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  旅日記 no.170
「豊岡市、飯田市の新しい街づくり」
2007年12月26日

金丸です。
今日は「豊岡市、飯田市の新しい街づくり」の話です。

 現在、兵庫県豊岡市に来ている。今年は、北海道から鹿児島県奄美諸島まで、60箇所は巡っただろう。年末の最後に豊岡市を選んだのは理由がある。ここはコウノトリを戻した田んぼがある。冬に田んぼに水を張る「冬期湛水水田」、アイガモで有機栽培をする「アイガモ水稲同時作」、そしてたんぼを「ビオトープ」にして湿地にした休耕田がある。

これらの田んぼにコウノトリの餌となるドジョウが生息し、鳥の住む環境を生んでいる。鳥を戻す田んぼのことは「メダカが田んぼに帰った日」(学研)で本を出した。そののちトキを戻す佐渡島に行き、雑誌「ソトコト」の紹介で、農家の人たちとも語るツアーも行った。宮城県田尻町で横断的な取り組みで形になった「冬期湛水水田」も何度も観にいった。

アイガモ水稲同時作は、福岡県桂川町の古野隆雄さんが体系化したものだが、こちらも何度も見に行った。古野さんに誘われて、村全体で取り組んでいる韓国の文堂里にも出かけた。アイガモの話は「本物を伝える 日本のスローフード」(岩波書店)で紹介した。

そんなわけで、コウノトリも見ておかなければと思ったわけだ。それ以上に、コウノトリを戻す環境を市の方針としてかかげ、取り組んでいる行政や、一般の方々の取り組みをみたいと思ったのだ。コウノトリが戻ることで、観光客や視察が増えている。また米もブランド米として売れ始めている。これが大きな街づくりの付加価値となっている。

先週は、長野県飯田市に行った。飯田市は、市の取り組みとして、中山間地の農家450戸を連携させて、中学生の農家の宿泊体験を誘致している。2007年だけでも116校の学校をむかいいれ、なんと2万2000泊にもなったという。これによって、地域のじいちゃん、ばちゃんに活気がみなぎり、仕事の場が生まれた。農村に8億円近い経済効果を生んだ。

飯田市では、これまでに地域にあったものを、例えば、農家、田んぼ、農作業など、あたりまえの暮らしを、都会にない、自然体験プログラムとして組み立て、インストラクターを各地域で組織し、それを観光に連動させる試みを行っている。来年は、高校、大学、小学校までに広げる予定だという。

今、各地で、地域の景観や地域性、多様性を生かし、パーソナル豊かな町づくりを始めいている。そして、それらに対応した政策提案型の補助金が国からも出始めている。現場では、農業、商業、観光という形ではなく、横断的な総合力が求められ、それを具現化しているところが生まれいている。

そんな各地の取り組みを丹念に見ていこうと思い始めて、旅をしているのだが、その一つが豊岡市である。実は、最近、経済関係の雑誌に、農業をもっと合理化し効率化しなければ自給率はあがらない、といった論調があちこちで目に付く。しかし、ほとんどが、企業の論理、大量生産を前提としての旧態依然の論旨になっているケースが少なくない。しかも現場に行くことなく現況をほとんど観ていない論旨が目立つ。

現場にいってみると、中山間地が多く、合理化や効率化できないところがほとんどである。大型化する農業ができるところなど、ほんのひとにぎりしかない。そんななかかで、豊岡市や飯田市のように、地域の多面性を生かした複合型の農業を組み立て、新しい活性化を独自に生み出しているところが増えている。むしろその方向こそが、地域にとっては必要だろう。現場では、すでに情報交換も始まり、実践例が出始めている。

その新しい事例を、これから取材をするのが、2008年の目標である。多くの先鋭的な現場の人たちとの出会いと連携こそが、私の元気の源である。

ところで、ホームページを完全にリニューアルした。ここには、2005年から2007年にかけて「毎日新聞」のデジタルメディアで連載した100回分の各地の取り組み、そして現在「熊本日日新聞」で連載中のものを含めて、全国の地域活動を写真付で紹介し、いつでも見れるようにした。今後も取り組みも随時掲載していく予定だ。http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php

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