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  旅日記 no.120
「少しは映画のことも」
2006年12月6日
こんにちは、金丸弘美です。
「少しは映画のことも」

「金丸さんの肩書きは『食環境ジャーナリスト』になっていますね。まぁ、ドンドン色々なことに手を伸ばして、いずれは他の肩書きも使うようにして下さい。たとえば、映画評論家とか。間口は広い方がイイですって。』と、最近、メールをいただいたのは、医者でエッセイストである向井万起男さん。

向井さんは、宇宙飛行士の向井千秋さんのご主人である。向井さんのエッセイは独特で、しっかり自分の主張をしながら、とてもしなやかで、ユーモラスで、かつ結構辛口なのだが、それが見えないほど、語りはやわらかい。こんなふうに書ければと、いつも思いつつ、つい文章は硬くなってしまう。

向井さんの指摘のように、このところずっと食で来ていたら、映画のエッセイを書く機会が少なくなってきた。ほんとうは、映画のこともときどき書きたいと思っている。幸いなことに、各映画会社から試写状が届くので時間があれば映画を観ている。『16ブロック』『イルマーレ』『ヘンダーソン婦人の贈り物』『プラウダを着た悪魔』『ダーウィンの悪夢』『マリー・アントワネット』『墨攻』『武士の一分』『007カジノロワイヤル』などがこの頃観たものだ。

最近で、もっとも印象的だった映画が3本ある。アイルランドの独立を描いたケン・ローチ監督の『麦の穂をゆらす風』、それにクリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』の二部作である。なかでも、イーストウッド監督の硫黄島の2部作は、これまでなかったアプローチで、アメリカ映画のなかでも異色のものだろうし、監督・俳優の履歴のなかで、さらに新境地を見せたものとなった。

一つの戦争を二つの国からまったく別の視点で描くという試み。歴史的記念碑として多くの人々の目にとまることとなった硫黄島での日本軍との戦いのなかで立てられた星条旗。アメリカの戦争資金の欠乏から戦時国債のプロパガンダに使われ、旗を立てた一兵卒の6人は、たちまち英雄となる。硫黄島の星条旗掲揚は、僕らも知っているが、その詳細はまったく知らなかっただけに衝撃的だった。旗を立てた6人のうち3人だけが生還する。3人は、いやおうなく宣伝に借り出される。しかも硫黄島で立てた国旗は、最初に立てられたものではなく、旗を欲しがった海軍長官がいたために、改めて立てられたものだった。それが写真に撮られ新聞で報道されたことから、立てた3人は英雄として、国債調達のキャンペーンに借り出される。当時アメリカは財政難で窮乏状態であり、その対策での国債発行が急務だった。なにも知らないまだ20歳そこそこの兵隊は、全米の政府プロパガンダに使われる。その一兵卒の視点からアメリカの戦争が語られる。

一方、日本を描いた『硫黄島からの手紙』は、硫黄島を指揮をした栗林中将(渡辺謙)とバロン西(伊原剛志)を中心にすえてある。栗林中将は、当時アメリカでの滞在経験があり、アメリカに多くの知人をもっていた。バロン西は、1932年のロサンゼルスオリンピックの乗馬での金メダリスト。アメリカでの外交役として活動した経歴を持っている。知性ありアメリカとの親交を深めた二人が、結局国の判断の間違いで、先頭にたって戦争をしなければならないという悲劇。

アメリカも日本も理不尽なままに、多くの人たちが、いやおうなく戦争にひきづられてしまう。おそらくアメリカが、まだ戦争を続けるなかで、この作品は、問いかけとして作成されたという意図もあったのだろう。圧倒的な力強さをもっている。なにより驚いたのは、『硫黄島の手紙』が、そうとうの時代考証がされたと
見えて、日本映画以上に、日本が緻密に描かれている。これまで、アメリカに登場してきた日本と日本人の描き方とは一線を画していた。深い深い悲しみをたたえ、また私たちの今を改めて問いかける作品である。

■シンポジウムのご案内
毎日新聞社主催の都市と農山漁村の交流や地域活性化を推進する
グリーンツーリズムのシンポジウム「農と食で地域を元気に」が
開催されます。ぜひおでかけください。

日時 12月21日(木)午後1時〜4時半 入場無料
場所 如水会館(東京都千代田区一ツ橋2−1−1)
電話03−3261−1101http://www.kaikan.co.jp/josui/
・地下鉄東西線 竹橋駅下車 1B出口 徒歩4分
・地下鉄半蔵門、三田、新宿線 神保町下車 A8出口 徒歩3分

●午後1時〜2時   グリーンツーリズム大賞表彰式
●午後2時〜4時半  シンポジウム「食と農で地域を元気に」
・午後2時〜3時 鼎談
榊原英資(早稲田大学教授)
加藤一郎(JA全農専務)
徳岡邦夫(京都吉兆嵐山本店総料理長)

・午後3時10分〜4時半 パネルディスカッション
金丸弘美(食環境ジャーナリスト)
本田 節(農家レストラン「ひまわり亭」)
下條正己(農水省農村振興局都市農業地域交流室長) 
四方 洋(ジャーナリスト)
        
主催:毎日新聞社
《後援》農林水産省、国土交通省《協賛》ANA、キリンビール、
JR東日本、東京電力、東芝ソリューション、トヨタ自動車、
日本生命、ベネフィット・ワン
http://www.mainichi.co.jp/information/news/20061125ddm012040093000c.html

参加希望者は、はがきかファクスに郵便番号、住所、氏名、
電話番号、年齢、職業、参加人数を書き、
〒100−8051(住所不要)毎日新聞社「GTシンポ」係、
またはファクス03・3212・0405へ。
「MSN毎日インタラクティブ」
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/travel/green/
でも受け付けます。締め切り12月13日消印有効。
応募者多数の場合は、抽選で200人に参加証を送ります。
問い合わせは03・3212・2272(土日祝日除く10〜17時)。

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■金丸弘美の食をテーマの話題の本!!
『メダカが田んぼに帰った日』(学研)
『HOME MADE ヨーグルト』(雄鶏社 共著)
『子どもに伝えたい本物の食』(NTT出版)
『スローフード・マニフェスト』(木楽舎 共著)
『本物を伝える 日本のスローフード』(岩波書店)
『ニッポン東京スローフード宣言!』(木楽舎 編著)
『フードクライシス 食が危ない!』(ディスカヴァー)
『伊賀の里 新農業ビジネスただいま大奮闘』(NAP)
『体においしい「ごはんの力」』(KKベストセラーズ 共著)
本の購入はアマゾンから。http://www.amazon.co.jp/

■テレビ放映のご案内
「Ageing japan」(生島ヒロシ司会):情報ワイド番組
番組コーナー:「金丸弘美のス農(ノー)フードな旅」
日時:全国の主要ケーブルテレビ120局で原則土・日
(週2回、月8回)繰返し放送。詳細はhttp://www.at-mie.tv/

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