こんにちは。金丸弘美です。
今日は、徳之島特性の「サンゴ礁からの薪炊きのあら塩(まあしゅ)」のお話
このところバッグにいつも塩をしのばせている。こんな癖がついたのは、沖縄の粟国の塩に出会ってからだ。粟国のことは、前にも書いたが、珊瑚の海から海水を汲み上げて一ケ月かけて作る自然の塩である。この塩にめぐりあってからというもの、ずっと愛用している。ミネラルが豊かで、味わいがまろやか。料理に使うと素晴らしく味わいがひろがり深くなる。
ところが2001年家族が徳之島に移ったときに見つけた塩があった。それが粟国と変らぬ素晴らしさの珊瑚の海からの塩だったのである。水本美枝子さんという73歳のおばあちゃんが、珊瑚の海岸から塩溜まりにたまった海水を汲んで、薪で炊いて作っていた。聞けば戦前までは徳之島で作られていた自然の塩であった。
73歳の水本さんが塩を作っていたのは孫のためだった。お孫さんが千葉にいて、アトピーだという。自然からの塩が体にいいということを聞いて、戦前まで徳之島ではあたりまえのように作られていた珊瑚礁の塩を作り始めたのだ。この塩は、珊瑚のカルシウムをたくさん含んでいるばかりではなく、カリウムを始めミネラルも豊富。
それに味わいはまろやかで、最上の塩である。東京で塩の専門家の人たちにみてもらったらフランスのゲランドにも引けをとらないほどの味わいという。
徳之島の塩の塩田は、珊瑚が石灰化した浜辺を利用したもの。こういった自然の塩田で、現存しているのは国内でも例がないらしい。
徳之島は泉重千代さん、本郷かまとさんというギネスにも掲載された長寿の島だが、水本さんが作っていた珊瑚の塩こそ長寿に人たちがふだん使っていたものである。しかも塩が生まれたのは、二人の長寿者を生んだまさに伊仙町の海にあったのである。ところが伊仙の町では、もう珊瑚の塩はすっかり忘れ去られ、水本さんが一人で昔の塩を孫のために作っていたというわけである。
忘れ去られたのには理由がある。塩は明治以来専売制がとられ、特に1971年には機械化がされ、海水から塩化ナトリウムだけを取り出し、これを塩として販売し始め、かつての塩田の塩をいっさい廃止させたいきさつがある。1998年まで専売制は続いた。だから徳之島の塩も廃止されたし、作ることもできなかったというわけである。作ったとしても自家用以外は使うことはできなかったのだ。
水本さんが作る塩のことをあちこち紹介し始め、僕の本『ゆらしぃ島のスローライフ』でも書いた。本が出てからというもの、本土から毎月のように知り合いが訪ねてくれるようになったのだが、そのときに必ず案内するようになったのが水本さんの塩と珊瑚の塩田なのである。そうして塩は、小さいながらも販売もされるようになった。そこで、僕専用に小さな50g入りのサンプルを作ってもらったのだ。こうして毎日持ち歩いて、知り合いに渡すことにした。
最近僕が出会うのは、食に人一倍関心が高い人が多いから、塩にとても関心をもってもらい、塩から話題が広がる。小田急に国産大豆100パーセントの豆腐を出しているおかべやの影山さんは「うまいな。これは本物だな。ずっとなめていてもいいな。売ってもいい。にがりがあれば豆腐を作ってみたい」と、やたら感心してくれる。
八王子の牧場・磯沼ミルクファームで紹介されたトルコの方は、塩を差し出すと「あなたは今、日本で使われている塩はどう思いますか?」との質問。「精製塩で塩化ナトリウムのもの。あれは塩辛いだけですね。これは違います。昔から作られていた塩なのです」と答えた。すると「そうですね。日本で使われているのは塩ではない。
私たちの国では、いつもポケットに岩塩を入れておいて、キュウリなんか食べるときは、塩を削って食べるんです」との話。お国柄で塩も違う。
今度埼玉県でシンポを行うホテルブリランテ武蔵野の総料理長の山田清人さんは、早速、シンポの料理に使ってくれるという。参加予定のパネラーの所沢高校の家庭科の西澤先生は、家庭で野菜に使ったらとてもおいしくて家族から絶賛されたという。とにかく評判だ。
塩を渡すとたいていその場でティスティングが始まり、塩だけで話題がどんどん広がる。この塩を使って商品化したのが横浜で売り出した「幕末アンパン」なのである。
たかが塩を思うなかれ。これが話題どころか、日常の料理の味さえ変えてしまうのだから素晴らしい。塩を持ちあるくことは、癖になりそうである。なにせ、話題がつきないのである。これを僕は塩の宇宙と名づけている。
(水本美枝子さんの塩の問い合わせ:電話0997−86−9341
鹿児島県大島郡伊仙町犬田布1289)
■掲示板
●『政策工房J-Wayの定例研究会』
◎日時:5月31日(火) 19時00分〜21時00分
テーマ:「農業・環境・地域再生」
報告者:食環境ジャーナリスト 金丸弘美氏
コメンタテイター:参議院議員 高橋千秋氏
場所:国会記者会館4階第4会議室
討論:農業再生、環境再生、地域再生は、それぞれ現在の日本が抱える最重要の課題ですが、これら三つの課題は相互に密接に関わっています。そこで、今回の研究会では食環境ジャーナリストとして活躍されている金丸弘美氏から農業や環境問題への対応が地域活性化につながった各地の事例をご紹介いただき、皆さんで議論してみたいと思います。
コメンテイターを参議議院議員で農業問題が専門の高橋千秋氏にお願いしました。日本でのスローフード運動の盛り上がり、モクモクファームの実践、幕末アンパンプロジェクトの試みなど、多彩な事例が報告されます。
{* 政策工房J-Wayとは、どの政党にも属さい民間の政策立案組織をつくろうと有志によって設立されたもので、現在、学者、ジャーナリスト、政治家、経営者、サラリーマンなどが自由に参加できる研究会を隔月で実施しています。 代表:山口義行
