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  旅日記 no.119
「田んぼの生きもの調査全国シンポジュウム」
2006年11月29日
こんにちは、金丸弘美です。
「田んぼの生きもの調査全国シンポジュウム」

11月26日にJAホールで行われた「田んぼの生きもの調査全国シンポジュウム」に出かけた。このプロジェクトは、田んぼを中心とした生物多様性と、田んぼを湿地としての野鳥を戻す試みである。田んぼに冬場に水を張る「冬季湛水水田(とうきたんすいすいでん)は、すでに千葉、新潟、茨城、福島、宮城などで試みられている。マガン、白鳥などが田んぼに飛来している。とくに宮城県田尻町は、農家はもちろん、宮城大学、東北大学を始め、行政、農政局、宮城県までまきこむ大きな広がりとなった。

宮城県田尻町の田んぼの試みは、世界でも画期的な試みに繋がっている。1998年に始まった秋の収穫後に田んぼに水を張りマガンを呼び戻す「冬期湛水水田は(別名「ふゆみずたんぼ」)。
蕪栗沼を中心に半径10キロ以内の農家の協力で行われている。
見事に野鳥を呼び戻し、2005年、蕪栗沼は田んぼとともに、水鳥の生息地として重要な湿地としてラムサール条約の登録地となった。

この自然循環型の田んぼの仕組みから、水田の生き物調査という地域の小学校での学習機能、鳥を観察するエコツアー、県、民間大学、環境省などの従来の枠を超えた田んぼの多面的機能への発
掘の協力体勢も生まれた。さらに田んぼへの直接支払い保証、JA全農、生協などの、環境を守る田んぼの米への販売支援までに広がっている。これまでの農業の水稲という形では、まったく見えなかった環境、また水田機能、環境支払い、エコツーリズムという新たな観光資源の開発や制度などが誕生しようとしている。

今回のシンポジウムの大きな目玉となったのは、コウノトリを田んぼに戻すことに成功した兵庫県豊岡市の取り組みの最新事例報告である。豊岡市は、農政課をなんと「コウノトリ共生部」と名称を改称して田んぼを有機栽培に変えるという大胆な試みをした。
このプロジェクトに田尻の田んぼに鳥を戻すことに導いた一人、かつて仙台科学館の学芸員で田尻高校の教師の岩渕成紀氏(NPO法人田んぼ代表)、それに稲作栽培の研究者である稲葉光圀氏
(NPO法人民間稲作研究所理事長)が参加しているということを初めて知った。

岩淵さんも稲葉さんも田尻にガンを戻すために動いた仕掛け人である。岩淵さんは、田んぼの生き物調査を早くから始め、野鳥を戻すための田んぼの湿地としての役割を研究してきた一人。今回の発表者の1人で、田尻のマガン飛来の観察と調査をしていきた日本の雁を守る会の呉地正行さんとともに、フィールドワークを実施し、科学的な視点を作り上げたものである。

その彼らの実施で行ってきたことが豊岡市ではさらに発展して、市全体の取り組みに広がった。農家での有機農業、その彼らに環境支払いという直接支払いの仕組み(ディカップリング)、コウノトリでの町のイメージアップ、高付加価値としてのお米の販売、エコツーリズムによる観光誘致、地場企業のイメージアップと経済効果が市全体で生み出された。この豊岡市の行政の試みによって、生物多様性の取り組みが、さらに広がるに違いない。実に素晴らしい。


■シンポジウムのご案内
毎日新聞社主催の都市と農山漁村の交流や地域活性化を推進するグリーンツーリズムのシンポジウム「農と食で地域を元気に」が開催されます。ぜひおでかけください。

日時 12月21日(木)午後1時〜4時半 入場無料
場所 如水会館(東京都千代田区一ツ橋2−1−1)
電話03−3261−1101http://www.kaikan.co.jp/josui/
・地下鉄東西線 竹橋駅下車 1B出口 徒歩4分
・地下鉄半蔵門、三田、新宿線 神保町下車 A8出口 徒歩3分

●午後1時〜2時   グリーンツーリズム大賞表彰式
●午後2時〜4時半  シンポジウム「食と農で地域を元気に」
・午後2時〜3時 鼎談
榊原英資(早稲田大学教授)
加藤一郎(JA全農専務)
徳岡邦夫(京都吉兆嵐山本店総料理長)

・午後3時10分〜4時半 パネルディスカッション
金丸弘美(食環境ジャーナリスト)
本田 節(農家レストラン「ひまわり亭」)
下條正己(農水省農村振興局都市農業地域交流室長) 
四方 洋(ジャーナリスト)
        
主催:毎日新聞社
《後援》農林水産省、国土交通省《協賛》ANA、キリンビール、
JR東日本、東京電力、東芝ソリューション、トヨタ自動車、
日本生命、ベネフィット・ワン
http://www.mainichi.co.jp/information/news/20061125ddm012040093000c.html

参加希望者は、はがきかファクスに郵便番号、住所、氏名、
電話番号、年齢、職業、参加人数を書き、
〒100−8051(住所不要)毎日新聞社「GTシンポ」係、
またはファクス03・3212・0405へ。
「MSN毎日インタラクティブ」
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/travel/green/
でも受け付けます。締め切り12月13日消印有効。
応募者多数の場合は、抽選で200人に参加証を送ります。
問い合わせは03・3212・2272(土日祝日除く10〜17時)。

金丸弘美
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■金丸弘美の食をテーマの話題の本!!
『メダカが田んぼに帰った日』(学研)
『HOME MADE ヨーグルト』(雄鶏社 共著)
『子どもに伝えたい本物の食』(NTT出版)
『スローフード・マニフェスト』(木楽舎 共著)
『本物を伝える 日本のスローフード』(岩波書店)
『ニッポン東京スローフード宣言!』(木楽舎 編著)
『フードクライシス 食が危ない!』(ディスカヴァー)
『伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘』(NAP)
『体においしい「ごはんの力」』(KKベストセラーズ 共著)
本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

■テレビ放映のご案内
「Ageing japan」(生島ヒロシ司会):情報ワイド番組
番組コーナー:「金丸弘美のス農(ノー)フードな旅」
日時:全国の主要ケーブルテレビ120局で原則土・日
(週2回、月8回)繰返し放送。詳細はhttp://www.at-mie.tv/

◎メールマガジンhttp://cgi.kapu.biglobe.ne.jp/m/9697.html
◎全国「食」の活動は毎日新聞デジタル「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/
◎ホームページhttp://www.jgoose.jp/kanamaru/
◎ライターズネットワークhttp://www.writers-net.com/
◎日本ペンクラブhttp://www.japanpen.or.jp/