが、学校をくどいて、カボス農家での収穫体験、カボスでのゼリーとクッキー作りの事前事業を作り、それから、僕を交えてのワークショップという三段構えである。

しかも、竹田市農林畜産課営農係の前原文之さんが、大分のカボスの品種からその特徴、歴史、ほかの柑橘との違いなど、カラーで、テキストまでが作っていただいた。授業のティスティングでは、カボスの3品種、ゆず、シークワサー、すだち、レモン、穀物酢を、比較した。ここで面白かったのが、男子生徒とのやりとりだ。

「どうでしたか?」
「竹田のカボスは酸っぱかったです」
「酸っぱいって、どんな酸っぱさ? 恋も酸っぱいときがある」
「はい、恋の味がしました」
「恋している?」
「むちゃくちゃ恋しています!」

 教室は、どっと笑いと感動であふれた。それだけで、もう成功だと、思ったものだ。僕らは、1+1の回答をもとめていない。豊かな表現や、個性を味覚から引き出すことをしているのである。
テキストを作成した前原さん、講座を企画した堀田さんも同じ考え。地域の個性を食を通して見つけたい。個性があって初めて、地域が生きる。講座がおわって、学校の理事、校長、担任の先生と話したら、発言した子供たちは、ふだんは引っ込み思案で、手を挙げて話すことはほとんどしなかったそうで、今回の講座と生徒たちの表現にびっくりしたとのことだった。嬉しい一言だった。

竹田の後は、佐伯市に行った。ここでは、前回企画を打ち合わせた乳幼児や幼児を持つお母さんたちのワークショップ。大分県佐伯市福祉保健部健康増進課を中心とした「食育セミナー」の「四季と旬と人をつなぐおむすび講座」である。地域の最上の旬の食材を使って、おいしいオニギリを作ろうというものだ。一回で4種の具材を使い、毎月一回で、半年間、24種類を作る。それで旬と地域の味わいを伝えようというものだ。

企画の始まりは、保健係の河村昌江さんの小さなお子さんを持つお母さんにどう食育を伝えたらいいか? との相談からだった。
小さなお子さん持ちのお母さんでは、なかなかじっくり話は聞けない。そこで、子供の健康に直接関係がある砂糖の取りすぎやジュースの問題など簡単な紙芝居と、いろいろ言うより、地域の最上の食材でオニギリを作って、みんなで食べようと、いうことにした。

最高の食材をとお願いしていたら、河村さんと、保健師の河野幸代さんの手で、佐伯の新米、天然塩、ちりめん、芋、きな粉、梅干など、佐伯の地元で採れたものが、全部、現場に行って、顔写真入りでインタビュー集が作成されていた。しかも当日、受付から調理場まで、ススキやコスモス、柿、栗などがディスプレィされている。黒板には、動物の親子たちが食事をしている楽しい絵までが飾られていたのだ。このおにぎりの会、大好評だったのは言うまでもない。

■新刊のご案内
全国を巡ったなかで、新しい地域の動きを一冊にしました。
テーマは「食からの地域再生」。各地の具体的事例を紹介します。
今年、食をキーワードにした4冊目の単行本です。乞う!ご期待。

「日本のスローフード 食の未来の先駆者たち」
金丸弘美著 コープ出版 定価1365円
ISBN4-8332-244-8  11月20日発売予定
電話03-3497-9198 FAX03-3479-6348

◎主な内容
・スローフードってナニ?
・消費者を巻き込んだ都市農業(東京・練馬)
・東京の牧場で絞りたてミルクのティスティング(東京・八王子)
・埼玉県の農家を解放したグリーンツーリズム(埼玉)

・高校生が土日祝日に開くレストラン(三重)
・日本のブラ 大分県竹田市(大分)
・田園のある景観と農家を解放して祭りを作った 多古町旬の味産直センター(千葉)

・奄美に訪ねる長寿の島 ゆらしぃ島のスローライフ(徳之島)
・お世話になった人たちを郷土の料理でもてなす祭り 「唐津くんち」(佐賀)
・よみがえった300年の歴史の酒蔵(佐賀)

・秋田県が始めた地域全域を生かす食のプロジェクト(秋田)
・農産物の栽培からレストランまで町全体をデザインした 大分県日田市大山町(大分)
・大人気のファーマーズマーケット 「ポケットファームどきどき」(茨城)

・農業加工消費者教育までを一体化した「モクモク手づくりファーム」(三重)
・地域の漁師と連携して大繁盛のコンテナの寿司店(福岡)
 他。

コープ出版
151−0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷4−1−9 
電話03-3497-9198 FAX03-3479-6348

■テレビ放映のご案内
「Ageing japan」(生島ヒロシ司会):情報ワイド番組
番組コーナー:「金丸弘美のス農(ノー)フードな旅」
日時:全国の主要ケーブルテレビ120局で原則土・日
(週2回、月8回)繰返し放送。詳細はhttp://www.at-mie.tv/

◎全国「食」の活動は毎日新聞デジタル「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎ホームページhttp://www.jgoose.jp/kanamaru/
◎ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
◎日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/