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  旅日記 no.118
「台湾の『九分茶房』」
2006年11月22日
こんにちは、金丸弘美です。
今日は「台湾の『九分茶房』」について

 台湾に行ってきた。義姉・大ぞの千恵子の健康づくりのメンバーとともに、台湾大学への訪問を始め、地元での講演と、食事を楽しむというツアーである。今回のセッティングを義姉にまかせていたことと、10月から毎日のように全国を転々としていたこともあって、準備も下調べもなく出向いてしまった。しかし、食事も楽しくいい時間となった。

なかでも候孝賢(ホウシャオシエン)監督の映画『非情城市』の舞台となった九分(きゅうふん)は印象深いものとなった。ここは、台北から2時間のところにある。もともとは鉱山の町として栄えたところだそうだ。当時の家屋が残っていたところが、新しい店が次々と生まれて観光地になった。急勾配の斜面と階段のある細い路地に、いくつものお土産や食べ物屋が並んで、独特の雰囲気をかもしている。

候孝賢監督は『冬冬の夏休み』という傑作があって、かつて映画評を書いたこともあって、急に親しみを覚えた。九分を舞台にした映画『非情城市』のロケ以来、120万人も来る観光地になったのだという。ロケの場であること、急勾配の町、当時の家を生かした歴史的建造物の町並み、そうして町からみえる、東シナ海の景観がうりものになっている。

もしかして、と思って、台湾から戻って、森まゆみさんのエッセイ『プライド・オブ・プレイス」(みすず書房)を再読したら、出ていた。九分は、本のなかで印象に残ったところで、訪ねてみたいと思っていたところだった。作家であり地域雑誌「谷中・根津・千駄木」の編集人でもある森さんは、台湾の人を何組も地元
を案内してきた。そうして今度は、台湾の人が森さんを案内したのが、九分だったのである。

森さんは、旧家屋の使い方が、古いものを生かしながら大胆にデザインしてあると褒めている。だが、地元の人と新しくきた人たちとで、地域の意識が離れている問題があったため、一軒あたり、200元を毎月徴収し、それをもとに階段の整備や、案内板の設置などを行い、街づくりをしているという。

いくつかの店をのぞいたのだが、古い家屋をつかったところは、古い町並みに合わせながら、石と木材を使い、どっしりと、まるで、ずっとそこにあったかのようにデザインがしてある。森さんの行かれた店とは違ったようだが、お茶の店『九分茶房』に数人で入った。この店が、斜面のところに建っていて、なかがくねっているのだが、しっかりした柱に支えられ、どっしりとした落ち着いた空間で、とてもいい雰囲気である。

最上のウーロン茶を飲むこととなった。美人とついたお茶。100gが4000円近くする。このお茶の飲み方が楽しかった。1人のチャージが100元。そうしてお茶を一袋まるまる購入するのである。大きな木の分厚いテーブルにみんなで座った。テーブルのそばの火鉢でお湯をわかし、係りの人がお茶の入れかた飲み方を指導してくれる。小さな、まるで杯のような可愛い茶碗で、少しずつ飲む。香りが、まるでジャスミンのように爽やかで、こころがなごむような気持ちのよさ。お茶を飲みながら、一時間ばかり談笑をした。

しっかりと時間をとってのお茶は、じつに心を和ませた。いいお茶の時間である。お茶の説明を聞いていたら、出された最高のお茶は完全な無農薬であるという。このために、虫のウンカがやってきてお茶を刺す。ウンカはお茶だけでなく、お米にもくる。ウンカが刺すと黒くなる。だから農薬を普通はかける。ところが台湾の美人のお茶は農薬をかけない。ウンカが刺すと、その唾液によって発酵がおこり、いい芳香を出すのだという。だから見た目はとても悪いお茶だけれど、その香りのよさで、最上のお茶になるという。