申し込み・詳細
http://www.media-kiss.com/J-Way/}
yamaguchi@media-kiss.com
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立教大学経済学部教授 山口 義行
●フォーラム「北海道の農的な暮らしは面白い」開催のお知らせ
北海道での農業をしてみたいという方のためのフォーラムを開催することとなりました。ぜひお出かけください。当日は、現地の農業体験者を交えての経験談と相談窓口を開設します。この農業支援に協力しています。(金丸弘美)
■フォーラム「北海道の農的な暮らしは面白い」
日時 6月5日(日)14:00〜16:00
(13:30開場 終了後個別相談会16:00-17:00)
場所 サンケイプラザ3階311東京都千代田区大手町1−7−2
TEL:03-3273-2257〜9 入場無料
交通:地下鉄「大手町」駅下車 A4・E1 出口直結
■コーディネーター
高井瑞枝(フードコーディネーター)
■パネリスト
荒川信基(北海道江丹別 オサラッペ牧場)
勝又武司(北海道斜里町 畑作農業兼蕎麦屋)
渡部 徹(北海道沼田町 新規就農予定者)
■北海道深川市では、農家、農協、町、大学などが協力し連携した新規就農サポートセンターを発足。農業のための相談窓口、受け入れ態勢を整えました。
転職、新規の就農、農業の学習、初歩から実践まで、農家の研修先はもちろん、就農の受け入れ、また若い人のためには大学と地域の農家と連携し実践まで学ぶ場を作り将来に備えられる学習機能まで整えました。
それだけではなく、東京や大阪で、北海道の農業に触れる機会がない人のために、今回、都心での説明会を開催します。さらに短期の現地ツアーも用意しました。
フォーラムでは、実際の体験者に参加していただき、その経験を話していただくとともに、さまざまな素朴な質問にも答えられるように、相談窓口を設けます。どんな素朴なことにも当日は相談に応じます。
また、当日おでかけになれない方には、電話による相談もうけます。
メールでもおうけしています。
ご気軽にご参加ください。多数の来場をお待ちしております。
■問い合わせ・参加申し込み先 ―――――――――――――
◆NPO法人 新規就農サポートセンター
〒074-0001 北海道深川市1条5番10号 ◆担当:山本毅
TEL 0164-26-2710 FAX 0164-26-2715
E-mail newsupport@siren.ocn.ne.jp
http://www.shinki-shuno.jp/
◆拓殖大学北海道短期大学 環境農学科「新規就農コース」
〒074-8585 北海道深川市メム4558 ◆担当:橋本信
TEL 0164-23-4111 FAX 0164-23-4411
E-mail hashimoto@takushoku-hc.ac.jp
http://www.takushoku-hc.ac.jp/
■「今後の開催予定日程」
●「体感!北海道の農的な暮らしは面白いぞ!
〜研修ファームツアー」
・道北コース8月19(金)〜21(日)の2泊3日先着20名
・道央コース8月20(土)・21(日)の1泊2日先着20名
生産者が作物による手料理、自然の中の暮らし、農作業体験をしていただきます。また、現地の人との触れ合いの場を設けます。
●「北海道の農的な暮らしは面白い!新規就農フォーラムin大阪」日時 9月18日(日)
北海道で暮らしてみたい、農的な生活をしてみたい、スローライフをエンジョイしたい人のために、基本的の情報を提供します。
●「もう一つの選択肢、北海道の農的な暮らしとの出会い!
「新規就農フォーラムin東京」 日時 10月2日(日)
●「十勝研修ファームツアー」
日時 11月3〜5日(木〜土)帯広・音更・他 定員30名
●「新規就農フォーラムin札幌」
日時 12月3日(土)14:00〜16:30(開場 13:00)
■第5回 それいゆ交流セミナー
『価値観の変革 スローフードを通してビジネスを考える』
◎セミナー&交流会スケジュール
開催日: 6月15日(水)19時から20時30分
※セミナー:90分
講 師: 食環境ジャーナリスト 金丸 弘美氏
会 場: 「女性と仕事の未来館」
東京都港区芝 5-35-3
※JR田町駅三田口(西口)より徒歩3分
地下鉄都営浅草線、三田線三田駅A1出口より徒歩1分
会 費: 3,500円(税込)
※定員40名になり次第、受付終了とさせていただきます。
お問い 合わせ先:「それいゆ」事務局
担当:石川、昌原(まさはら) TEL:03-3779-1261
9時30分〜17時30分(土日祝祭日はお休み)
http://www.e-soleil.biz/seminar/kanemaru/kanemaru.html
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■金丸弘美正式ホームページ
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●毎週「毎日新聞」デジタルメディアにて食のエッセイ連載中。
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・日本ペンクラブ
http://www.japanpen.or.jp/
・ニッポン東京スローフード協会
http://www.nt-slowfood.org/