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  旅日記 no.175
「喜界島の朝日酒造」
2008年1月31日
こんにちわ。金丸です。
今日は「喜界島の朝日酒造」の話です。

奄美諸島の喜界島を訪ねた。昨年11月に訪ねた奄美大島にある「酒屋まえかわ」の前川晴紀さんから、「ぜひ喜界島の『朝日酒造』を訪ねたほうがいいですよ。とても美味しい焼酎を造っていますから」ということだったので、出かけることにしたのだ。

喜界島は奄美大島の隣、周囲は48キロ。サトウキビ栽培がさかんなところだ。古くからのサンゴの石垣の町並みがいくつもあり、静かでとても美しい島だ。あちこちに自生しているという菜の花が、黄色い可憐な花を咲かせている。ヒカンサクラが満開。ピンク色の花が美しい。黒い斑点の蝶もみかけた。島はすっかり春だ。

喜界島には奄美大島空港から双発機で10分で着いた。空港には朝日酒造の喜禎浩之(きてい・ひろゆき)さんと外内淳(とうち・すなお)さんがまっていてくださった。さっそく、二人の案内でサトウキビ畑を抜けて黒糖の工房に向かう。朝日酒造では、サトウキビを無農薬で栽培をし、自社の工房で、黒糖を作り、そこから焼酎を造っているのだという。

工房ではちょうど黒糖ができたばかり。窯が二つあり、まず一つの釜で炊きながら灰汁をとり、そして二つ目の窯で炊き上げる。粘りが出てくると、さらに中に螺旋の羽がついた攪拌器に入れて、じっくりと練る。そして小さな箱に取り出し、ゆっくり自然乾燥させる。できたての黒糖はチョコレート色。味わいはほどよい苦味と酸味をもった上品な甘さ。これをコーヒーをともに食べると最上だ。

サトウキビは、一年半をかけて栽培をしたものを使うという。通常は10ヶ月サイクルで栽培をするのだそうだが、朝日酒造は、8ヶ月も長い。それによって大きく成長し、そのほうが量的に、多くとれるからだという。最近は機械(ハーベスター)で刈るところも多いが、朝日酒造では、すべて手刈り。機械で裁断すると細かくなり、切り口が増えることから酸化し劣化が早いとのこと。また根本からきれいに刈れないから無駄がでるとのことだった。

サトウキビ畑の後、本社の醸造場を見学させてもらった。黒糖焼酎は、まずコメを蒸して麹菌を入れて発酵させ、それに黒糖を溶かしてあわせてから発酵させるのだという。そして蒸留させて焼酎が誕生する。さらにできた焼酎をタンクで寝かせる。

貯蔵するために新しく作ったという貯蔵蔵は、和風建築を取り入れ、そこにサンゴの石垣を張り巡らした、モダンで、しかし風情があり、地域の景観を配慮したもの。なかは天井が高く、清潔で、木がふんだんに使われている。ここで5年ものの焼酎いただいたのだが、香りに気品があり、口の中にふあわりと溶け込むような豊かな味わい。幸せな一瞬だった。

喜禎浩之さんは専務で、4代目。まだ30代の若さだが、新しい焼酎つくりに挑戦している。材料や工程、レッテル、建造物までもが、デザインが行き届いている。古い歴史ある製造法を守りながらも、化学的視点や、新しい道具も取り入れながら、最上の焼酎を生み出している。実に志が高い。きけば東京農大出身で、卒業後に3年間、鹿児島で焼酎会社で仕事をし、そして家の酒造元に入ったという。

材料から伝統を生かしながらも新しい酒造りをするセンスが、佐賀県の蔵元・天吹酒造に似ていると思ったら、なんと喜禎さんとは同級生と判明した。その日、喜禎さんと外内さんと、夜に飲むこととなり、最上の一日となった。翌日、朝から外内さんが迎えてくださり、喜界島を案内していただいた。島は、海も素晴らしいし、風情のある景観がたくさんある。ここで長期滞在プランを提案すれば、都心からは、多くの人を迎え入れることができるだろう。

■12月26日配信、兵庫県豊岡市のコウノトリを戻した取り組みは、「熊本日日新聞」平成20年1月20日「コウノトリ共生で地域活性化」として掲載しました。新聞の掲載原稿はホームページで転載しましたのでお知らせします。
http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/rensai/rensaidetail.php?&no=11&a=1

金丸弘美(食環境ジャーナリスト・食総合プロデューサー)
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