実は、日本では逆である。緑茶の多い日本では、葉に傷がついてはいけないと、多くの茶畑では、農薬をできるだけまく方向でお茶栽培が行われてきた経過がある。僕の知りあいで、美味しい最上のほうじ茶『加賀棒茶』を出している丸谷製茶場の丸谷誠一郎さんは、かつて、農薬をかけないで欲しいと農家に頼んだところ、農薬をかけないお茶は虫食いになりとても商品にはならないと、拒絶されことがあるという、話を思い出した。

そんななかで、台湾で、虫にあえてこさせるお茶があると知って、現地に行き、虫に襲われても大丈夫と確信を持ち、たとえ虫食いになっても全量を購入するということで、無農薬栽培のお茶作りを始めた、という。そうか、このお茶が、丸谷さんが話していた、
ものだったかと、数年前に聞いたお茶のエピソードに合点がいった。映画と森さんと丸谷さんの話が、台湾の『九分茶房』のお茶から、まるでただよいだしたかのようで、実に感慨深いひとときとなったのだった。

■「唐津玄海の食プロジェクトが始動!」

○ワークショップ「オイスターアラカルト」(味覚講座)
 唐津の美味い牡蠣(オイスター)を最上の日本酒とともに。
・日時  11月28日(火) 15時〜16時30分
・場所  旧唐津銀行 唐津市本町1513
・内容  唐津の各地区の牡蠣と他県の牡蠣の味覚講座
 天然物 高串産(肥前町)、浦産(唐津市)、串浦産(鎮西町)
養殖物 唐房産(唐津市)他県産 
・参加者 プロジェクト実行委員会+唐津市及び玄海町の関係者
・参加費 1,500円程度(予定)
・問合先 佐賀県くらしの安全安心課(0952−25−7096)

○シンポジウム「スローフードと地域活性化」
 スローフードの専門家や全国から選りすぐった実践事例の関係者が一堂に会して、食による地域活性化をテーマに議論するシンポジウムを開催。
・日時  11月28日(火) 18時〜20時30分
・場所  唐津市高齢者ふれあい会館「りふれホール」
(定員200名) 唐津市二夕子3丁目155−4
   電話:0955−72−9611
・内容 
・主催者あいさつ(プロジェクト実行委員会会長)
・唐津玄海の食プロジェクトについて(金丸弘美氏)
・実践報告 松崎了三氏(高知県馬路村ゆず販売戦略仕掛人)
      河野友通氏(大分県竹田市観光課)
      小役丸秀一氏(福岡県岡垣町ぶどうの樹オーナー)
・パネルディスカッション
テーマ「食による地域活性化」
コーディネイター 金丸弘美氏
パネリスト    実践報告者3名
・問合先 佐賀県くらしの安全安心課(0952−25−7096)

■最新刊のご案内!
義姉・大ぞの(義岡)千恵子と女性のための食から健康の本を出版。

・書名 体においしい「ごはんの力」
・著者 金丸弘美+義岡千恵子(イラスト 川口澄子)
・価格 本体1280円+税=1344円
・出版版元 KKベストセラーズ
・ISBNコード ISBN4-584-18975-7
・発売予定 11月15日(水曜日)

・問合せ先 書籍編集部 担当:寺林真規子
電話03ー5976ー9485 FAX03−5976−9289
・ご購入のお申し込み 営業部 
電話03−5976−9121 FAX03−5976−9240
 
■テレビ放映のご案内
「Ageing japan」(生島ヒロシ司会):情報ワイド番組
番組コーナー:「金丸弘美のス農(ノー)フードな旅」
日時:全国の主要ケーブルテレビ120局で原則土・日
(週2回、月8回)繰返し放送。詳細はhttp://www.at-mie.tv/

◎メールマガジンhttp://cgi.kapu.biglobe.ne.jp/m/9697.html
◎全国「食」の活動は毎日新聞デジタル「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎ホームページhttp://www.jgoose.jp/kanamaru/
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